1、出生の秘密
「頑張って下さい、あと少しです」
「んっ」
キャロル・ネイサンは出産のため、人払いをしていた。
「生まれました! あら!? 双子……」
産婆は渋い顔をした。
「ええ!?」
キャロルは悲鳴に近い声を上げた。
この地方では、双子の出産は不吉なものとされていた。
「どちらかのお子様を無かったことに致しませんと」
「そんな!?」
「男の子を残しましょう。女の子は、残念ですが……」
「ううっ」
キャロルは涙を流した。
その頃、隣の家ではアンジェラ・オルティスも出産を終えていた。しかし、生まれた子どもは産声を上げることはなかった。
「こんなことって、信じられない」
アンジェラは涙を流して、動かない赤ちゃんを抱きしめた。
アンジェラはまだ痛む体を押して、赤ちゃんを抱きしめて、外へ出た。
そのとき、キャロルの産婆と会った。
「可愛らしい赤ちゃん、良く泣いて元気なこと」
「この赤ちゃんは、双子の片割れなんです。いまから捨てに行かなくてはいけません」
「なんてことを!? それなら、私の赤ちゃんを連れて行って代わりにその子を下さいませんか?」
産婆は黙って頷いた。生まれたばかりの命を奪うのは忍びなかったからだ。
「いいでしょう、ただし、誰にもこのことを言ってはいけませんよ」
「ええ!! 私の赤ちゃんのことは十分弔ってあげてくださいませ」
アンジェラは、動かない赤ちゃんに最初で最後のキスをして産婆に渡した。
産婆は、元気の良い女の赤ちゃんを代わりに渡した。
産婆はキャロルの元に戻った。
「赤ちゃんは亡くなってしまいました」
「えっ!? まあ、この子からだが冷え切ってしまって……」
キャロルは産婆の言葉を信じ、お葬式の準備をした。
そして、18年の月日が流れた。