第8話〜戦慄"魔狂領域"襲撃編〜
次回でこの戦慄の回は終わる予定です。
ご愛読してくださっている方、少し読んでみた方。
これからも読んでいただけると嬉しいです^^
それはくだらないことだった。
今になっては後悔しか残っていない。
私が学園を捨てたのは、学園長という重責に押しつぶされそうになったわけでも、煩わしくなったわけでもない。
ただ学園というものがたまらなく恐ろしく見えたのだ。
人を逸脱した力。
それを生み出す学園。
その頂点に立つのは私。
他人のは決して理解できない私だけの恐怖。
恐怖というのは決して、死や目先の恐ろしさのみではない。
私が恐れたのは他でもない。自分の持つ力だ。
天使に並ぶ魔力を持つと言われた学園長という席。
これほどの力を得て、自分が自分でいられるだろうか。
いや、少なくとも私には無理だった。
だから学園を捨てたのだ。
だが、、、、、
学園を捨てたところで、私の恐怖が消えることはなかった。
何も変わらない。
ただ学園に残してきた生徒に罪悪感を感じた。
学園という足枷は外れることはない。
それならば、、、、、
<学園・中央広場>
「もう時間はない。そうこうしているうちにすぐラズィの尖兵はやってくる。」
「大丈夫、覚悟はできています。」
セミの鳴き声が学園に響き渡る。
セミの声しか聞こえない。
生徒は皆、しんと静まり返り、精神を集中している。
「緊張するな、、、、、、、何が来るか分からないから余計にな、、」
「みんなが一致団結すれば大丈夫、、、信じてる」
急に大気がバチッと音をたてて歪んだ。
時空の歪みだろうか、、、
生徒と天使たちを取り囲むようにして、歪みができる。
「来たか!!!返り討ちにしてやるぜ!!」
「この日のために修行したんだ。一匹残らず消し炭にしてやらぁ!!」
歪みの中から、数体の異形の怪物が現れた。
「マンティコアか?これは、、、、、何つー強力なやつを、、、、、、」
合成生物マンティコア
ただ普通とは違った、デッドによって生み出されたものだ。
体から光子を打ち出し、相手に魔重力をかける。
常人ならば、通常の何倍ものGがかかり、押しつぶされる。
「クォォオオアアァァァァアァ!!!!」
獲物を見据えたようにそれぞれのマンティコアは睨みつける。
だが皆は一歩も引かない。
静かに攻撃態勢をとり、一斉にマンティコアに仕掛ける。
生徒は自分たちより山のようにはるかに大きい怪物に次々と襲いかかった。
蒼い炎で剣や鎌を創造し、マンティコアの肉を切り裂く。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!でかぶつ〜〜!!」
一度に30、40の相手に攻撃され、ひるみつつも、マンティコアは体から光子を放った。
「くぅぅあぁぁ、、、、つ、つぶれるぞこれ、、、、、」
「耐えろ!!これくらい、、、、、、どうって、、こと、、ない!!!」
明らかに動きが鈍くなった生徒めがけ、前足で薙ぎ払った。
一気に数名の生徒が100mほど吹き飛び、起き上がらない。
目視できるだけで6体。
これだけのマンティコアを片づけるなど並大抵ではできない。
1体で城を破壊することもできる。
「あまり時間がない!!イクセン!!アルヴェイン!!彼らの援護に回ってくれ!こいつは俺一人でやる!」
海人はひとりでマンティコアと対峙した。
傷ついてはいるものの弱っている様子はない。
「くっ、、、この前のキメラは様子見か、、、格が違う、、」
マンティコアは、尻尾や前足を高速でなぎ払って仕掛けてくる。
何度も吹き飛ばされ、地面にたたきつけられる。
「クォオオアァァアァ!!!!」
マンティコアが光子を発しようとした瞬間、海人は仕掛けた。
「沈黙の呪縛!!かの者に永久の裁きを!!」
マンティコアの周りに膜が発生し、たちまち包み込んでいった。
「ふぅ、、これで魔重力はかからないだろう、、、これまで散々叩きつけられた礼をさせてもらうぜ!!」
背負っていた命晶剣ラヴァストームを構え、マンティコアに斬りかかった。
尾を切り落としもがき苦しむマンティコアの首めがけて一閃。
巨体は音をたてて崩れた。
「はぁ、、、、はぁ、、、これはさすがに、、、、、、きついかも、、、、、、、はっ!?」
海人に体が影に覆われ、何事かと振り返った。
疲れ切った海人の背面に先ほど倒れたマンティコアが立っていた。
尾は切れてなくなっているし、首もない。だが立っている。
「なっ!?こいつ、、、、、やばい!!」
そう思ったときは手遅れ。マンティコアの前足によって吹き飛ばされ、学園の壁に激突した。
学園には傷一つないが、海人の骨はいくつか折れただろう。
「ぐっ、、、はっ、、、はぁ、、、はぁ、、、治癒能力を使う暇も体力もない、、
何より、、、首を切っても死なないなんて、、、なかなかやるじゃないか、、、」
よろよろと立ちあがり、痛みをこらえ、構えた。
「俺はお前らごときにはやられないよ、、、、なにより先代が許しちゃくれないからね、、、ふふ、、」
体中から血が流れているが、少しにやりと笑ってみせた。
「クオォォアアアァァァァァ!!!!」
「ふっ、、、、みんなが頑張ってるのに俺一人倒れられない、、、、
さぁこいよ!!!!次こそ立てなくしてやるさ!!!先代ラファエルに誓って!!!」