ホームレスな多田さん
一生懸命に考えたのですが、読者のみなさんに楽しんで頂けたら
嬉しいです。あと多田さんが行った事は作者の妄想なので、
深く考えず読んで頂けたら嬉しいです。では、どうぞ。
暑い暑いそんなある日だった。
私の名前は多田かね。
お金に縁のありそうな良い名前でしょ。
そんな私は、今、ホームレスをやってる。
何でこんな生活してるのか、少し私の過去の話を
するとね。
まず、私の親はろくでもない人でね。
借金作っては、家族で夜逃げしたもんだよ。
そんな私がろくに学校に通える訳もなくてね。
でも頑張って勉強したよ。奨学金の出る所いたりして
何とか高校までは、卒業できた。
快挙だよね。自分をよく褒めてあげたいよ。
就職も頑張ったよ。血が出るんじゃないかっていう
ぐらい。あらゆるところからね。これは自慢にならないかぁ。
でもね。何でか知らないけど、就職する会社、色々
なところ行ったんだけど。なぜか、私が働いて数か月すると、
皆、倒産してね。
最初は、皆、可哀想だね。大変だったね。って言ってくれてたけどさ。
それが何度も続くと今度はお前のせいだ。お前がいるからだって
なってね。
最後は疫病神扱いでね。まぁ、私にとったら神がついてる
時点で、すごいと思うんだけどね。
そんな私だけど、恋人もいたんだよ。そりゃあこの年になれば、
ある程度の経験はするものだと思ってるけど。
これがさ。すげぇやつで、私の名前に引き寄せられるのか、
どいつもこいつもギャンブル好きでね。
すぐ借金するんだよ。
でも頑張って尽くしたけどそんなやつにも見捨てられてね。
愛ってなんだろうね。
結局何だかんだ言ってるうちに、やる気が出なくなって
ホームレスだよ。今、じゃね。
人生諦めてるけどお金好きだからな。どっかに1円でも落ちてない
かなぁ。それ以上でももちろん可。
そんな私の転機を迎えたのは、そう、暑い暑い昼間の事だった。
その日は、すごい温度でさ、天気はもちろん晴れ、こんなに
晴れるかってくらい、すごい青空だったね。
私はあんまりの暑さに日々の収入源である空き缶拾いをやって
る時でね。汗びっしょりかいて、脇汗どころか全身すごかったね。
ホームレス仲間から聞いた話じゃ、ラジオで、各所で救急車に
運ばれる人が沢山出たって話を聞いた日だった。
もちろんラジオも拾ってきたもので音が最悪だったけどね。
私達にとっては貴重な情報収集できるものだからね。
皆、真剣に聴いてたよ。
そんな炎天下の中さ、人通りのない所を移動してたのが、
悪かったのかね。
人が倒れてるの見かけてさ。
びびったね。ありゃあ、心臓に悪いよ。
それでさ、恐る恐る近づいてみたんだよ。
そしたらすごい真っ赤な顔しててさ、息も荒くてさ、
その上、唇はカサカサでさ、救急車呼ぶ手段がないから、
とりあえず、小さい公園見つけたから水道探してさ。
水飲み場があったから、今日拾った、おわんに水汲んでさ
一応言っておくけどちゃんと洗ったよ。
それで、その倒れてる人、おじいさんに水飲ませたよ。
ちゃんと声かけて飲めるかどうか聞いたら、苦しそう
に頷いてくれたからゆっくり慎重に飲ませてさ。
そしたら、飲ませすぎちゃってげほげほ言っててね。
焦ったよ。やばい。と思ったね。
そう思ったら、なぜか思い出してね。脱水症状には、
確か、塩気が必要だったと思って、げほげほがおさまって
から町で配ってた試供品の塩飴をさ、少しばかり、
躊躇したけど口に入れてあげたんだ。
何で躊躇したかって?そりゃあ、貴重な食糧、そう簡単には、
渡せないでしょ。私らにとったら飴一粒だって大事さ。
でも意を決してあげたね。
そしたら、ゆっくり口を動かす動作を見せたから安心したね。
それからこれも町で配ってたうちわがある事に気付いてね。
それでしばらくあおいであげたら、呼吸も落ち着いてね。
そこでまた思いだした事があってさ、電話BOXに緊急用の
