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Last Smile  作者: 町田竜祐
13/22

 

 

 

「…聞こえたか?」

3人はさっきの謙治の発言に動揺した。

「誰か1人の命を捧げなきゃ、蘇れねぇのか…?」

洋介はハッとして諒子を見つめた。

諒子は目の前にそびえ立つ神殿を見つめていたが、やがてゆっくりと立ち上がり、神殿のほうへと歩きだした。

「…まさか、あいつ!!」

洋介は「諒子!!」と叫んだ。「何する気だ!?」

「何する気?って…」

諒子は洋介を振り返った。目には涙を溜め、口元は薄く微笑んでいた。

「こうしなきゃ、あなたたちそこから出られないのよ」

諒子の頬を涙が伝った。

「…ねぇ、洋介…。私、洋介の幸せのために生きていきたいの…」

優しくささやくようなその口調は、洋介をハッとさせた。

「洋介…蘇ったら…」

諒子の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。洋介は叫んだ。

「バカ野郎!!お前、死ぬんだぞ!!」

洋介は見えない壁に手をついた。

「今すぐそっちへ行ってやる!!待ってろ!!」

洋介は壁を叩いた。衝撃など何の痛みもなかった。

諒子はそんな洋介を見て、微笑んだ。涙がポタポタと溢れだした。

「洋介…」

洋介は俯いていた顔を上げた。涙でくしゃくしゃになっていた。

「ここに2人で築いた家庭があります…」

諒子は涙を流しながら、ゆっくりと後進する。

「私は今、玄関で靴を履いて、遠い旅に出ようとしています…」

諒子の足がピタリと止まる。境界だった。

「それ以上行くな!!諒子ぉ!!」

洋介は涙声で叫んだ。諒子はニコリと笑い、

「今から行く場所はあなたには絶対来てもらいたくないの…」

涙が諒子の頬を二筋流れた。

「今、そっちへ行く!!待ってろ!!」

洋介は壁を何度も何度も殴った、叩いた…。そんな洋介の姿を見て諒子の瞳から涙が大量に溢れだした。

「…洋介…」

諒子は涙で消え入りそうな声で言った。

「…ずっと…一緒に…いたかった…!!」

洋介は顔を壁に押しつけた。切なくて歯痒くて、涙が幾筋も流れた。

「…私は…玄関のドアを開け…」

諒子は左足をゆっくりと境界の中に入れた。ジジッという音がして消えてなくなる。

「あぁ…あぁ……」

洋介は歯を食い縛り、涙でぼやけるが、消えていく諒子を見つめた。

「…行ってきます…!!」

そう言って優しく微笑んだ諒子の顔が境界の中に消えていき、すぐに大爆発が起こった。

電磁波は消え、そのまま洋介は雪崩落ちた。

洋介は天を仰ぎ叫んだ。

「諒子ぉぉぉ!!!」

悲痛の叫びは大地に悲しくこだました……。

 

         【残り3人】

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