目覚めの前
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それからもアルトとクリスは救急センターへ通った。
ほんの少しの時間でも、アルトが少女に会いたがったのである。クリス自身はまだ保護者になる事を迷ってはいたが、少しでも少女の情報が欲しかった。
見舞いに行く時間帯は、クリスの研究時間を考えると午前中の早い時間が適当で、朝早くの時間帯に救急センターを訪れる二人の姿が見られるようになった。
クリスにとってこの事は意に介せない行動であったが、秘密を知った今、グラセルとヘイガンなど他の時代からやって来た者の事を考えると、保護者になる事を断るのが非道な気もして来ていた。
そして少女が現れて五日目、その日も二人は連れ立って救急センターを訪れた。いつものように五階へ上がり、カウンターで見舞客のカードを貰い少女の部屋へ行く。少女の部屋の壁にはアルトが描いた少女の絵と動物や果物や花を描いた絵が貼られていた。
「今日の絵はね。パンだよ。レイチェルのお店のパンの中で僕が美味しいと思った物を描いたんだ。ねぇ天使。天使はどれが食べたい?」
アルトは眠る少女に自分の絵を見せて話しかける。いつの間にかアルトはそうするようになった。それと同時に訪れた日数分の絵が増えて行く。
「僕の好きなのは、ソーセージが乗ったのと、このチーズパン。これはね、レイチェルが作っているんだよ。レイチェルは料理が上手なパン屋さんなんだ。たまに僕の家に来てくれるんだよ」
アルトの言葉は少女には届いてはいない。でもアルトにとって、それはどうでも良い事だった。彼は天使にいろいろな事を話せるのが嬉しいのだ。
クリスはそんなアルトの様子を仕方ないとも思っていた。自分を含め、アルトの周りには大人しかいない。少々歳が上でも、アルトは自分に歳が近い人と接するのが嬉しいのだ。それに気が付いた時、クリスは少女の保護者になる事も自然と受け入れられるのではないかと思うようになっていた。細かい事は少女が目を覚ませた時に話し合いながら進めても良いだろう。今はそう思っている。
「博士……ねぇ博士……」
クリスがそんな事を思っていると、少女を見ながらアルトが声を掛けた。
「何?」
「……今、天使の目が動いたよ……」
クリスはハッとして急いで少女の顔を覗き込んだ。確かに目蓋の内側の瞳が動いている。これは目覚めるかもしれない。
「目を瞑ったままだけど、目が動いてるよね?」
「……そうだね……先生を呼ぼう」
クリスはナースステーションに繋がるコールボタンを押した。暫くすると看護師の男性が一人足早に部屋を訪れた。
「どうしましたか?」
「今、少女の目が動いたんです」
クリスが説明をすると、看護師は少女の状態を見た。だが彼が見ている時には少女は目を動かさなくなっていた。
「覚醒が近いかも知れないですね。モーガン先生に来てもらいましょう」
看護師はそう言うと部屋を出て行った。
「天使、目が覚めるかも知れないの?」
「うん、多分ね……」
クリスの心臓が少し速く活動を始めた。保護者になる事はよしとして、目が覚めた少女はどう思うのだろう。今は何もわからない。それが緊張感を産んだ。
モーガン医師はすぐにやって来た。クリスとアルトは少女の傍から離れ、部屋から出ると廊下で待つ事にした。少し待つとモーガン医師が扉を開いた。
「入っても良いですよ」
二人が入ると、モーガン医師は説明を始めた。
「もうじき、目が覚めると思うのですが……このまま経過をみましょう。でも、目が動いた事からも目覚めは近いと思います」
「また寝ちゃったのか……」
アルトは至極残念そうにそう呟いたが、目覚めが近いと言う事で少しホッとしたような表情をしていた。
「おや? 今日の絵はパンなのかな?」
モーガン医師がそんなアルトの持つ絵に気が付いた。
