仲間
「…どうすんだよ…?その子…」
竜が怪訝そうに聞いた。
竜と呼ばれる背の高い男は洋介の幼なじみに当たる
「とにかく連れていく!!俺を助けてくれた子だ!!」
洋介は竜に語気強く言い放ち、諒子のほうをちらッと見た。
諒子は心配そうに少女を見つめていたが、洋介の視線に気付くと、ゆっくりと頷いた。
どれだけの距離を歩いただろうか…。
目の前には大きな神殿があった。
中に入ると人の気配はなく、強が先頭に立って歩いていった。
「記憶の神殿ね…。」
諒子は溜め息まじりに言った。
「記憶がなきゃ、決して見ることができないものよ。」
しばらく歩くと、広い部屋に出た。
「…ここは?」
強が辺りを見回しながら言うと、どこからともなく声が聞こえてきた…。
「…蘇りの試練を受けるか…?」
一同は驚き、辺りを見回した。
「誰だ!!?どこにいる!!?」
洋介は叫んだ。しかし返ってくる答えは同じだった。
「…蘇りの試練を受けるか…?」
洋介は声に向かって叫んだ。
「受けるためにここにきた!!」
声はしばらく止み、代わりに右の壁が開いた。
「いくがよい…」
声は一言だけ言うと、プッツリと聞こえなくなった…。
洋介は右の壁に開いた扉から溢れる光を睨み付けた…。
すると、洋介が抱えている少女が目を覚ました……。
少女は瞬きを2回すると、洋介と見つめあった……
「…あなたは…」
その少女は洋介の顔を見て、首を傾げた。
「覚えているか…?」
洋介はゆっくりと少女を降ろしながら聞いた。
「刑事の顔は思い出せないが、俺が撃たれそうになった時、君が手を広げ、目の前に立ちはだかったことを…?」
洋介は少女の目をじっと見つめた。
「すこしだったけど、思い出した気がする…。」
洋介は微笑み、「そうか…」と言った。
「俺の盾になってくれたのに俺が死んじまったら、君は無駄死にだったな…。すまなかった…」
洋介は少女に向かって頭を下げた。少女は何も言わずに、ただ洋介を見ていた。
頭を上げた洋介は「君も蘇りの試練を受けないか?」と言った。少女は目をパチクリさせる。
「驚くのも無理はない。俺も最初聞いたときはな…。」
「それは私でも受けられるの…?」
少女は胸に手を当てて尋ねた。「もちろんさ。」洋介はそう答えると、「俺のために死んでしまったから、今度は俺が命に変えても必ず蘇らしてみせる。」と洋介は力強く言った。
少女はニッコリと笑って「うん。」と答えた。
洋介はみんなを集めた。
「俺たちは生前、たくさんの人を殺した…。俺はその罪を償うため、もし蘇ることができたならば、今度こそは逆に人々のためになるような一生を送りたい!!
そこでみんなにお願いがある!!もしみんなも蘇ることができたら、また俺に力を貸してくれないか?頼…」
「頼まれなくてもそのつもりだよ!!」
洋介が言いおわらないうちに、強が口をはさんだ。
口に笑みを浮かべた強はみんなに向かって「なぁ、お前ら!?」と言った。
すると、メンバーから口々に「当たり前じゃないですか、何を今更…」「話ってこんなことかよ!!」というような言葉が聞こえ、笑いになった。
洋介はそんなメンバーの思いがうれしく、笑いながら俯き、目には涙が溢れた。
諒子は洋介の背中をポンッと叩き、それがさらにうれしさを増した。
「あれ!?洋介泣いてんのかよぉ!?」
強がわざとらしく叫んで、みんなも口々に「ほんとだ泣いてる」「これだから心配なんだよなぁ」というような言葉が聞こえ、「うるせぇ!!」と洋介はヤケになって叫んだ。
「…お前ら、最高の仲間たちだぜ…!!ぜってぇ、11人と1人、12人で蘇ろうな!!」
洋介が涙を流しながら言うと「おぅ!!」と仲間たちが答えた…
もちろんその後、笑いに変わった……。