狂気
謙治は歩き続けた。
足はふらつき、目は焦点定まらず、口からはよだれをだらだらと垂らしながら…
急に目の前に何かを見つけた。
謙治は何やらわけのわからないことを叫びながら、それに向かって走りだした。
1人乗りの機械だった。
丸い球体を4本の足が支えている。外面は鋼よりも堅い金属で覆われ、球体の中の操縦室にはたくさんのボタンがあった。
謙治はシートに座り、1つスイッチを押してみた。
すると、ドンッ!!と大きな音がしたかと思うと、目の前の地面に大きな穴を開けた。
ミサイルのようなものが発射されたのだ。
そう、これは殺戮兵器だった。
謙治はその場で座ったまま飛び跳ねた。
子供のように笑いはしゃぐと、今度は別のボタンを押してみる。
無数の銃弾が乱れ出る。マシンガンだった。
そしてまた謙治は飛び跳ねた。
「……ヒヒッ!!」
謙治はさまざまなボタンを押し、そのつどシートの上で飛び跳ねた。
まるで子供がつぎつぎと自分が欲しかったものが手に入った時に無邪気に喜ぶように…。
謙治はまたあるボタンを押すと、今度は宙に浮き上がった。
謙治の目は怪しい光を放った。
謙治は元きた道を戻り、途中にある和義と絵里の死体に空中から爆弾を数個落とした。
地面に落ちて爆発し、煙が晴れると2人の死体はどこにもなかった。
「ヒャハァァァ!!」
謙治は手を叩き喜んだ。
謙治は進路をさらに元きた方向へと向けた。
その時、謙治の頭にある神殿が浮かび、謙治の脳を刺激した。
謙治は進行方向の向きを変え、そのまま飛んでいった。
洋介たちは目覚め、ゆっくりと荷物の整理をし始めた。
強が何やら火薬のようなものをもってるのに気が付き、洋介は「何だそれ?」と尋ねた。
「炸裂弾だ。瓦礫の山で見つけたんだ。しけちゃいねぇし、まだ使える。」
強は強く炸裂弾を握り締め、洋介に振り返り笑ってみせた。
洞穴から出た4人は「あっ!!」と叫んだ。
目の前に丸い球体を足がそれを支えている1台の機械が立っていた。
その中から懐かしい声がした。
「よぉ、みんな!!」
謙治だった。謙治はゆっくりと操縦席より出てきて、ドアを閉め、機械にもたれかかっていった。
「すまねぇな…。和義も絵里も死んだ。」
洋介たちは呆然とした。
「だがみんな、蘇りの目的の最終地点ならわかったよ。最初の神殿だ。」
洋介たちは互いに顔をのぞき合って、それから洋介は謙治に「どういうことだ?」と尋ねた。
謙治の口元がゆっくりと緩み、笑った。
「とにかく早く来てくれ!!俺は先にいく。」
そういうと足早に機械の中へと乗り込み、宙に浮き、神殿の方向へと飛んでいった。
「とにかく…俺らも行こう!!」
洋介は皆に指図すると、神殿の方向に進路を変え、ゆっくりと歩き出した。
しばらくして、洋介たちも神殿前に到着した。
謙治はもう何時間も待っていたかのように機械に乗って立っていた。
「謙治!!来たぞ!!いったいどういうことなんだ!!?」
洋介は大声で叫び尋ねた。
だが、謙治はもうすでに普段の謙治ではなかった。
目は焦点定まらず、口からはよだれを垂らしながら意味のわからないことを叫んでる発狂した謙治だった。
洋介の問い掛けに対し返ってきたもの…。
それは問いの答えではなく、マシンガンの弾の嵐だった…。