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7.シスコンを拗らせた俺、妹を甘やかす

すいません、最近忙しくて投稿が遅れました……。

また、土日のどちらかに一話投稿するようになると思うので、気が向いたら見てください。



ジャイアントベアーとの戦闘後、素知らぬ顔で負傷を負った(ように見える)ファーンと合流して屋敷へと帰った。

ファーンは無表情を装ってはいたものの、自身の職務怠慢がバレることを恐れていたためか、若干手先が震えていた。

フルフルと震えているファーンの姿に違和感を感じたベルウェイトが、「どうかしたのか?」と聞いてきたので、俺は満面の笑みで、「ジャイアントベアーに会いました!」と報告しておいた。

その時の俺の笑みをどう受け取ったのかは知らないが、ファーンの震えは一層激しくなった。


「待て、待て!フィル!お主、体は大丈夫なのか!?」、とベルウェイト。

さらに、出迎えてくれていた使用人たちも大騒ぎ。


「フィル様がお怪我を!」「緊急事態発生!緊急事態発生!」「おい、誰か医者を呼べ!」「い、今、呼んでます!」「エリクサーだ!エリクサーを使えば……」


わーわーと騒ぎ立てる使用人たちを前にして、さすがに悪戯が過ぎたかな、と思った俺は、ファーンがジャイアントベアーを倒してくれたので自分は無傷だ、と言っておいた。

俺がそう報告した途端、ベルウェイトの顔は心配から安堵へと変わり、ファーンに何度もお礼を言っていた。

周りの使用人たちもベルウェイトと一緒になって「よくやった!」やら「ありがとう!」といった言葉が彼方此方から飛んできた。

ファーンが英雄のように称えられているのにも関わらず、皆の視線はフィルというちっぽけな少年に向いていた。

これだけで憑依前の彼がどれだけ周りの人々に好かれていたのかが、わかる瞬間だった。

この後、C級危険種、ジャイアントベアーから俺を守りきった功績が認められ、ファーンはここの館の使用人のリーダーを務めることになった。

……ああ、そういえば、俺がジャイアントベアーとの戦闘で負った傷については、スライムの水属性魔法と、ファーンの魔法(属性不明)によって治療されていたため、何の問題もなかった。

正直な話、折れかけていた腕がくっつく姿は見ていて少し不気味だった。





ジャイアントベアーとの死闘から半年が経過していた。

当初は憑依したてだったということもあり、異世界に戸惑っていることも多かった俺だが、さすがに半年以上も暮らしていると馴れた。

もう、魔法を見ても全然驚かないし、魔物を見ても不気味とも思わないし……。

領内でたまに見かける全裸おじさんに出くわしても、ちゃんとシャリルちゃんの視界を塞げるようになった。

怖いものが何もない、というほどでもないとは思うが、それでも中々に実力をつけてきたと思う……主にプライマリーが。

プライマリーとは俺が助けた緑色のスライムのことである。

当初、貸借魔法の代価として俺はこのスライムと家族にならなければいけなくなっていた。

しかし、俺は人間でスライムは魔物だ。

当然ながら本当の家族になんてなれやしない。

っていうか、スライムに至っては人型ですらないしな……。

だから、俺は今回の貸借魔法は成立しないのではないか?と常々疑問に思っていたのだが……。

ジャイアントベアーの件で大騒ぎした翌日、俺とスライムの間には何らかの魔力的なパスが通っていた。

これがどうやってできたのか、またどういう機能があるのかは全て明らかにはなっていないが、スライムが要求していた“俺と家族になる”という代価は、この魔力的なパスによってなされたことになったようだった。

そして、ここからが本題なのだが、魔力的なパスが通ったおかげで、俺は何となくだがスライムの意思を組むことができるようになっていた。

スライムの意思が組めるようになったところで、俺はスライムにあることを問いかけられた。

スライム曰く、“家族なのに名前を持っていないのはどうなのか”、と。

まさにその通りだった。

俺はスライムと家族になるとか言っておきながら、結局のところ、スライムのことは使い魔程度にしか扱っていなかったのだ。

俺はそのことを猛省し、スライムに名前をつけた。

それが、プライマリー・S・アークウォイトである。

ちなみに、プライマリーという名前の意味は、“最初の”眷属という単純なものだったりするのだが……。

まぁ、英語とか日本語とか理解できるのは俺だけだし、何の問題もないか。

強くなってきたプライマリーのおかげで、何かと油断ならないファーンの護衛(という名の監視)もなくなり、大分俺はフリーになってきた。


「というわけで、プライマリーのレベル上げに行ってくるから……」


俺は日課となっているプライマリーのレベル上げに行くことをシャリルちゃんに伝える。

今日も同じようにシャリルちゃんが出迎えるだろう、と思っていた矢先、シャリルちゃんは大きな目を見開いて言う。


「フィルにぃがあそんでくれないのは、フィルにぃがよわいせいなの?だったら、きにしないで!シャリルがつよくなってからフィルにぃ、まもるから!だから、いっしょにあそぼ!」

