プロローグ①
第二回ぼくオリ大会が開催されていた中執筆に励んでおりました。
忙しい中僅かな時間にちょろちょろと書いていた結果一ヶ月でようやく鳥羽さんvsテスターまで完了しました。
なんという遅筆…。
すべてが書き上がってからだと完璧に熱が覚めかねないと危惧したので書き上がりしだい投稿していくかたちを取らせていただきます。
拙い文章ですがよろしければ最後までお付き合い頂けたら幸いです。
2XXX年、地球某所にてとある大会が開催されることとなった。
世界最強を決める天下一ならぬ、天上一武道会が執り行われる事となった。
前世界覇者の勅令により、各国より腕に覚えのある強者達が集う事となった。
大会覇者に送られる優勝賞品は世界管理者になる権利!
数々の予選を掻い潜り、大会本選の参加者はわずか8名という少数、世界を制する者を決める大会が始まろうとしていた。
◇
「―――と、いう大会があるので是非ともあなた様に審判、及び会場警護をお願いしたいのです。」
遥か過去に廃れたと言われるビデオ通信、それを使い画面に熱心に語りかける男、画面の向こうに見えるは軍服のようなものを纏い、一本の葉巻を片手に持つ一人の男性。
話の内容から察するに天上一武道会の審判、警護の依頼の通信だ。
「私のような老兵如きがそのような名誉ある大会の審判でよろしいのかな?」
「勿論ですとも!地球圏防衛連合艦隊第108艦隊所属の旗艦『アリシア』の艦長であるあなた様以外に適任者を探す事の方が難しいほどです!是非ともよろしくお願いしたいのです!」
「そこまで言われるのであれば……この鳥羽・A・紫暮、全力で務めさせて頂く所存であります。」
「ありがとうございます!それでは詳細は追ってお送り致します!失礼します。」
そういい通信を切り一息。
彼の相手にしていた男、『鳥羽・A・紫暮』は地球圏の防衛および治安維持を任命された連合艦隊第108艦隊所属、旗艦『アリシア』の艦長であり、その実績も計り知れないものがあった。
その手腕は連合随一と呼ばれるほどであり、戦術的読みの良さや、戦略的視点の広さなど、地球圏防衛の要であるとまで謳われる敏腕艦長である。
特に、艦隊指揮については、その拙速さと正確さに及ぶものはないとまで言われている。
閑話休題
天上一武道会という世界一を決める大会となると審判、警護も出場者と同等、またはそれ以上に強くなければ成り立たないのだ。
それこそ星の精鋭達と張り合えるほどの戦力の持ち主である彼のような人物でないと務まらない。
彼は艦長としての能力だけでなく、一個人の白兵戦力としても大きなものがある。
異星人侵略により右半身を失いサイボーグ化、右手にはレーザーユニットを内蔵しレーザー銃からレーザーブレード、果ては暗器として利用することが可能である。それらを駆使した千変万化の攻め手を持つ。
また、生身の部分も右半身のサイボーグに劣らぬほど鍛え抜かれており、サイボーグになんら劣らぬ身体能力を発揮することを可能とした。
特に、生身の感覚を生かした繊細な体術により、全身サイボーグとは比べ物にならないスムーズな脚捌きが彼の個人戦闘能力を支えているのだ。
「さて、審判と警備の手配は終わった!後はこの地域の出場者のリストと合わせて提出するだけだな!」
―――彼は長時間の労働による疲労のせいなのか気づいてはいなかった。
『鳥羽・A・紫暮』と名を記入した書類の題が出場者一覧だったということに。
◇
「―――それでは本日のプレゼンは取締役の彼にお願いします。」
「はい。昨年に我が社が開発した当初の工業用モデル3タイプを同時拡張搭載させることに成功しました!
人工知能を向上、更に人間に限りなく近い動作を可能に!
その名は「-ALL-MODEL 『EASTERN PUNDIT』」!