「うんそう。今日はレイチェルのパン屋さんのパンなの」
「うまく描けてるじゃ無いか。僕はこのパンがいいな。これは何のパン?」
「それはチーズのパンだよ。レイチェルが作ってるの。美味しいんだ」
「そうか、レイチェルのパン屋さんはどこにあるの?」
「『ジョナサンのパン』って言うパン屋さんで、コモン通りにあるよ」
「へぇ、知らなかったな……今度、僕も買いに行ってこよう」
モーガン医師はそう言うと、笑顔のままアルトの頭を撫でた。そしてクリスを見るとニコッと笑みを深めた。クリスはそれに苦笑いで返しながら、目覚めが近い少女を見た。
部屋を何とかしなければいけない。一つ倉庫がわりにしている部屋がある。少し狭いが、あの部屋を片付ければ少女の部屋に出来るかも知れない。クリスは大きな溜息をついた。その溜息はこれから起こる少女を含めた自分たちの生活の不安から来る物なのか、少女が目覚めると聞いてホッとした物なのか自分でもわからなかった。だが、少なくともアルトが笑っているのが救いのような気がした。
その日、家に戻るとクリスは倉庫の片付けをやり始めた。何やらかんやら要らない物が全てここに収納されている。
「アルト、僕は今からこの部屋の片付けをするから、少し居間の方で絵本でも読んでてくれるかな? リサイクルに出す物と捨てる物を分別するんだ」
クリスが言うと、アルトは素直に居間の方で本を読み始めた。
倉庫がわりの部屋の中でより分ける作業をしていると、アルトが赤ん坊の時に着ていた肌着や洋服が箱の中に入れたまま出て来た。それはそのままリサイクルへ持って行けそうだ。廊下の奥にその箱を置き戻ってくるとアルトが立っていた。
「博士、僕も手伝う」
この部屋を片付ける意味を察したのかもしれない。アルトも一生懸命にガラクタを外に出した。たまに遊びながらではあるが、それでも一人で絵本を読んでいるより嬉しそうだった。
部屋の物がドンドン運び出され、少しずつスペースが出来綺麗になっていくと、クリスもアルトも充実した気分になった。
その作業は丸一日掛かったが、綺麗になった部屋は思った以上に過ごしやすそうだった。窓は大きく開けられ、その窓枠にケヤキの木が大きく見えている。北向きなのが難点だが、綺麗な色のカーテンを付ければ何とかなるだろう。
「この部屋、結構大きかったんだな……ずっと物置にしていたから気付かなかった……」
クリスが腰に手をやり呟きながらも満足そうに見渡すと、アルトも真似て腰に手をやり満足そうに言った。
「後はベッドと机だね」
「うん、机はここから出てきた物を掃除して、また入れれば良いけど……問題はベッドだよなぁ……」
「僕のをあげようか?」
「あれはアルトのだろう? アルトが使わなきゃ……あの子のは買うしかないね」
クリスはアルトに優しく言った。
次の日、二人は病院帰りに家具屋へ寄り、少女用のベッドを購入した。次の日に搬入することに決め、小物棚とハンガーラックも同時に購入。簡素だが少女の部屋は整えられていった。
次にインテリアや寝具のお店に行った。そこでは布団やシーツの寝具を一式とカーテンを購入した。カーテンは綺麗な薄い水色の生地にいくつかの色鮮やかな可愛い花が配われているのを選んだ。下の方から立ち上がるように咲いている花の雰囲気は花壇を思わせる。
「天使はこういうの好きかな?……」
「うん、気に入ってくれると良いね」
いつしか二人はウキウキとしながら部屋を整える準備をしていた。新しい事が始まる。それは緊張と共に心が弾むような気持ちを生んだ。その気持ちのまま『ジョナさんのパン』に寄り、パンを購入する。すると奥から声もかけていないのにレイチェルが出て来た。そしてクリスを睨みつける。
「……なんか怒ってる?」
「まぁね、人の忠告を無視してあの子を引き取るんですって?」
「あ〜……」
