親友
洋介たちは闇の中、必死に走った。
天井から降ってくる瓦礫や石を必死で避けながら。
「洋介!!こっちで大丈夫なんだろうな!?」
「知らねぇよ!!俺に聞くな!!」
竜の問い掛けに対し、洋介は語気強く言い放った。
「知らねぇって…オイオイ」
竜は嘲り笑いをすると、後ろを振り返った。
「茜!!大丈夫か!?」
茜は息を切らして懸命についてきている。
「うん!!大丈夫!!」
茜は竜に向かって微笑んだ。
しばらくして光が見えた。
出てみるとそこは崖だった。しかし、向こう岸に渡るための岩でできたような橋が架かっていた。
崖の下には溶岩のような真っ赤なドロドロとした得体の知れないものが流れている。
3人は走って駆け抜けようとしたが、茜が途中で転んでしまった。
「茜!!」
2人は茜のもとに駆け寄り、竜が抱き起こした。
そして、洋介に渡したその刹那…
竜と洋介の目の前で、刀の斬撃に似た衝撃が走り、竜の腕が切り裂かれ、鮮やかな血が吹き出した。
そして、ちょうど竜と洋介の間に亀裂が走り、橋が真っ二つになり、だんだんと竜が遠ざかる。
「竜!!!」
洋介は抱き抱えた茜をおろし、「手を伸ばせ!!」と言った自分にハッとした。
竜の腕は自分の元にあるのだ。洋介は床に落ちた竜の両手を見つめた。
「行け」
竜は立ち上がり、唇を薄く笑わせた。
竜の側の橋はだんだんと沈んでいく。
「竜!!」
まだ自分の名前を叫んでる洋介に向かって竜は叫んだ。
「諒子の死を忘れるんじゃねぇぞ!!」
洋介はハッとして、唇を噛み締め頷き、振り替えると走りだした。
茜が振り返り、
「竜さん!!ありがとうございます!!」
と言うと竜は優しく微笑み、「洋ちゃん!!」と叫んだ。
洋介はピタリと止まって振り向いた。
子供の頃に竜に呼ばれていた懐かしいあだ名を呼ばれて、涙が流れた。
竜は手のない腕を高々と上げて、「またな!!」と言った。
洋介も高々と上げて、「ああ!!竜ちゃん!!」と答え、茜の手を引き走りだした。
涙が自然と溢れてきた。歯を食い縛り必死にそれを堪えようとした。
竜は2人が渡り終えるのを見送ると、その場に座り込んだ。
橋はゆっくりと沈んでいく…。
2人は階段を駆け上がり閉じられている扉を開くと、見覚えのある場所に出た。
最初に来た時と同じように、右側の壁が光り輝いている。
「行こう!!」
洋介は茜の手を握り締め、光の中へと駆け抜けていった。