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造られた僕  作者: レキ
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第一話

ゴポ……ゴポポポ……。


ここは…何処?


「…………」


誰? 何を言っているの?


「さ……ざ…なさ……五…ん」


え? 何? なんなの?


「さあ、……めなさ…十五…ん」


何なの? 教えてよ。


「さあ、目覚めなさい。十五番」


十五番? それが僕の名前?


「どうやら意識はあるようだ。おい、カプセルを開けろ」


「え……でも、いいんですか? まだ十五番は調整中ですよ? それに十五番の力は強大です、もし暴走なんてしたら……」


「ふん、責任は私が持つ。それに、暴走したとしてもここにはそれを押さえつける力がある。問題は無いさ」


調整? 責任? 何の話なの? ねえ、教えてよ。


「それなら……まあ」


ブシュゥ……ザバァーー……ドサッ。


開く音、水の流れる音、何かが落ちる音。僕の頭の中にある知識にはそれが何なのかと言うものがあった。それに冷たい何かから解き放たれた後の浮遊感に続く衝撃。さっきの会話から察するに、僕は多分、液体の入ったカプセルの中に入れられていて、その中から解放されて僕は床に落ちたのだろう。


「調子はどうだ、目は開けられるか、喋れるか」


目……見える。目の前には目つきの鋭い女性がいた。誰だろう。

まあ、今は言われた通りのことをしよう。


「しゃ…べる…まつ」


「ふむ…起動したばかりか言語プログラムに些か問題がありそうだな。あとで修正しておこう。ほら、立て」


「問題…な…いでつ」


足元がふらつくけど何とか立つことはできた。この人は僕に何をさせようとしているのだろう。


「そうか、ではこちらに来い」


女の人が扉を開けてどこかに向かってしまう。僕は来いと言われた、だから其れに従う。


「あそこの白い円の上に立て」


女の人が向かったのは扉を抜けて螺旋状に下へ伸びている階段を下りていくとそこには真っ白に色塗られた広い部屋があった。そして女の人は僕に向かいの壁際にある白い円に立つように指示した。


だから僕はそれに従って円の上に立った。


「では、始めよう」


パチンッ。


ウィーン、ガシャン。


女の人が指を鳴らすと、近くの床が開いて、中から黒光りしたハンドガンが出てきた。


それを手にすると、ハンドガンを僕に向けてきた。


「実験ナンバーワン、貫通耐性の性能実験を開始する」


パァン。


銃口から光が出た後、僕の体に鈍い衝撃を感じた。後ろに仰け反るとまではいかなくても少し上体が揺れる感覚だった。


「ふむ、問題は無いようだ」


僕の胸を見ると、何も着ていない肌には銃の弾が少し減り込んでいた。


そのあとも女の人は何度も何度も色々な銃で僕を打ち続けた。けれどもそれらは全て僕の体内にまで入り込むことは出来なかった。それどころか僕の肌に傷をつけることすら出来なかった。


「は、はは、あっははははははは! 想像以上だ! 素晴らしい! 素晴らしいぞ十五番!」


狂ったように声を上げて喜ぶ女の人。何がそんなにも面白いんだろう。


「さあ、戻るぞ十五番!」


そのあとはさっきの部屋へと戻り、また僕はカプセルの中に閉じ込められた。






僕が意識を手に入れてから二月の月日が流れた。

その時間の中で僕は色々な情報を手に入れた。


一つ目は、僕が十五歳の少年をもとに造られた存在だったと言う事。

二つ目は、僕が戦争の道具として使うために造られたと言う事。

三つ目は、僕を造り出したこの組織はどこの国にも属していない組織で、僕を使って世界を手に入れようとしている事の三つだった。


でも、僕には関係のないこと。僕は造られた存在、僕に意志なんてものは存在しない。そして、この人たちには関係ない。だから僕はこの人たちに従って、使われるだけ。


そう、思っていた。


でも、それは違った。


確かに僕は造られた存在だから意志は無い。


でも、僕じゃないこの人は造られた存在じゃない。


僕の中の、僕の基になった人。


だから、僕は君に返そう。


この、体を。















――それは違う。


目を開くと、そこはいつもの部屋じゃなかった。


そこは全てが白で埋め尽くされ、壁と言う概念が無いかのように際限なく広がる場所だった。


そして、僕の目の前には一人の少年が立っていた。その姿は僕と全く一緒だった。

カプセルのガラスに移った僕の顔は知識の中では結構整っている顔つきだった。髪の色は白く染まっていて、何らかの原因で髪の色素が抜けたのかな。


――それはそうさ。お前は俺をもとに造られたんだろ。


なるほど、君がこの体の持ち主だったのか。


――ああ、俺は一度死んで、そのあとにこの場所に俺の死体が運ばれ、体を弄られ、そしてお前が俺の中で造られた。


? 君はなんで死んだのに意識があったの? 