クリスは少女の保護者になる事をレイチェルに報告するのを忘れていた。と言うより、どう話せば良いのかわからず、避けていたと言うのが正解なのだが……。案の定、レイチェルの反応はクリスが考えていた通りのものだった。
「人に相談しておいて、その後の報告もせず、勝手に保護者になる事を決めて、ヴェーダから聞いた私の立場は何なの? それで何? その荷物」
「カーテンや寝具や色々だよ……怒るなよレイチェル。必要だと思ったんだ。アルトに取ってもきっと良い影響になると……」
「随分と言う事が違うじゃない? 数日前は悪い影響って言ってなかった?」
レイチェルの言い分は最もだった。自分の方が真相を知って心が動いたのだ。でも、その真相をレイチェルには言えない。十三世紀の騎士や第一次世界大戦時期の人が今この街に居るなど言える訳が無い。そうやって守る自分のような人が居て、この街に来た人達は馴染んで行くのだ。
「……ごめん、本当にあの後、色々と考えたんだ。役所の人の話も聞いて……それで決めた。レイチェルに報告が遅れたのは僕のせいだし、謝るよ。でも、これは僕がやらなければならないと思っている」
「ふうん……」
レイチェルはまだ何か言いたそうではあるが、不機嫌そうなまま、クリスの持つ紙袋の中を覗き込んだ。一番上にあの可愛いカーテンがある。
「……可愛いじゃない。これ寝具?」
「あぁ、いやカーテン」
「ふうん……私の部屋にも合うみたい……」
レイチェルが意地悪くそう言うと、慌てたのはクリスではなくアルトだった。
「駄目! レイチェル! それは天使のために買ったの。僕、一生懸命選んだんだから!」
それはそれは慌てて言うと、アルトは急いでクリスからその紙袋を取り、守るように自分の背後に回した。そこでクリスとレイチェルは顔を見合わせ笑い出した。
「何で笑うの?!」
「ごめんごめん、クリスに意地悪したつもりだったの。取らないわよアルト。あなたの天使の為に部屋に掛けてあげて」
一頻り笑った後で店の奥さんが二人に聞いて来た。
「私にはさっぱり見えていないんだけど、何の話なんだい?」
「あぁ……いや……」
口籠るクリスにレイチェルが助け舟を出した。
「この人ね。知り合いの娘さんまで面倒みる事にしたのよ。馬鹿でしょう? 結婚もしてないのに二人の子持ちよ」
あはははとレイチェルは笑った。その言い分はクリスがヴェーダに話したものだ。奥さんも釣られて笑い、クリスは苦笑する。
「本当に物好きだねぇ、クリス。そんな苦労は結婚してからで良いのに。あぁ、アルトの事は別だよ。アルトはクリスに必要なんだから」
奥さんはアルトにニッコリ笑ってそう言いながら、チーズパンをおまけに一つ包んだ。クリスはレイチェルを見た。レイチェルは奥さんに気付かれないように首を振る。余計な事は言わなくて良いという合図だろう。クリスは少し頷いた。
「あぁそうだった。クリス、明日エリックが帰ってくるわ」
不意にレイチェルが言った。
「え? 何で?」
「わからないけど、夏休みは帰らないって言ってたのにね。クリスの顔でも見たくなったんじゃないの? あぁ間違えた、アルトだわね、アルトの顔を見たいのよ。人の親切を仇で返すような人の顔なんて見たくもないでしょうから……」
「レイチェル……許してよ。それにエリックから僕には連絡なかったぞ……」
「何言ってるの、電話を何回しても繋がらないって嘆いてたわよ。友達を蔑ろにするって」
「あ〜……午前中なら、ここの所留守にしていたから……」
「自覚があるなら素直に認めなさい。取り敢えず伝えたわよ。じゃあね、アルトまた遊びに行くわね」
「うん」
レイチェルは工房の中に戻って行った。
エリックが戻って来る。それはクリスにとっても嬉しい事だった。今現在、大学生のエリックは先に卒業したクリスと同じ大学へ通う事になった。でも、大学に残るつもりが卒業してしまったクリスと会う時間は少なく、現在は離れてしまったのだ。
