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偶然登場したギルドマスターの活躍によって収束したレオンハルトと剣士青年の無限ループ(かいわ)は結局2人が手合わせすることで収まった。


ギルドの訓練場は普段なら初心者講習を受ける者たちしか使用しないのだが、本日はここ最近で一番の賑わいを見せていた。

ギルドのロビーで繰り広げられていた2人の青年の会話の結果が気になる者、『伝書鳩』の実力に疑問がある者、唯のイベント好きの野次馬など様々な要因によって集まった者たちは皆冒険者らしく賭けをしながら観戦するようだ。


「私が勝敗が決まったと思ったらそこで試合終了だからネ。2人ともやりすぎないように。好きな時にはじめていいヨ。」


独特なしゃべり方をする審判はクスクスと笑っているギルドマスターが行うようだ。

王都のギルドマスターも問題に対処することが仕事のひとつなのであろう。


「では、遠慮なく!俺から行くよっ。」と声をあげながら本当に遠慮なく剣士の青年はレオンハルトに向かって剣を振り下ろした。

普通は魔法師だと自称している武器を携帯していない者に対して思い切り剣を振れないものだが、戦闘狂である彼には関係ないようだ。


「えっ!いきなりーっ!?」と言いながらも剣を易々と避けるレオンハルトは余裕綽々だ。

声にも動きにも全く焦りが感じられない。

そんな彼の余裕を目の当たりにしたためか、青年は一切の戸惑いもなくレオンハルトに切りかかる。

どこからどう見ても急所を狙っている。

彼の方は完全に殺しにかかっているのが周囲の人間には伝わっていた。


そんな中レオンハルトは剣を軽々と避けながらも時々「火の玉―!」とか、「火の渦―!」とか叫びながら魔法を放っていた。

「普通は集中しないと魔法を打てないので動きながらとか無理だろ」とか、「詠唱短すぎしかも適当すぎ」とか、「魔法陣はどこに行った」とか突っ込みどころは多々あるが皆ひやひやしながら彼を見ていた。

彼は軽々と剣を避けるには避けるがその動きがとても危なっかしいのだ。フェイントには必ず引っかかるし動く距離もぎりぎりなので今にも当たりそうなのである。


動きながらにして「火の玉」やら「火の渦」やらが飛んできたことに驚きはしたものの剣士の青年・アルヴァンはそれらを避けたり剣で切ったりしてこちらも余裕でレオンハルトの攻撃に対処していた。

「普通は至近距離から放たれた魔法を避けられない」とか、「剣圧で炎を退けるなどどこの達人の所業だ」とか、突っ込みを入れられる人材が不足していたようであるが、彼もそれはそれは人間離れした戦闘能力を発揮していた。


予期せぬことに剣の達人(人間?)と非常識な魔法師(たぶん人外)の戦闘の審判をする羽目になったギルドマスターは戦っている本人たちそっちのけで焦っていた。

このまま2人が調子に乗れば訓練場にいる冒険者が絶対に数人は巻き込まれる。

さらに調子に乗れば訓練場が大破する。

それでも止まらなければたぶんギルド自体も危ない。

それほど強い人間が2人偶然(・・)手合わせすることになるなど王都に集う問題ばかり起こす冒険者達を束ねる彼でさえ予測できなかったのだ。


ギルドマスターがどちらかに勝たせて早く試合を終わらせたいと切実に願っていたころ、レオンハルトとアルヴァンの間にも変化が起こっていた。

レオンハルト、アルヴァンともに相手を殺さず且つ周りに被害を出さずに勝利するためには相手の体力・魔力切れを狙うしかないと薄々気付きだしていた。

そうと決まれば勝者は自ずと決まってくる。

一応人間の範囲内の能力にとどまるアルヴァンと余り知られてはいないがたぶん既に人外の域に達しているレオンハルト、前者は額に薄っすら汗を浮かべているが後者はピンピンしていて息もまったく切れていない。


「俺の負けだわ。もうちょっと強くなったらまた勝負な。」と唐突に告げてアルヴァンは訓練場を後にした。

「またね!」と元気に返したレオンハルト以外の面々は心を一つにして同じことを思った。

「『伝書鳩』が人外なことが判明したが、近々人外が一人増えそうだ」と。


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