13話 キャラバンと魔物使い
「ああ、居た居た」
「おーい、大将!」
俺は朝からアインと使役魔物達を連れて、レベル上げの為に近くの森に来ていた、そこにミアとフェルドが合流する。
「どうしたんだ?二人とも、何か問題でもあったか?」
「いや、問題じゃないよ、報告に来たんだ」
「報告?…ああ、キャラバンの事か」
二人は朝から、王都で話に出たキャラバンと交渉をしていた、偶々まだ滞在していたらしい。
「そうそう、何と運が良い事にキャラバンのリーダーがミアの姐さんの知り合いだったんだよ」
「で、次の町に乗せてってくれる事になってね―」
「へえ…」
馬車に乗れるなら移動速度はかなり速くなる、しかもミアのコネで、タダで乗せてくれるのだとか、これはかなりの幸運であった。
一応、護衛もする約束になったそうなのだが、まだこの辺りは騎士団の巡回エリアで街道には魔物も少ない、基本的に山賊でも出ない限り戦う事はない。
「それと、キャラバンリーダーが大将に会いたいらしいんだよ、それもあって呼びに来たんだ」
「世話になるんだし、挨拶くらいはしないとな」
社会人として、挨拶は基本だ。
「所で、何時出発ですか?」
とアインが質問した。
「明日だ」
「早いな!」
そう言ったフェルドに思わず突っ込む。
「あはは、まあ仕方ないさ、アッチも仕事があるからね」
「まあ、そうだろうが…んじゃ、帰って準備するか」
「そうですね、キリも良いですし」
話がまとまった所で、ミアが使役魔物を見る。
「…なんかゴブリン増えてないかい?」
「ああ、途中でゴブリンの群れにあっちまってな…」
使役魔物は今や猪頭一体にホブゴブリンのゴブきち、そして追加6体を合わせたゴブリン隊が10体になっていた。
「大将、この数じゃ町の近くに潜ませるのも厳しくないか?
」
「大丈夫だ、レベル20になって、良い魔法を習得したから…っと
『小型化』!」
魔法の発動に合わせ魔物達が小さくなった、およそ20cm、大体人形くらいのサイズだ。
「小さくなった!?」
「あらま…」
それを見て驚く二人。
「私もさっき見た時は驚きましたよ…」
「しかし使役魔法てのはデタラメだねぇ…」
「普通は発現方法と術式を理解した上で、体内の魔力をその通り動かせる様になって初めて使えるようになるもんなんだがな」
普通はそうだ、俺も地と無魔法はそうやって習得した。
「出来るんだから仕方ないさ…さて、町に入ろうか」
詳しくはわからないので、そう誤魔化して魔物も連れて町に入った。
◇◇◇
「あんたがパーティーリーダーか、俺はこのキャラバンのリーダー、リッヒだ、よろしくな」
髭面の体格の良い男性が名乗った、そしてその隣に立っている、少女を紹介した。
「こっちは俺の娘のララミーだ」
紹介に併せて、少女も自己紹介をする。
「ララミーです、よろしくお願いします」
頭を下げ挨拶をする、リッヒが32で彼女は10だそうだ、年の割にはしっかりしている様だ。
「私は交渉役兼副リーダーのシャニスだ、あんたらは一応護衛の扱いになるが、まあミアの紹介なら何も問題は無いだろうな」
そして最後に挨拶した男性も同じ村出身で、ミアの知り合いらしい、黒いスーツを着たら似合いそうな顔をしている。
「さて、次はリドナーの町に行く訳だが、出発は明日になる、今日はゆっくりしといてくれ、時間になったら連絡を入れるから」
「わかりました」
矢の補充や、新しいゴブリン達の装備を購入し、軽く準備を済ませ、宿に戻った。
◇◇◇
食事を済ませ、ミアと別れ部屋に入り寛いでいると、フェルドが話し掛けてきた。
「―さて大将、この町には娼館があるんだが…どうだ?」
「どうだ…って何がだ?」
「いやだからさ、一緒に行かないかって話さ」
その言葉を聞き、アインが顔をしかめ、白い目で見る。
「…フェルド」
しかし、フェルドはその目線に気にもしない。
「ん?アイン、お前も行くか?」
「行く訳が無いだろう!…全くお前は…」
アインも流石に呆れた様だ。
「まあまあ、で、大将はどうする?」
アインをなだめつつ、フェルドが再び確認をする。
「ちょっと確認したいんだか、この世界の医療技術ってどうなっているんだ?医院があったんだから、医者は居るんだよな」
娼館に関して、この質問は避けるわけには行かない質問だった。
「医療技術?」
「ああ、病気になったり、怪我をした時なんかどうしている?」
少し考え込み、フェルドが答える。
「病気になった時は薬草を煎じて飲んでるな…それか癒しの力で治すか」
それにアインか付け足す。
「怪我も大体同じですね、薬草を使うか癒しの力に頼ります…ただ、癒しの力は持っている人数が少ないですからね、利用するには、どうしても高額な費用が必要になります、ちなみにこの前ショウ殿が居た医院の医者は癒しの力を持っていました」
その希少性から、より強力な癒しの力を持つものは、とても傲慢な性格をしているらしい。
「何代目だったかな…医者だったって勇者の教えで、多少の医療技術は学んだんだけど、その勇者も教えるにはちょっと知識が不足していたらしくてな…今いる医者も、出来て診察してその症状にあった薬草を出すくらいだな」
「…確か8代目の勇者だったかと」
「だったっけ?んで大将、それがどうかしたのか?」
二人の説明を聞き、考え込む。
「ん?いや…俺は行くのは止めておく事にする」
そして、そう結論付けた。
「ありゃ…なあ、大将ってもしかして男色の気があるのか?」
「あるか!!…医療技術がその程度だと、性病が怖すぎる…だから止めておくんだよ」
トンでもない事を言い出すフェルドに突っ込みつつ、俺の放った言葉に二人が反応する。
「「性病?」」
「まあ、医療技術にもよるが、所謂死の病だな…」
「…あー…もしかして娼婦の早死の原因ってそれか!?」
「多分な…職業差別をする気はないが、娼館の経営者か体調の悪くなった娼婦を医者に見せるとは思えん、よっぽど高級な娼館ならわからんが」
どこだったかで、そんな話を聞いた事がある。
「…俺も止めとこ、癒しの力で治るかもわからんしな…」
「そうしろ、フェルド―さて、明日に備えて寝るかな」
「それが良いですね」
「ふう…そうするか」
フェルドはふて寝する事にしたらしい。
俺もアインも朝の狩りで疲れたのもあり、早目に寝る事にした。