今年卒業のこの夏は帰らないと言っていたのに帰って来るという。卒業前の大事な時に帰ってくるとは、何かに詰まっているのかもしれない。思わず苦笑いしてしまったクリスにアルトが聞いた。
「エリックが来るの?」
「うん、そうらしい」
「そうか、じゃあ手伝って貰えば良いね」
「何を?」
「天使のベッド運びだよ。明日取りに行くんでしょう?」
「あぁ……そうか、そうだね」
相変わらずアルトの頭の中は天使の事でいっぱいだった。苦笑しながらもクリスも思った。確かに明日手伝ってもらえば、エリックは良い働き手になる。
二人は丘の上の家に戻った。
帰って直ぐにカーテンを掛けてみると、北側の部屋は一気に少女らしい部屋になった。小物棚を組み立てて引き出しを付けて隅の方に置き、掃除し終えた机と椅子を壁際に置いた。そして明日ハンガーラックとベッドが来れば少女の為の部屋が、取り敢えず完成となる。
クリスとアルトは満足そうに部屋を見渡し、お互いの手をパチンと合わせた。
「博士! 良いよね!」
「うん、良いね!」
ここまで来ると、少女の退院が待ち遠しくなって来る。この気持ちの変化は一体何なのか。クリスには分からないがアルトを見れば最近は笑ってばかりだ。クリス自身もそれが嬉しい。
午後は少し研究室で研究を進めよう。そう思っていたクリスは、アルトに自分の読む絵本とスケッチブック、それからクレヨンをバッグに入れるように言った。そして自分も準備を始めた所で電話が鳴った。急いで電話の受話器を取り、耳に当てると救急センターからだった。
「クリストファー・ランベールさんですか?」
「はいそうです」
「こちらは救急センターです。あの……誠に申し訳ないのですが、少女の退院をさせたいので後日、手続きをお願いします。今はその時間がないので……すぐに少女の受け入れをお願いしたいのですが……」
「え? 彼女は目が覚めたのですか?」
「いいえ、まだです。ただ、つい先程、リンデルツの湾内で旅客船の追突事故が起こって、怪我人が多数出てしまいました。ベッドを空けなくてはならず、女の子は覚醒を待つだけなので早めではあるのですが退院をする事になりました。近くの診療所から毎日医師が来ますので、対処をお願いできますか?」
「そんな……」
寝耳に水である。目の覚めていないあの少女を引き取って欲しいと言うのだから……。
「こちらも対処したいのですが、大きな事故になってしまったようで緊急性を要します。救急隊は殆ど港へ向かっているので、役所の人間が数人と看護師が一人、少女をそちらへ搬送します。詳しい事は役所の方にお話ししますので、それを聞いてください。後は診療所の医師にお願いします」
そしてこちらの返事を待たずに電話は切れた。
「大変だ……アルト! 研究室に行くのは辞めだ! アルトの部屋を、暫くの間、貸してくれるかな? あの少女が退院して来る」
「え? 目が覚めたの?」
「まだらしいけど、事故があったんだって、それで入院のための沢山のベッドが必要になったらしいんだ……今日はアルトの部屋を使うしか無いんだけど、借りてもいい?」
「うん! いいよ! えっと、僕はどうすれば良いの? 何をしたら良いの?」
「部屋を借りるのは暫くの間だけだから……動けるようになったら、部屋を代わってもらおう」
クリスは急いでアルトの部屋に入るとアルトの布団一式を剥いだ。そして自分の部屋のベッドの上に投げ入れる。それから客用のベッドシーツを取り出し急いで整えた。枕にカバーを付け、布団にもカバーを付ける。布団は足元に畳んで寄せ、柔らかなタオルケットも用意した。どれもこれもタンスにしまっていたものだが……もう一度洗濯をするべきだったかも知れない。シーツは肌に馴染むだろうか?