赤いボタンあったような気がして、電話BOX探してさ、
おっかなびっくり、押してみたよね。そしたら、つながって
さ、綺麗な声が聞こえてきたから、落ち着いて話すことが
できてね。救急車呼んでもらったね。
そのとき、救急車ってお金かかったっけって思って聞いて
みたら大丈夫です。料金は発生しません。って言われて
一安心だったよ。
それで、おじいさんのところ戻って必死にうちわであおいだよね。
あんなに必死になったのっていつぶりだろうね。
お金がもらえる訳じゃないのに頑張ったの、えらくないかね。
それで救急車が無事に来てね。
救急隊の人に私の姿、見て怪訝な顔されながら、
ご家族の方ですかって言われてね。
いえ、違いますって言ってやったね。
一緒に乗られますかって聞かれたから、一瞬、考えた後に
お断りします。って言ったよ。
だって病院までついていったら、帰りどうやって帰ってくるのさ。
まったく、困ったものだよ。
そしたら助けたおじいさんの秘書だって人が私のところに来たんだよ。
どうやらおじさん超金持ちらしくてね。お礼につられてついてたら、
なんか、デッカイ、ビルの最上階についてさ、
そこで、元気な様子のおじいさんに感謝の言葉を言われてさ。
それだけ?って私が困惑してたらさ、部屋のドアから、ノックの
音がしてさ、コンコンって。金持ちは、ノックの音も上品だと思ったね。
それで、秘書の人がドアを開けたらさ、
こりゃあたまげたってくらいの美少年があらわれてさ。
髪は何度もそめかえてるのか、いたんだ、まだらな金髪でね。
そこはもったいないなぁと思ったさ。
顔は、さっきも言った通り美少年でね。一枚の絵みたいな
整った顔なんだよ。目はカラスみたいに真っ黒でさ。
あれ、あんまり、褒めてないかもね、ごめんね。
黒っていうと、普段見慣れてる、カラスしか思い浮かばなくてね。
でもあいつらよく見ると綺麗な目してんだよ。知らないかい?
まぁ、それは、ほっといて、その美少年がね。
不機嫌ですって顔に書いてるような表情してね。こちらを
睨んできたから。とりあえず見返してやったよね。
何かね。その美少年、私がおじさんを助けたのは、金目当てだとか
言って来てね。まぁ、お金くれるならもらうけどね。
それが目当てって言われたら、それは違うってきっぱり、
言い返してやったね。そしたら美少年は、動揺してるのが
丸わかりでね。若いなぁって思ったよ。
こう見えて、私は、33才だからね。おばさん羨ましいよ。
本当に。
そしたらおじいさんがね。
「はっはっはっ、貢は、まだ、若いのぅ。」
「ガキ扱いすんな、くそジジィ。」
って、美少年が今度は、おじいさんの方、向いたから、
私もおじいさんの方、向いたね。
それで、おじいさんの謎の自己紹介が始まってね。
「ワシの名前は金有馬羅幕こいつは、
ワシの孫の金有貢じゃあ、
よろしくのぅ。」
私は良い名前だと思ってね。そういったら、その場にいた
私以外の全員が驚いた表情になってね。一瞬だったけどね。
「ワシの名前はインパクトがあっていいじゃろう?。」
「俺は貢なんて名前嫌いだ。」
「そうかなぁ?やっぱり、良い名前だと思うけど、お金
に縁がありそうな名前で、私にとっては、たまらないけど。」
私が、にやっと笑ったら美少年、いや、貢くんは、何だかビビッて
るようだったけどね。おじいさんは何だか楽しそうだった。
あとから聞いた話によるとバラさん、おじさんのことね。
だって長い名前だからね。
この名前につられてほいほい、ついてくるやつがいるが、
それをえさにして企業を立ち上げ、成長させたえげつない人だった
ようだ。
貢の名前は、将来一途に思える相手と巡り合えるようにバラさんが
つけたんだって。やっぱり、良い名前だなぁと思ったよ。私は。
それでその後、倒れていた経緯を説明してくれたんだけど、
どうやらバラさんは、散歩好きで、一人でよく行動するんだ
そうで、それに秘書さんを含めた部下たちか困っているらしい
