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Last Smile  作者: 町田竜祐
2/22

再会

…目を開けると見知らぬ世界だった。

洋介は、いや洋介と呼ばれていた男は、起き上がると頭を掻いた。

『ここはどこだ?』男はそう思うと、ふらつく足で歩きだした。

 

しばらく歩くと人が集まっていた。そいつらは皆、男に気が付き、一斉に集まってきた。

「おぃ、おまえ!!ここはどこだ!?」

一人、30代くらいの男が男に向かって話かけた。

「…知らない。」

男がそう答えると、その男はチッっと舌打ちし男から離れていった。

 

そこにいる人々は皆、ここがどこかを知らず、記憶さえも失っていた。

もちろん、男も同様だった。

自分がなぜ、このような世界にこなければならなかったのかと自分に問い掛け続け、ただひたすら歩くしかなかった。

 

そこは広かった。

空は青いというか光輝いて、地面は植物もなく岩と土がむき出しになっていた。

いったい何人いるのかわからない大勢の人々が「ここはどこだ?」と言葉を交わしている。

男は適当な岩にもたれかかると、いつしか眠りについた…。

 

 

 

いったい、何時間眠ってしまったのだろうか?

男は目を覚ました。

空は相変わらず光輝き、昼も夜も、いや、時間の感覚がない世界だ。

何時間眠っていても、おそらくこの空はこの空のまんまなんだろう…。

ふと、男は目の前に立っている女に気が付いた。

「………あれ?どっかで………」

突然、男の脳に爆発が起こった。するとそれと同時に一つずつ映像や言葉が頭の中に生まれてきた。

そして爆発が終わると、その女に対する記憶が戻っていた。

「………諒子…。」

女はクスッと笑い、

「洋介もきちゃったんだ…」

と悲しげに言った。

と同時に爆発。

「そ、そうか!!俺の名前は洋介か!!」

子供のように叫ぶと、諒子は微笑み、手を差し出した。

「みんな、あなたを待ってるわ!!来て!!あなたの記憶を取り戻してあげる!!」

 

 

 

 

洋介の脳に続け様の爆発が起こったのはいうまでもあるまい。

かつての『ブラック・イレブン』の仲間たちに出会い、洋介はほぼほとんどの記憶を取り戻した。

しかし、それは他の仲間たちも同じだった。

「ここでは記憶がない者、そして記憶を共にした仲間がいないと永遠にこの世界を彷徨い続けるのよ。」

諒子は目を細め、人々を見た。

「彼らはいったい何年、ここを彷徨い続けているのでしょうね…?」

おそらくこの中には自分たちが殺した人も含まれているのだろうか…?

そう思うと、洋介は胸が苦しくなった。

 

「…とりあえず、洋介も来たんだしいくか!!」

仲間の1人の大柄の男が威勢よく言った。

「…いったいどこへいくんだ?強」

強と呼ばれるその男は大声で笑い、

「蘇りの試練にいくんだよ」

と言った。

洋介はポカンとして強を見つめた。

諒子がそっと教える。

「…つまり、記憶と共にする者が集まったとき、蘇生するための試練を受けられるのよ。」

洋介は怪訝な顔をしたが、強の「とにかくいくぞ!!」という声に圧倒されついていった。

 

…その時だ!!

洋介の頭の隅に一人の少女のシルエットが浮かんだのは。

自分の目の前に手を広げて立ちはだかった、1人の女のシルエットが……

 

 

 

 

「どうしたの?」

諒子は心配そうに洋介に聞いた。

「…まだ、あと1人いる…」

洋介は俯きながら答えた。

「強!!待って!!」

諒子は大股で歩く強を呼び止めた。

「…あぁん?どうした!?」

強はゆっくりと後ろを向きながら聞いた。

「洋介があと1人いるって…」

強は口をポカンと開けて、洋介に向かって歩いていき、頭を叩いた。

「洋介。まわりをよぉく見渡してみろ。11人揃ってるぜ。」

強は洋介の顔を覗き込みながら言った。

「…違う」

「ん?」

「違うんだ!!多分まだ俺の記憶が戻ってないからわからないが、俺にとって大切な人のような気がする!!」

洋介は強に向かって叫んだ。強は口に手をあて、

「…お前の大切な人は諒子じゃねぇのか?」

と言った。諒子は「ちょッ!?」と言って強の頭を叩いたが、洋介は「そういう意味じゃねぇ!!多分だが…」と叫んで走りだした。

「お、おい、待てよ!!こんな広い大地の中をたった1人の女を捜すなんざ不可能だ!!」

強は叫んだが、洋介は走り続けた。

「…ぁんのやろ…!!死にゃあなんとかなると思ったが、生前となんら変わっちゃいねぇ…」

強も洋介の後を走りだした。

 

急に洋介が止まった。

「…おい!!洋介、いく…」

洋介の肩に手を乗せた強がとっさに黙った。

目の前に少女が倒れていた…。

この時、洋介の脳には爆発が起こっていた……。

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