安らぎ
洋介たちは康次やたくさんの死体を火葬し、もとの場所に謙治たちの班が戻ってないことを確認すると、謙治たちがいった方向へと歩きだした。
途中、安全そうな洞穴で一休みすることにした。
死体からはぎ取った燃えそうな布や衣服を使い火をつけ、5人でそのまわりを囲んだ。洞穴の壁に5人の影が映し出された。
「眠くなってきたな…」
強がポツリと言った。
「そうだな、ここらへんで一休みしてもいいんじゃねぇか、洋介?茜も疲れてるだろうしな」
すでに火を背にし、横に体を伸ばし右手を枕にして頬杖をついている竜が尋ねた。
強はすでにいびきをかいている。
洋介はプッと吹き出し、「そうだな、休もう」と言った。
「諒子は寝ないのか?」
3人とも寝静まり、まだ起きている諒子に洋介は尋ねた。
「えぇ、洋介こそ寝ないで大丈夫なの?」
諒子は洋介の顔をじっと見つめた。
「俺はまだ大丈夫。」
洋介は笑顔で答え、「となりいい?」と諒子に尋ねた。
「いいよ。」諒子の答えはすぐに返ってきた。
洋介はゆっくりと腰を落とし、手のひらを火にかざした。
「とんでもない試練だな…康次たちが死ぬなんて…」
洋介は火を見つめながらつぶやいた。
「…そうね。なんだか悔しいわね…。」
諒子も火を見つめながら答える。
しばらくの沈黙のあと、洋介がゆっくりと口を開いた。
「俺さ、蘇ったら人のためになる人生を生きたいって言ったじゃん。」
「うん。」
「もう一つあるんだけど…」
「何?」
「…諒子と共に生きていきたい」
諒子は目を見開き、洋介の方をむいた。洋介はじっと諒子を見つめていた。
「…駄目…かな?」
洋介は顔を少し下に落とした。
諒子は微笑み、「いいよ。」と言って、洋介に抱きついた。
「待ってたんだぞ、その言葉ぁ」
諒子は目に涙を浮かべにっこりと笑った。洋介もやさしく抱き締めた。
「好きだ、諒子」
諒子の頬を涙がつたった。
「…私もよ」
二人は抱き合いながら、ゆっくりと目を閉じた。
暖かい炎が二人の影を優しく照らし続けていた……
【残り6人】