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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
弐―死神と竜と狩人と―
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死神少女は強敵を知る

【ブラウェイン王国 メグラール】

メグラールの冒険者ギルドは小さいが優秀な冒険者を保有していた。

Aランク冒険者こそいないがほとんどの魔物絡み、盗賊絡みの依頼をこなすことで知られている。



白髭を生やしたギルドマスターは嘗ては勇者と共に邪神討伐を果たした英雄だ。

しかし年齢と共に限界を感じ、今はギルドマスターとして後輩たちを見守っていた。


ギルドのトップの部屋に三人の男女が話を聞いていた。


「キクスの奴らが救援依頼?一体何があったんだ?」

「手強い輩が二週間前から管轄で好き勝手しておるようでな。」


色黒の男、バッツはこのギルドのエースだ。

わざわざギルドマスターからこのような話をされるということは、余程のことが起きていること。


「未成年と思われる少女たった一人に20名もの犠牲が出ていてな。もうどうにもならなくなってるようじゃ。」

「じいさん……そいつは」

「あー多分お前の思ってる娘とは別人じゃな。得物は彼奴の身長の半分くらいある鉈一本とクロスボウじゃ。」

「クロスボウ?」

「左手にバックラーのように取り付けてあるそうじゃ。だから矢を放ちつつ斬りつけることもできる。」

「実質二刀流か、厄介だな。」


奇跡的に生還したらしい冒険者の一人が証言していた。

しかしその冒険者は精神的に参っておりしばらく復帰はできないらしい。


「女の子のハンターですか……興味ありますねぇ。」

「あんたはいつもどおりね…。」


リオがなにやらトリップし始めた。


「キクスからは『生死は問わず』と出ている。気は進まぬじゃろうがそれほどの案件じゃ。検討してみてほしい。」














【ブラウェイン王国 王都近郊の町キクス】

王都近郊にある大きな町、キクス。

王都や港町、聖都など主要都市へ繋がるこの町はとにかく人の出入りが激しく、乗り合い馬車が一日に百本も行来する。

近隣には霧の森、パスターニャ遺跡、幽霊屋敷など冒険者を必要とするエリアが存在する。

しかし貧富の差が激しく一部のエリアは治安が非常に悪く立ち入りに制限がかかっている。

別名第二の王都とも呼ばれている。


そんな大都市に少女二人は辿り着いた。





適当な路地の宿にチェックインした二人は町を回ることにした。


「人がたくさんいるねー。」

「町が大きいからね。」


エミリアはしきりに探していた。

こんなに大きいならあるはず。

レイラは気になったがはぐらかされてしまった。


そして目当ての店を見つけた。













血に染まった下着類はレイラに文字通り消し炭にしてもらった。

やはりいつまでも血染めの下着は見えないとはいえ気になるものだ。

レイラは人間ではないのでその辺のことはわからなかった。



町の中央広場には噴水があり待ち合わせ等に使われている。

そして噴水の他にも巨大な掲示板が立ててある。

この掲示板には王国内で起きたことの報道や求人など様々な情報が集まる。

更にギルドに所属していない者への仕事の依頼もある。

ギルドに所属していないため報酬は少ないが誰でもいいから人手が欲しいときに使われる手法だ。


なお報酬は依頼人からの手渡しとなる。つまり早い者勝ちだ。




そんなのは無視して今日はひとまず町の散策をすることにした。

その前に………………











エミリアはジャムパンを食べていた。

この町のパンも悪くない。クロワッサンがなかったので明日朝一に買おう。起きられたら。

レイラはメロンパンにかぶり付いていた。

どうやらお気に入りになったらしい。

天使のような笑顔でパンを食べる少女……誰も彼女が巨竜だとは思わないだろう。


「…………二人、いや三人か。」

「お姉ちゃん?」

「ん、何でもない。」


一先ず今は見逃してあげよう。

この町では下手に動けばこっちが危なくなる。





広場に戻ると何やら人が集まっていた。

何があったのか、近くのおじさんに聞いてみる。


「聖都に行っていたAランク冒険者のライル様が帰ってきたんだ。君たちも見てみるかい?」


おじさんがわざわざ道を開けてくれる。

人混みを進んでいく毎に黄色い声が大きくなる、耳がいたい。


やがてライルとやらの顔が見えた。

所謂イケメンに部類されるのか、顔立ちはよさそうだ。

長い金髪は肩まで伸ばし、白い軽装鎧はまるで血を拒むかのように清潔。

紫の瞳は何か吸い込まれるような……




「っ!!」




エミリアは咄嗟にレイラの目を塞いでその場から離れた。

路地に逃げ込んで壁に手をついた。レイラが心配そうに見ている。

あれは一体何だ?あいつの瞳を眺めていたら身体が熱くなってきた。

いや、危うく意識が飛びそうになった。

こんな経験は初めてだった。

多分、良くないやつなのだろう。


「お姉ちゃん、大丈夫?」

「うん…………だ、大丈夫……。」


一気に消耗してしまったエミリアは一先ず宿に戻ることにした。


同時に













なぜかあいつの顔をぐちゃぐちゃにしたくなった。

理由はわからない、自分の中の何かがあいつを殺せと囁くのだ。

まぁ今は自分に敵対してないし見逃してあげよう。

それに今のままではこっちが殺される。

時間はたくさんある、ゆっくり対策を考えればいい。


「ふふっ……ふふふふふふふふ。」

「お姉ちゃん……。」


レイラは少し怯えたがエミリアの手を握る。

何か気に食わない人間でもいたのかもしれない。

この笑みはあの時、エミリアが椅子で殴られた時のそれと似ていた。


小さな身体でエミリアを支える。

今の状態のエミリアは襲われたら簡単にやられてしまう。

だから私が守らないと。















数分後、路地に謎の焼死体が三体発見された。

















【ブラウェイン王国 霧の森】

熊の毛皮を被った少女はブラッドボアを丸焼きにしていた。

鼻唄混じりに肉を焼いていく。


周囲には先程侵入してきた冒険者たち。彼女の中では死体ではなく、そこにある物体だと認識されていた。


『人食いハンター』などと呼ばれているがそんな趣味はない、殺した冒険者は身ぐるみ剥いで気に入った物があれば家にしまう。

残りはその辺に捨てておけば『森の掃除屋』が一晩で片付けてくれる。

彼女も死んだらきっと掃除されるだろう。


ブラッドボアの丸焼きにかぶり付く。

血生臭いのを我慢できれば上質な肉だ。

彼女は今更そんなことは気にしなくなっていた。


満腹になった少女は休む間もなく何処かへ出かける。

手には魔物用の巨大なベアトラップ………

適当に落ち葉や土をかけて『領域』に帰った。



ベアトラップは踏んだ獲物を逃がさない。

それが魔物だろうと、人間だろうと…………。

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