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ドリフター

作者: 四宮楓

今日は金曜日。“金曜 女のドラマシリーズ”です。





 不貞腐れていた当時の私は“容姿”には自信があったから……KIKOさんみたいに“億”稼ぎたくて中途で高校をバックレて、二つサバ読んでキャバ嬢になった。


 でも、今までみたく言い寄って来る男の子を転がすのとはまるで違ってて……私、自分の事、“人付き合いバカ”だって初めて知った。

 だからと言って、他の子のヘルプばっかじゃバカバカしいから、キャバはあっさり辞めた。


「あ~これじゃ親とおんなじ負け犬じゃん!」ってちょっと落ちて……親共が“パート”に出てる間は家でゴロゴロして夕方になってから街へ繰り出し、馴染みの男の子達を取っかえ引っかえしてた。


 けれど……いつも諍いの絶えない親共は自分達はマトモじゃないくせして私に意見するし、古い公団住宅のお昼間は、壁の向うや天井から色んな物音が聞こえて来てウザかった。


 だったら!!


 馴染みの男の子達の部屋に転がり込んだって、どーせ、その日のメシとベッドだけなんだから……


 その分、カラダで稼いだ方がいい!!

 ()()のは慣れてんだから“人付き合いバカ”の私でも何とかなるよね!


 って始めて……もちろん嫌な事もあるけど数かぞえていたら何とかなった。


 目標は中古でいいから即金でマンションを買う事!!


 築年数が古ければ1000万未満で買える物件があるので……私は3年計画を立てた。


 計画通りに行けば私は成人と共に独立できる!!



 --------------------------------------------------------------------


「カオルちゃんは……まだ仕事辞めないの?」


 こう言いながら()()()()()()()カバンから銀行の封筒を取り出した山岡さんの前で……私はブラのホックを留め、それをグルリ!と背中へ回した。


「うん!目標があるから!」


「目標?」


「そう! 当ててみてよ! 山岡さんは常連だから分かるかも! そうだ!正解だったらご褒美あげる!」


「―ん、何だろう……学校へ行くとか?」


「私、勉強嫌いだよ」


「そうかな……じゃあ!旅行!海外とか?」


「私、デブにはなりたくないけど出不精だよ」


「えー?! 分からないなあ……じゃあ、あれだ!()()()()()()()オトコが居るんだ!」


「へっ?! それこそ無いよ~!」


「そっか!……」


「どうしたの?」


「ん? いや、その……言える筋合いじゃないんだけどさ! “カオルちゃん推し”のオレとしては“投げ銭”がすべて店や情夫に流れるのは……ね」


「ああ、なるほど! 私、このショーバイ始めてからオトコ居ないよ! せっかく稼いだお金を貢ぐとかあり得ないし!」


「カオルちゃんがそう言うなら信じるよ」


「それって私の言った事、信じて無いでしょ!」

 冗談のつもりの軽口に山岡さんが黙りこんでしまったので私は焦ってしまった。

 やっぱり私は“人付き合いバカ”だ……こんな時、どうフォローしていいか分からなくて……でも、何だろう?胸が熱くなって、ベッドの縁に腰掛けている山岡さんのほっぺにキスしたら、山岡さん、顔を伏せてしまった。


「参ったなあ……」


「……ごめん」


「そうじゃないんだ!その……カオルちゃん、昔、池袋の9T9に居ただろ? “セリナさん”って名前で……」


「知ってたの?!」


「うん! 何回かお店へ行ったから」


「ええ?? 全然覚えてない! まあ私、ヘルプばっかだったし……なんかごめんね」


「いや、覚えていてくれる訳ないよ! オレは独立前で……ジーパンによれたシャツ着た小汚い恰好で……当時の上司にコバンザメしてたんだから」


「う~ん!私、そんなに酷い対応だった? ますますゴメンだね」


 下着姿でまったく説得力は無いけど……とにかく私は頭を下げた。

 すると山岡さんは……今までの私の人生の中で……会った事の無い“男の子”になった。

 躊躇いがちに私の手を取り、こう言ってくれた。


「その逆だよ! “セリナさん”はとても良くしてくれた。だから独り立ちしたら指名しようと思ったのに……」


「アハハ! キャバはすぐに見切り付けちゃったからね。で、“転職”したの」


 山岡さんが辛そうに頷くので、私の胸は……今度はシクシクとする。


「実は……必死に探したんだ。で、とうとう見つけ出した時は居ても立っても居られないくて即指名した。そして初めて肌を合わせた時は……思いを遂げられたのと色んなものへの嫉妬がないまぜになって……どうにかなりそうだった……でもそれを包んでくれたのも()()()()()()だったんだ」


 こんな耳を疑う様な告白を聞かされて!

 私はどうすれば??……


 戸惑う私に……山岡さんは長いため息をついた。


「改めて聞くけど……カオルちゃんは……まだ仕事辞めないの? そうまでするカオルちゃんの目的って何?」


 そう聞かれて……一瞬、言葉が出なかった。

「……私の目的

 ……私は!!

 安心できる場所が欲しいの」


 次の瞬間に私はカレの腕の中に居た。


 言葉よりも更に熱くカレの想いが私の全身を温め満たしてゆく……

 そして私は……声を上げて泣いた。


 こうして“安住の地”を見つけた私は……

 その年のクリスマスに温かい人達の心からの祝福を受けて……

『山岡薫那(ゆきな)』となった。




                        おしまい♡



とにかく!


ハッピーエンドが書きたかったのです!(#^.^#)




ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!

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