第2話〜運命の花境〜
評価してくれると次話への参考になると思いますので、どうかよろしくお願いします。
次話も近いうちに更新します(・ω・)ノ
「ねえ海人?あの秘密基地憶えてる?」
彼女は葉月雪奈。
海人(翼の生えた少年)の幼馴染であり、世話焼きだ。
「あ・・ああ、憶えてるよ。小学生の頃2人で作ったんだよな」
海人は本当に憶えているのか怪しい口調で言った。
確かに彼が言ったことは事実。記憶力は案外良いようだ。
「よく憶えてたね!?」
彼女はダメもとで言ってみたらしい。
彼も少し頭にきたらしく、少し睨みつけている。
「今あそこがどうなってるか気になるんだけど・・」
「確かに俺も気になるな。好きだったからな・・・あそこ・・」
「さっすが海人!!こういう時役に立つよね」
少々トゲのある言い方だが、彼は聞いていなかったらしい。
妙に秘密基地が気になってきたのだ。
彼の勘は人一倍強い。
まあ良いことに対しては全くと言っていい程働かないが・・・。
「どしたの?またいつもの男の勘?」
彼女は鋭かった。と言っても毎日会っているのだから、
大体の考えていることは分かるのだろう。
彼はこくりと頷くと、雪奈の手を引き、森の中へと足を踏み入れた。
彼はどれだけ"運が悪い"のだろうか。
森の中では今、1人の翼の生えた男が一人たたずんでいた。
そう・・・未来の彼のように・・。
彼の運の悪さは筋金入りだ。
テストでは、苦手分野の配点が高かったり、
ビンゴ大会では当たったことなどない。
まあこれくらいは学校の中に何人かはいるだろう。
しかし彼は一味違う。
青信号で横断歩道を渡っている時、自動車と衝突。
全治2か月だった。それも夏休みが始まって間もない頃だった。
それに、バスに乗ればジャックされる。
もう銃やナイフを突き付けられたくらいでは、驚きもしないくらいだ。
それほど運の悪い彼の勘だ。良い事なんてあるはずもない。
「・・・・・ん?・・・き、君は!?」
翼の生えた男は驚いた様子で、海人を見た。
雪奈は翼の生えた男を、物珍しそうに眺めた。
海人も、初めて見た神々しい翼に思わず見とれてしまった。
「あなたは・・・・何者ですか?」
当然の反応だった。
いつもの冷静な判断ができないのも無理はない。
常人にはありえない、翼の生えた男を見たのだから。
だが、「何者ですか?」と聞いても、翼の生えた男以外の何物でもない。
それに、名乗ったところで謎が深まるばかりだ。
しかし、翼の生えた男は答えた。
「ミカエル・・・・ミカエルだ。君は?」
問い返してきた。
だが、「君は?」と聞いても、平凡な高校生以外の何物でもない。
それに、名乗ったところでどうなるわけでもない。
しかし海人は答えた。
「海人・・・皆川海人です・・」
非常に二人は似ている。
答え方も、雰囲気も。
思考も、しぐさも・・。
傍から見ていると二人は、同じ処理をしているコンピュータのようだ。
「海人・・・か。人違いだったか?」
がっかりした様子でつぶやいた。
「いや・・・転生という可能性も・・」
「あの・・・どうかしたんですか?」
雪奈が聞いた。
一人でブツブツ言っているのが、気になって仕方がなかったのだ。
「ああ・・、彼が私の同志に似ていたものでな・・」
翼の生えた男の同士であるなら、それに似ている海人も、
その同志とやらとそっくりなのだろう。
一方海人は少し気になっていた。
この男はこのようなところで何をしているのか?
胸騒ぎがした。
いきなり不安になった。
どうして・・・? なぜ・・・?
男は意を決したかのように切り出した。
「海人君・・、私と一緒に時の雫に来てくれないか?」
「は・・・・?」
彼は驚いた。
考え事をしている最中に、また謎が飛び込んできた。
時の雫?
来てくれ?
何故俺に?
わからない・・・。
また頭を抱え込んだ。
考えても分かるものでもないのに。
「駄目か・・やはり・・」
普通なら断るだろう。いや・・断るべきだ。
訳の分からないところに連れて行かれるのを、
「分かりました」
の一言で済ませるのは、あまりにも2"単純"で"お人好し"な奴だけだろう。
そう。
海人は単純でお人好しなのだ。
そういった面では、これも"運が悪い"と言えるだろう。
「分かりました」
そう答えた。
やはり単純だ。
ここで「嫌だ」と一言言っておけば、"あのような事"に巻きこまれずにすんだものを。
しかし悪い人には見えなかった。いや、
背の翼の神々しさがそう思わせた。
「え・・・、か・・いと?」
耳を疑うのは言うまでもない。
何故行くの・・・・・と。
「大丈夫だよ、すぐ帰ってくるって。」
こんな考えも"単純"だろう。
「すぐ帰れる」
誰もそんなことは言っていない。
当のミカエルも、早く帰れるようにするつもりだった。
"つもり"だったのだ。
この男、ミカエルでさえ思いもよらなかった出来事が起こったのだ。
「心配すんなよ。必ず戻るから・・・な?雪奈」
そう言って柔らかな光に包まれて、雪奈の前から姿を消した。
2年間もの間・・・。
雪奈は訳が分からなかった。
「はぁ?わけわかんねぇよ」みたいな感じだ。
今まで横にいた幼馴染が謎の男と消えていった。
普通に考えれば"衝撃"だっただろう。
「海人・・・・。」
一人ぽつんと、花に囲まれた神秘的な花境の中に立っていた。
何も考えられなかった。
ただ、彼の名を呼び続けるだけだった。
なにはともあれ、見てくださった方。
ありがとうございます。
これからも頑張って行きたいと思っていますので、
よろしくお願いいたします( ..)φ