従来のモデルによる力を更に向上し、最大100tの重さまで運搬が可能になりました。
POWER SYSTEMは型に似合わぬ力を持っており、少量の動力で十分な機能をはたします!なんと単一電池一本から稼働が可能なのです!
TELEPORTED SYSTEMはブーツに搭載。耐久力はもちろん、物を運搬しながら最大直径5km圏内までならテレポートが可能です!
元のモデルの耐久を更に向上させた追加装甲は標準搭載!これで隕石だろうが災害だろうが来ても大丈夫ですね!
従来までは工業用ロボットとして開発が進められていましたが他社からの『熱烈』なご要望により
護衛用として開発しました。まだ審査は得ておらず、生産体制に入っていないのでこの試験用モデル一体のみです。
そこで近日格闘を催した大会、みなさんもご存知『天上一武道会』が開催されます。私取締役はこのモデルの機動力、護衛時の戦闘能力をみなさんに見てもらいたい一心で参加をいたしました。
そこでの功績こそ私の最大のプレゼンとなりましょう!どうぞ今後も我が社をよろしくお願いいたします!」
盛大な拍手と共にプレゼンは終了したのだった。
「さすが取締役ですね!あとは大会で結果を残すだけですね!」
「いや、まだだ。まだ完璧ではない。この大会に優勝してこそ我が社の未来が輝くのだ。そのための手段は…厭わない。」
プレゼン終了後、密かに試作機「-ALL-MODEL 『EASTERN PUNDIT』」を会社秘匿のガレージに運搬し、外部からの接触を完全に絶った彼ら2人。
「-ALL-MODEL 『EASTERN PUNDIT』」を開発・メンテナンス用の機械に接続しプログラムを起動する。
[―――「-ALL-MODEL 『EASTERN PUNDIT』」ノ カスタムオペレーション ヲ カイシ シマス。―――]
「さぁ、もっと強くなるのだ……。我が社の為に。」
――ガガガガガッ!ジジジジィィィ―――
各部分の装甲が剥がされては新たな部品を搭載し再び溶接。
それを繰り返すこと数時間後。
ガレージには再びの静寂が訪れていた。
[―――「-ALL-MODEL 『EASTERN PUNDIT』」ノ カスタムオペレーション ガ カンリョウ シマシタ。カスタム コンテンツ ヲ カクニン シマス カ?―――]
[―――カスタム コンテンツ ヲ ヒョウジ シマス。―――]
画面一杯に表記される文字列。そこには過去数百年では考えられないような技術が詰め込まれていた。
[「 ・基本エネルギー供給システムをバッテリー駆動から永久機関駆動へ変更。
■戦闘用特別追加プログラム
・POW DYNAMITE
・MYSTERIOUS GIRL
・FATMAN HEART
が、追加されました。」 ]
「よし、成功だ。この大会で勝利するための採算度外視の1体だ。しっかりと結果を残してもらわなければ私の首が飛ぶのだよ。勝つのだ、「-ALL-MODEL 『EASTERN PUNDIT』」……いや、「-ALL-MODEL TESTER.01」よッ!クックック………。」
ガレージには取締役の男の笑い声が響き渡るのであった。
「中身の正体はバレないですよね?大丈夫ですよね?」
彼の背後でプレゼンの司会進行者だった男が心配していることも露知らず、彼は高笑いを続けるのであった。
◇
所変わって極東に存在すると言われる時間の止まった国、日ノ(ヒノ)。
ここでも天上一大会出場が決まった少女と狼がいた。
「やっと……、やっと尻尾を掴んだんだ!今回こそ絶対に逃がさないッ!」
『こらこら、あんまり躍起になってるとまた足元を掬われて逃げられちまうよ?』
「で…でもぉ…」
『今ここでウズウズしてても仕方がないだろう?今は力を蓄えておかないとダメだろう?仮にも世界一を決める戦いの場なんだよ、亡くなった母上殿と父上殿に恥ずかしい姿は見せたくないだろう?』
