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Last Smile  作者: 町田竜祐
18/22

嘘つき

「山口警視を連れて参りました。」

「入りたまえ。」

会議室の扉が開き大介が入っていくと、熱いお茶が入った湯呑みが勢い良く飛ん

できて大介の額に直撃した。

「佐藤警視長、鎮めてください。」

佐藤の隣に座っていた若い男が宥める。

大介は血が吹き出しても、熱湯のあまりの熱さにも、堪えて目の前を直視した。

「何で呼ばれたか、わかってるな?」

大介はゆっくりと頷いた。「………はい」

大介は目を伏せた。佐藤が立ち大介に向かって歩いてくる。

「何で嘘などついた?」

佐藤は大介を殴り倒した。

「えぇ!?日本中の皆様になんて説明すればいいんだよ!?」

大勢の警察官が「佐藤警視長!!」と叫び、必死に宥めようとする。

大介は黙ったまま、俯いていた。

「貴様…!!黒沢洋介は死んだと言ったな。私の目の前で自爆した…と。」

「…はい。」大介は俯いたまま答えた。

「それでは今、留置場で留置しているあの男は誰なんだ!?記憶はすべてなくして

しまっているが紛れもなく黒沢洋介本人ではないか!!」

佐藤の足が大介の顎に食い込んだ。大介はそのまま倒れ一瞬意識が飛んだが、ゆ

っくりとまた立ち上がり佐藤に向かって頭を下げた。

「彼に会わせてください…!!話をさせてください!!」

佐藤は大介を睨み付け、「何を企むつもりなんだ?」と低い声で言った。

「数万人もの人を殺した大量殺人鬼を逃がした理由は何か企んでいたつもりなん

だろう!?」

佐藤の声がまた語気荒くなった。

「あぁ!!国民の皆様になんてお詫び申し上げればいいんだ!!警察官が死んだと嘘

の報告をしてまで殺人犯を逃がすとは、警察始まって以来の大事件だ!!」

佐藤は長机を蹴った。机は倒れ湯呑みの割れる音が嵐のように鳴り響く。

「彼に会わせてください…!!」

大介はなおも佐藤に頭を下げ、繰り返した。

「彼に会わせてください…!!会わせてください…!!」

 

 

 

面会を許された大介は、マジックミラー越しに見た一人の男を見て、驚いた。

洋介が生きているということをいまひとつ信じていなかった大介だったが、自分

の目の前にいるこの男は紛れもなく黒沢洋介だったのである。

部屋のドアを開け、大介は椅子に座り洋介と向かい合った。

「…洋介……お前、何で…?」

洋介は顔をゆっくりと上げ、大介をじっと見つめた。すると洋介の死んだ魚のよ

うな目が、だんだんと瞳に生気が宿り、大きくなる。

同時に洋介の脳内では爆発が起こっていた。

「……刑事…」

大介は急に立ち上がった。「お前…何で生きているんだ!?」

洋介はゆっくりと俯いた。

「…生きている…?なぜだろう…?俺は確かに自爆したはず…」

すると、洋介の内部に様々な人間のシルエットが浮かんでは消え、浮かんでは消

えた。

洋介は頭を抱え、呻いた。

「まだ、足りない…何かが足りない…」

大介は洋介のこの様子を見て、尋ねた。

「…お前、記憶を全部なくしていたらしいな…?」

「あぁ…」

答えはすぐに返ってきた。

「…しかし、俺に出会ったら…俺と関係のある記憶だけが戻ったというのか…?

洋介はゆっくりと頭を揺らし答えた。

「……あぁ」

大介は何か思い当たったよいに前を向いた。

「…それならば!!」

大介は頭を抱え俯いている洋介に囁いた。

「待ってろ…お前の記憶が取り戻せるかもしれない…!!」


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