表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Last Smile  作者: 町田竜祐
5/22

死闘

「和也ぁー!!」

孝志は水面に向かって大声で叫んだ。

しばらくすると、巨大な触手に絡まった和也が水から出てきた。

「和也!!手を伸ばしなさい!!」

触手は一層絡まり、和也は呻いた。

「おのれ…和也を離せ!!」

孝志は仕込み杖をとり、触手に切り付けた。

「ぎゃああぅお!!!!」

水面から叫び声がし、和也は水面に落とされた。

孝志は和也に「手を伸ばせ!!」と叫ぶと、和也の手を掴みひっぱりあげようとした。

しかし和也の体にまた、いくつもの触手が絡みつく。

刄を突き立て触手を何度も何度も振り払い、やっとのことで和也を助けだした孝志は息をついた、その刹那…

今度は孝志に触手が絡みつき、水の中に引きずり込んだ。

孝志は水面に浮かんだ杖を掴もうと必死にもがいたが、杖は水の中へと消えていった。

「孝志さん!!」

和也は起き上がり、手を伸ばした。

「孝志さん、掴まってください!!」

和也は必死に手を伸ばす。

「ばっ、馬鹿もん!!引っ込めろ!!触手が絡まる!!」

孝志は和也に叫んだ。

「和也、お前もこの事を洋介たちに報告しに行きなさい。ワシなんぞにかまうな…。」

和也は腕を引っ込め、立ちすくんだ。

「生きろ、和也…。蘇り、自分のやりたいように生きろ…。お前は、まだ若い…さぁ、行け…!!」

和也は孝志の言うことに従い、振り替えって元きた道を歩きだした…その時!!

またもや振り返り、助走をつけて泉に向かって走りだした……。

 

 

 

 

「おぉぉぉぉ!!!!」

和也は叫んだ。

「孝志さんを返しやがれぇ!!!!」

「よせ!!和也!!!!」

孝志が叫び終わる頃には、和也の体は宙に浮いた後だった。そしてそのまま泉に落下した。

「か、和也…この馬鹿野郎!!!」

和也の体にも数千もの触手が絡み付き、力なく水に浮く和也に対し、孝志は叱咤した。

「す、すいません…でも、俺、孝志さんを助けたくて……」

和也の体はゆっくりと沈み始めた。その時、孝志はすべてを察知した。

この泉自体が生きものだったのだ。この泉では抵抗すると触手の締め付けが強まり、浮かぶものは沈んでいき、この泉の体の中に入る…そんな具合かと…。

「た、孝志さん…」

和也がゆっくりと手を伸ばした。孝志はその手をしっかりと握り締める。

「…洋介さん、怒るかなぁ…?」

和也は涙を浮かべ、孝志の顔を見た。孝志も涙を浮かべて、

「…当たり前だ、馬鹿もん…!!」

涙が頬を伝った…。

「…すいま…せん…」

和也は微笑み、ゆっくりと水の中に消えていった…。

「…ワシも…すぐにいくよ…」

孝志は和也が沈んだあたりに向かって微笑み、ゆっくりと天井を見上げ、目を閉じた……。

 

         【残り9人】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