けどそんなの関係なく、その日も勝手に消えて、
探し回っていたところに病院から連絡があり、部下の人達は
血の気が引いたって苦笑して教えてくれたね。
それからちょくちょく呼ばれるようになったんだけど、
これも何かの縁だと思って会いにいったね。
そしたらあるとき、貢くんが怪我して帰ってきてね。
理由聞いたら、喧嘩した。て言ってたよ。
それで何気なく、私の持ってるものでね、町で配ってた
貴重な貴重な絆創膏をね。あげたらね。
なんか懐かれてしまってね。
何か物をくれるようになったんだよ。
野良猫ですら私の姿見て逃げ出すのにね。
なんでだろうね。
最初は食事を御馳走してくれたんだよ。
凄い豪華でね。フルコースだったよ。
食べれるものはなんでも口に含むのが信条の私がね。
食べないなんて選択はできなくてね。めぇいっぱい
食べたらね、その日のうちにお腹痛めてね。
トイレとお友達になったね。
「あんたが心配だ。一人にしておけない。
あんたを買う」
ようやく腹痛もおさまってきた私にね。
こういう発言を何か闘志を燃やすような
感じで言われてね。
買うって、飼うじゃなくて、私の事、お金で
買うって事?と聞き間違いなんじゃないか
あるいはツッコミを入れた方がいいのか
真剣に悩んだね。
まぁ、何かの面白い冗談だと思って聞いてたけどね。
そしたらあれよあれよという間にね、
一緒に住む事になってね。
そっから貢くんの猛攻撃が始まったね。
私専用の医師をつけてね、健康管理し始めたり、
身の周りの世話をしてくれるメイドさん付いてたり
髪はカリスマ美容師、全身エステ、あらゆる脱毛
メイクもプロにやってもらって、
ネイルは毎日、磨かれ、整えられてね。きれいにつける
ところからはがすところまで、やってくれる。
服も小物もバックもブランド品、靴はオーダーメイド
私用の図書室、シアタールームなど
あらゆるものを取り付けてくれてね。
当然四六時中警備されるわ、移動は、運転手付きの車
だわで至れり尽くせりの生活でね。
普通はこんなに尽くしてくれて幸せだなぁと思うんだろうけどね。
私は違うんだね。これがむしろ恐怖だったね。
だってさ。過去こんな暮らししたことがないのにいきなり
こんな生活でしょ。
信じられないのよね。これがいつまで続くか。
だからね。私、警備の人、すべての人のすきをついて
逃げたよね。ただ、何も持って行かないと不安だったから
お金は、少しいただいて、逃げたね。
だって、お金好きなんだよね。ごめんね。
はたからみたら全然反省の様子を見せず彼女は逃げた、
そして逃げた。
でも、それもすぐに見つかって一緒に住んでた家に
戻されたが。
その時、彼女は、こう言った。
「お金を持って行った事を責めてるの?ケチくさいなぁ。」
そんな彼女に彼は慌てて言った。
「違う、どうしてオレの気持ちがわからないんだよ。」
そんなやりとりのあったあと彼女が逃げ出さないように
束縛という監禁生活が始まった。
そんな彼女は、呆れた様子でその後、大人しく一緒に
暮らしたという。
彼女はしきりにこう言った
「私は名前の通りお金とかただという言葉は大好きだけど、
お金には、嫌われる生活しててね。」
「しっかり学んで、しっかり働きな私のようになりたくな
かったらねぇ。」
高校生だった貢はその言葉を聞いてこう答える。
「一生、貢いでやるから覚悟しろよ。」
とびっきり甘く優しく囁くような声は、多田さんの心を
掴んで離さない言葉となった。
タダで、金との縁がまわってくるなんて、
私の名前の本領発揮だろうかと
ニヤッと彼女は、悪人のような顔で笑った。
彼女の歴代の彼氏がその姿をたまたま見かけて
恐れおののいて逃げ出していた事を彼女は
知らなかった。
そんな彼女は果たして貢に逃げられたり、
するのかしないのか、このことも
誰も知らない事である。
最後まで読んで下さりありがとうございました。