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深夜の上客。
「お客さん。どちらまでいきますか?」
深夜二時を回った頃、私は1人の男を車に乗せた。おそらく飲んでいたのだろう。車内は薄暗いが男の顔が赤らんでるのがわかる。
「そうですね…七里ヶ浜までお願いします。」
「七里ヶ浜ですか?ここからだとそこそこ高く付きますが…」
心配しながら尋ねたが男は鼻で笑いながら言った。
「大丈夫ですよ。お金ならあるので。」
男はそう言いながら財布の中を見せてきた。おそらくブランドものであろう財布の中には札の束がぎっちりと入っていた。全て千円札だとしても十分足りる枚数だ。
「失礼しました。それでは向かいますが高速道路は使いますか?」
「いや、せっかくだし下道だけでお願いします。」
たまにいる上客だ。おそらく酔った勢いで正常な判断ができておらず財布の紐が緩くなっているのだろう。男には悪いが稼げるチャンスに少しテンションが上がる。
「わかりました。では出発します。」
私はナビをセットして車を発進させた。駅周辺は華金ということもあり酒の回っているサラリーマンで溢れかえっていた。そんな人々を横目に見ながらふとバックミラーを見ると男は窓の外を見て何か物思いに耽っているようだった。




