終幕
…大介は精神鑑定の結果、異常であることがわかり、自宅で監視付きの療養にな
った。
…洋介は何回かの裁判の後、死刑が言い渡された。
…控訴はせず、洋介の死刑は確定した。
…そんな2人が再び出会ったのは、初公判から4年が過ぎた10月のある日だった。
大介は面会室の椅子にゆっくりと腰を掛けた。
ガラス越しに洋介が座るであろう椅子がある。
大介は目を瞑り、今までのことを振り返った。
ブラック・イレブンとの死闘から今までの長い期間を…
しばらくして、ドアが開いた。
真っ白い囚人服に身を包んだ、髭の生えた、痩せこけた洋介が入ってきて、ゆっ
くりと大介の目の前に座った。
「…久しぶりだな…刑事…」
洋介は力弱い声でゆっくりと喋った。
「…止めろ。もう今は刑事ではない…。警察手帳は捨てたのだ…。」
大介は懐かしそうに微笑んだ。
洋介は少し驚いた顔をしたが、薄く微笑んだ。
「勿体ないな…あんたみたいな刑事は、もう出てこないぞ…」
大介は何回か頷き、
「宿敵のお前に言われるのは…最大の賛辞だな…。」
と親しみを持って喋ったが、やがて目に涙を浮かべた。
「…なんで…松崎茜さんのことを庇った…?」
洋介は眉毛をピクリと動かし、大介を見つめた。
「誰かの役になりたかった…のかな…。」
洋介は俯いて薄笑いをした。
「俺の罪だ…殺したのは俺ではないか…罪を償わなければならない身のまま生き
ろと言うのか…?」
大介は洋介に問い掛けた。洋介は口元を歪ませた。
「…そうだ…。」
大介は目を見開いた。洋介は続ける。
「人の死は死で償うのが妥当だとは思わない…。同じように、罪を人が用意した
刑で償うのが妥当だとも思わない…。」
大介の頬を一筋の涙が伝った。
「自分が背負った罪は…苦しみながらそれを償う答えを探し、一生を払って完遂
すること…。一生背負わねばならないものだ…。」
洋介の目にも涙が光った。
大介は悔しさでいっぱいになり、台に拳を握って叩きつけた。
「…もし、お前が俺の隣で蘇ってくれなら…すぐさま記憶が取り戻せたら…世界
に逃がして…夢を叶えさせることもできたろうに…!!」
大介は何度も悔しそうに叩きつけた。
「…もういいんだ…」
大介のそんな姿を見た洋介の目からも涙が落ちる。
「…無念だ…無念だ…!!」
大介の目から涙が、滝のように流れ落ちた……。