――さあな、俺にもわからん。死んだはずなのに意識がある。まったく不思議な感覚だったぜ。


そう、それはともかくとして、何が違うの?


――ああ、それはな、この体はもう俺のものじゃなくてお前のもんだからだ。


僕の? 君はそれでいいの? 僕には意志なんてものは無いんだよ? ただ僕は使われるだけなんだよ。


――そんなことはねえさ。お前にも今は無いだけだろうけどいずれはお前にも見つかるだろうさ、それまでは俺がお前を手伝ってやるよ。


手伝う……なら、君にもこの体を使ってもらいたい。それが手伝ってもらう代わりの報酬ってことで。


――そうか。なら、お言葉に甘えさせてもらうぜ?


うん、わかった。じゃあ、早速手伝ってもらえるかな?


――おう、いいぜ。まずは何をする?


さあ? それを教えてほしいんだけど。


――そうか、ならまずはこの場所から抜け出さねえとな。


わかった、君がやる?


――いや、お前がやってくれ。俺はここじゃないどこかで体を借りるとするぜ。


うん。なら、





「行くよ」


ガシャァァアアン。


「ど、どうした! 何があった!」


「じゅ、十五番が暴走しました!」


「な、なにぃい!?」


僕がカプセルを破壊して外に出ると周りで作業をしていた研究員が焦った声を出して赤いボタンを押した。


ビーっ、ビーっ、ビーっ。


数瞬後に緊急警報が鳴り響いた。


「うるさいね、消そうか」


僕はボタンの近くにいる研究員の懐に瞬きの瞬間に詰め寄って首を圧し折った。


「ひ、ひぃぃいいい!」


「だから、五月蠅いよ」


もう一人の研究員は手を手刀の形で喉を貫いた。

首から夥しい量の血を流してその場に倒れこんだ。


「次だね」


扉を出て通路に出ると横からいつも感じていた衝撃を何発か受けた。


見ると二段二列に分かれてアサルトライフルを持っている武装した六人がいた。アサルトライフルからは

白煙が上がっていた。


「無駄なのにね」


――そうだな。


「意識…あるんだ」


――お前があの空間に来たことによってお前とのリンクができたからな。


「リンク?」


――いわば通信装置、電話みたいなもんだ。そんなことより、ここから出ようぜ。


「うん」


まずは後ろの列から倒そうか。


地面を蹴って距離を詰める。後列の右側にいたやつを被っているヘルメットごと頭を潰した。


「まず、一人」


振り返ることもできずに、後列の二人の心臓を突き破った。


「三人」


両手に刺さった二つの死体を放り投げて残りの三人の頭を蹴り飛ばす。

三つの頭は衝撃で爆散し、辺りに血飛沫が飛び散った。


「終わり」


――相変わらずこの体はすげえな、こんなの世界を敵に回しても勝てるぜ。


「そうなの?」


――そりゃそうだろ、銃で撃たれても死なねえんだからよ。


「でも、あの女の人は僕を倒す力があるって言ってたよ」


――まじかよ、そりゃ一体どんな兵器だよ。


「なんだろうね……ッ!」


――ん? どうしたんだ?


「なにか、来る」


「見つけたぞ」


後ろからの声に振り返ってみると、いつもの女の人が手にスイッチを持って立っていた。


「なに?」


「お前を連れ戻しに来た。さあ、速くカプセルの中に戻れ」


「無理」


「そうか、残念だ」


そう言いうと、手に持ったスイッチを押した。


ピ、ピ、ピ。


これは、何の音だろう。


――おい、これって体の中から聞こえるぞ。


「つまりは、爆弾」


「正解だ」


そうか、僕はここで殺される。

外から殺せないのなら中から殺すと言う事か。


「ごめんね、約束、果たせなかった」


――気にするな、それじゃあな。短い間だったけどな。


「うん、それじゃあ」


そして、僕と彼の体は砕け散った……。

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