一匹の白銀の美しい毛並みを持つ大狼の妖怪『銀狼』と巫女服を身に纏い純粋に、かつ貪欲に戦いに備える少女が一人いた。
一人と一匹、二人の関係は一種の親子関係のようなモノだった。
十数年前、とある陰陽師と祓い屋が殺されてしまう事件があった。
閉鎖的な国の性質と事件を知る人間の少なさから公にされなかった事件だ。
その被害者の二人を両親とするのが彼女、神藤 命だった。
事件時、彼女も現場に居たのだが、何とか両親が彼女を逃がすことに成功したが、逃がす際に彼女も瀕死の怪我を負ってしまい倒れていたところを両親に恩のある妖怪「銀狼」の一族に助けられた。
つまりはこの狼が命にとっての現在の親なのだ。
「でも大会の時間が昼っていうのは少し助かったかなぁ…、半妖化しちゃったら聞き出すこともできないし…。」
『まずはこの子のどこから来るのかわからない自信をどうにかしないとダメかもしれないな…。』
彼女は先に言った通り陰陽師と祓い屋の血を引く人間だが銀狼一族に助けてもらった際、彼女の中に銀狼の血が混ざってしまった。そのため元々神力を持っていたの彼女だが、更に妖怪の力も手にしてしまった。
その血の効力なのか、通常の人間より身体能力が高く嗅覚・聴覚に優れている。だが、満月の夜だけは銀狼の力が強く出てしまい自我を失った銀髪・紅目の半妖と化してしまう。
彼女にとって今回の大会では"優勝"よりも"本当の両親を殺した人物・組織の情報を得ること"が重要であり、意識を失ってしまう半妖化は勘弁願いたいのだ。
「さーて!どこまで勝ち抜けるかはわからないけど情報だけでも収集できる機会!絶対に逃がさないんだから!」
◇
とある西洋風の廃れた館、人がいないはずであるそこに2人の人物がいた。
「魔女様の命令通り、大会にエントリーしてきましたよ!ここで勝ち進めばいいんですよね?」
「そうよ、今回参加したのはあなたがどれほどの相手と戦うことができるのか測りたいだけだから。万が一にも指輪が危なかったらちゃんと棄権するのよ?あなたが壊れてしまっては元も子もないわ。」
そこにいるのは茶色のスーツ姿で如何にも現代社会人を匂わせる服装をした男性、ただ普通と違うのは腰に日本刀を思わせる形状の刀を納刀していることだ。
もうひとりの人物はなんらかのコスプレを思わせる黒塗りのローブに三角状に伸びた大きな帽子、所謂魔女と呼ばれるような服装だ。
「ははは、魔女様は相変わらず心配性だなぁ、でもそこが好きだぜ」
「まったく!からかうのはいい加減にしてください!あなたと言えど怒りますよ!」
「いやぁ~そりゃ勘弁だぜ、でも怒ってる魔女様も可愛いなぁ…」
甘甘な雰囲気を醸し出す刀持ちの男と魔女風の女。
2人とも姿に忠実に立派な侍と魔女である。
男の方はかつて江戸時代に生きていた侍で、自分の村を訪れた放浪の魔女に一目惚れし、異端者を狩ろうとした御上に逆らい、死罪となった。
その後魔女に生き返らせられ、彼女に付き従う屍となった。
そして江戸時代より遥か先の時代である現在まで姿を変えずして残り続けているのである。
「あなたがそんな調子なので本当のことを言いますけど、参加者の中で不穏な輩がいるようなのです。いずれ輩は私たちに牙を剥くと考えています。」
「結局は大会で勝ち進んで行けばいいんだろ?俺に任せとけって!」
「どうも今回の相手は今まで程簡単に行く相手ではなさそうです。心してかかるように…と、心の隅でいいので留めてください!あなたが壊れるのは見たくないのです!///」
「あれれ?魔女様顔が朱いですよ?照れてるんですか?」
「うるさいですね!少しお黙りなさい!」
魔女の思惑と侍の思惑違えたまま大会当日までの数日を過ごすのであった。