表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

 翌日、クラウディオは侯爵にアドリアナはレオンと想い合っているようだと話し、いつ婚約を変更してもかまわないと言ったが、侯爵が頷くことはなかった。


 アドリアナとクラウディオは婚約者になった後もその関係はほとんど変わりなく、侯爵令嬢とその護衛騎士のままだった。

 アドリアナは時折家の者の目を盗んで外へ出ようとすることがあったが、大抵失敗していた。しかし、ほぼ専属のようにアドリアナに張り付いていたクラウディオが不在の日、アドリアナは新人の侍女や馭者に金品を渡し、家を抜け出ることに成功してしまった。


 アドリアナは、郊外にあるアゴスト伯爵の別荘でアゴスト伯爵の長男セブリアンと会っていた。侍女侍従や護衛を遠ざけ、庭にある四阿で二人きりで過ごしていたところに突如魔物が現れ、襲ってきた。

 悲鳴を聞きつけ、アゴスト伯爵家の護衛が庭に駆け付けると、セブリアンは肩に傷を負いながらも既に四阿から離れ、屋敷に戻っていたが、アドリアナは四阿のそばに倒れ、胸から腰にかけて大きな切り裂き傷を負い、その傷から赤い血が流れ、闇色の瘴気が煙のように沸き出ていた。

 四阿に残された菓子をむさぼる魔物を見つけた護衛が立ち向かい、魔物は傷を負い、逃げて行った。


 アドリアナは侯爵邸に運ばれ、治癒師が呼ばれて治療に当たったが、流れ出る血を止めることはできたものの魔物がつけた傷を塞ぐことはできなかった。瘴気が邪魔をして治癒の魔法を通さないのだ。どす黒い傷跡は少しづつ瘴気を増やし、アドリアナは意識を失ったまま、痛みでうめくことさえなかった。

 娘のそんな姿を見て、アドリアナの母は号泣し、床に座り込んだ。

 かつては隣国の王子の婚約者として学業を積み、作法を学び、厳しい教えにも弱音を吐くことがなかった自慢の娘が、数々の醜聞を浴び、ついには男と密会中に魔物に襲われ、生死をさまよっている。どうしてこんなことになってしまったのか。悲鳴のような声をあげて泣き叫んだ。

「婚約を強いて、すまなかった」

 アドリアナの部屋で護衛を続けるクラウディオを見て、サリナス侯爵は弱々しくつぶやき、ふらつく夫人に手を貸しながら部屋を出ていった。


 近日中に婚約解消の手続きが取られるのだろうとクラウディオは思った。あるいはアドリアナの絶命で自然に解消となるのかもしれない。しかし、解消されるまでは婚約者であり、守るべきサリナス家の令嬢だ。クラウディオはそのまま部屋に残り、部屋付きの侍女にも下がっていいと告げた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