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Last Smile  作者: 町田竜祐
14/22

神殿内部

洋介は跪いたまま動くことができなかった。

竜はしばらく何も声をかけなかったが、しばらくして「行くぞ」と言った。

洋介はまったく動かなかった。涙が止まらなかった。諒子との今までの思い出がつぎつぎに浮かんできた。

そんな洋介を竜が胸ぐらをつかんで無理矢理立たせて叱咤した。

「何のために諒子が犠牲になったかわかってんのか!?」

洋介は竜を涙目で見つめた。

「お前は諒子のためにも蘇らなきゃならねぇんだよ!!」

竜の言葉を聞き、洋介は目を閉じ、そして服の袖で涙を拭き、「…行くぞ!!」と言って神殿へと乗り込んでいった。

 

 

神殿の中は薄暗かった。

だが、来たときに比べると何かが違う。

邪悪な闇に包み込まれているような雰囲気の中で、3人は音を殺して進んでいった。

 

しばらくすると見覚えのある部屋に出た。

すべてはここで12人で始まった…が、今ここにいるのは3人だけである。

そう思いながら洋介はゆっくりと前に歩いていった。

その時、何か音が聞こえだした。

「何だ?」洋介はそう思うとハッとして後ろを振り返った。

2人がいなかった。

「な!?」

洋介は戻ろうとして1歩踏み出したその時、床に大きな穴が空き、下へと落ちていった。

 

 

 

 

洋介はゆっくりと目覚めた。

どれくらいの時間気絶していたのだろう…。

そこは不気味な闇で、ところどころ青白い光が走っている。

「竜ぅぅ!!茜ぇぇ!!」

洋介は叫んだが、それは闇の彼方に不気味にこだまし、消えていった。

「チッ…」

洋介は舌打ち一つするとゆっくりと歩きだした。

 

洋介は壁に手をかけ、ゆっくりと前進した。

その壁は生暖かく、柔らかく、まるで生きているかのようで、膨らんでいる部分や平らな部分など様々な形だった。

「なんだよ、この壁は…」

洋介が闇の中壁を覗こうとしても何も見えず、洋介は先に落ちたであろう2人の名前を叫ぶしかなかった。

ふいに洋介はバランスを崩した。壁に穴が開いていて、その中に手を入れてしまったのだった。しかしその穴には上下にごつごつとした堅いものがあり、奥に伸ばそうとしたが届かなかった。

「なんなんだよ…。」

洋介はそれでも手は離すまいとして壁伝いに歩いた。

 

不気味な青白いライトが怪しく動く。

闇を明るく照らしだすものではないが、少し明かりがあることは洋介にとってはありがたかった。

その青白いライトが洋介のすぐ前を通過して、反対方向の壁を照らす。

 

青白いライトが反対側の壁を照らすのを見た時、洋介はゾッとした。

洋介は今自分が何に触れているのかわかった。

 

………人間の…顔…?

 

洋介は先程の穴を思い出した。

上下についた堅いものが歯だとしたら…

そして今までの手首に残る感触を思い出した。

でっぱっていたのが鼻…

平らな部分がでこ…

指が吸い込まれそうになったのが閉じた唇…

洋介は手を壁から離した。

洋介は震えた。青白い光が照らす壁はすべて人の顔で埋め尽くされていた。

「ぅわあぁぁあぁぁ!!!!」

洋介は走った。走って走って走り続けた。

左右も見ず、目を瞑り、ただひたすら走り続けた。

 

 

そうして着いた場所…。

 

床に無造作に投げ捨てられたバズーカ砲に似た銃器。

光が反射し壁を映す。

大きな目が一つ、壁に不気味に埋め込まれている、ゾッとするような部屋だった……。

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