一応、取り敢えずの準備は済ませ、今度は搬送し易いようにテーブルを寄せる。アルトも一生懸命に手伝おうとテーブルの椅子を引きずって行った。
「天使がこんなに早く家に来るなんて、ビックリした」
ビックリだと言いながらアルトは嬉しそうだ。クリスにはその余裕はないが、形だけは整えられた事に安堵した。ここまでしていればいつ来ても大丈夫だろう。
(後は彼女の搬入後、近くの診療所の医師に来てもらって、アドバイスを貰って……食べ物はまだ食べられないから、点滴はどのくらいの頻度で変えるのかを聞かなくてはならないな。それから……。あぁ、もう一度掃除をしていた方が良いか、アルトの部屋だけでもしておこう)
色々と考え、クリスは掃除道具を入れているロッカーから掃除機を引っ張り出し、アルトの部屋の掃除を始めた。アルトは自分の絵本棚を片付けている。
とうとうあの少女が家に来るのだ。二人はそれから黙々と片付けを終わらせた。
そして、約二時間後、少女が運ばれて来た。相変わらず瞼は閉じているが今朝救急センターへ会いに行った時と変わりはなく見えた。
「ランベールさん、こんな事になり申し訳ない。あなたはまだ正式に承諾した訳では無いのに……」
警察官のグラセルが仲間と共に少女を搬送して来た。済まなそうに見えるグラセルの顔には、少し疲れが見えていた。恐らく、事故が起きてから走り回っているのだろう。
「彼女はどちらの部屋へ寝かせたら良いでしょうか?」
「奥の扉を開けている部屋へお願いします」
彼等はアルトの部屋に入ると少女をアルトのベッドに移し、担架を畳み外へ持って行った。グラセルと看護師はその場に少し留まった。
「すぐに、近くの診療所の医師が来ます。この点滴は水分補給の為です。今の所少なくとも一日三回はする必要があるそうです。詳しくは医師に尋ねて下さい。こちらの用紙にいろいろな注意点が書かれていますので、読んでいてください」
看護師はそう言って、もう一度点滴の状態を確認すると出て行った。その後グラセルが大きく息を吐いた。
「今日も少女の目が動いたそうなので、目覚めは近いかもしれません。もし、少女が目が覚めた時、パニックを起こすようならプロテスタントの修道院にいるパメラという女性を訪ねてください。ハボニア山の登山道入り口にある教会です。彼女はこの事実を分かっている者です。多くの者を静かに受け入れて来ました。どうにもならない場合には手助けしてもらうと良い。では、私はまだ仕事があるので行きますが、何かあれば連絡を下さい」
さり気ない事ではあったがグラセルのその情報は有難かった。少女の事を一人で抱えなくても良いという事実は心に幾許かの余裕を与える。
クリスは丁寧にお礼を言い、グラセルを送り出した。
それからグラセルと入れ違うように診療所の医師がやって来た。彼は少女の様子を確認し点滴を変え、クリスに向き合った。
「直に目が覚めるかもしれないとの事なので、替えの点滴は、今変えた物以外にもう一つしか持っては来ていませんが……日数的には点滴だけに頼るのはギリギリの状態なので……もし、少しでも可笑しいと感じたら連絡をください。診療所には二人の医師がいます。どちらかが来ますから」
「わかりました。お願いします」
クリスは心配と責任で緊張しながらも、診療所が体制を整えてくれているのをありがたく感じた。
これから少女はここで生きて行くのだ。それは今後のクリスとアルトの未来を大きく変えていく事に、この時クリスは全く気付いていなかった。