「……へ?」


予想していた言葉とは違う言葉に、俺は一瞬惚けてしまう。

俺が惚けている間にもシャリルちゃんは懸命に説明を続ける。


「シャリルね!ロスカーからきいたの!フィルにぃがあんまりつよくないこと!それでペットのマリーをつよくしてじぶんをまもろうとしていること!だから、さいきんあそべないんだ、って!ロスカーからきいたの!それでね、どうしたらフィルにぃががんばらなくていいのか、かんがえたの。そしたらね!ロスカーから「フィルさまをまもってくれませんか」、って!だから、シャリルがつよくなってまもるからーーー」


言葉の端々にロスカーが、ロスカーが……とシャリルちゃんが言ってるので、どうやらこの状況はロスカーがつくりだしたものなのだろう。

ちっ……余計なことを。

折角ファーンのマークが外れて悠々自適な生活を送っていたというのに……。

シャリルちゃんに付き纏わられたら、それはそれで面倒くさい話になる。

そう思った俺は、随分と懸命に説明してくれているシャリルちゃんの言葉を遮るように告げる。


「だからね!シャリルーーー」

「ーーーそうか、そうか!うんうん、シャリルちゃんの気持ちは十分伝わったよ」

「えっ!?そうなの!じゃあ、へやにもどっていっしょにあそぼ!」

「そうだね〜……。フィル兄さんね、結論から言うと無理なんだよね〜」

「けつろん……?」


クリクリとした大きな目をしたシャリルちゃんが首を傾げる。

多分、結論という言葉がわからないのだろう。

俺も普段ならある程度の語彙説明をしたりするんだが、何かと今はそんなことに時間を割く余裕がなかった。

シャリルちゃんの疑問を無視すると、そのまま俺は話を続ける。


「……とりあえず、へやでシャリルちゃんと一緒に遊ぶのはダメってこと。わかった?」

「え……なんで!?」

「ダメだからダメなの!」

「なんでなんで!?」

「……」


やはり子供とは一筋縄にはいかないもので、自分が納得するまでは引き下がることを中々しない。

こういう頑固な娘には折衷案でも出すしかないだろう。


「はいはい、じゃあシャリルちゃんが強くなったら一緒にいてあげるから、ね?今日のところはとりあえずマリー(プライマリーの愛称)のレベル上げに行ってくるから。わかった?」

「う〜……」


俺は相当譲歩したというのに、うーうー唸って中々俺の服を離さないシャリルちゃん。

……もう一押し必要か?


「……じゃあ、わかった!昼間は一緒に居られないけど……。その代わり夜は一緒に寝てあげるから!ね?それならいいだろ?」

「……わかった。フィルにぃ、よるはずっといっしょだよ?」

「あ、ああ……」


なんだかシャリルちゃんに“ずっといっしょ”と言われた瞬間に背筋がぞくっと、したような……。

まぁ、良いか。

とりあえずこれでシャリルちゃんの拘束から逃れられるんだし……それにこの娘も思春期になったら、俺と一緒に居ようとは思わないだろう。

俺はマリーのレベル上げのため、護衛の使用人さんと共に森へと急いだ。






「む〜……」

「どうかされましたか?シャリル様」

「フィルにぃが……」


けっきょくきょうもフィルにぃとあそぶことはできなかった。

フィルにぃはさいきんマリーとばっかりあそんでぜんぜんシャリルとあそんでくれない!

そのことにもやもやしていることをメイドちょう?っていうえらいひとになったファーンにいう。


「そうですね〜……。しかし、フィル様も言って言うことを聞くほど素直な方ではないですし……。……これでも試してみますか?」


すこしのあいだ、うんうんかんがえてたファーンは、そういってシャリルにピンクいろのみずをくれた。


「これ、なに?」

「それはですね……フィル様がシャリル様の言うこと“だけ”を聞くようになる不思議な水ですよ」

「ふしぎなみず……」

「ええ、ですから今日寝るときにでもキスをして、その水をフィル様に飲ませたら良いのではないでしょうか?」

「き、キス……っ!」


キスって……あのキス?

フィルにぃがたまによんでくれるほんにのってた。

ひととひとがくちをあわせてけっこんする……っていうあのキス!?


「え、えっ……!?でも、そんなことしたらフィルにぃ、おこんないかな?」

「どうしてですか?」

「だって……キスはけっこんするひとどうしでしかしたらダメって……。フィルにぃがいってた……」

「ふぅむ……確かにそうなのでしょうが………。シャリル様はフィル様と結婚するのがお嫌なのですか?」

「うぅん!そんなことない!でも、フィルにぃとは“まだ”けっこんしてないから……。かってにしたらおこるかもっ!?シャリル、フィルにぃにきらわれたくないっ」

「大丈夫ですよ。フィル様がお気付きになる前に堕ちるかと思われますし……」

「おちる……?」

「あっ、ああいえっ、なんでもございません。……それにフィル様はきっと喜んで頂けますよ。シャリル様と結婚できるようになって……」

「そぅ……かなぁ………」

「えぇ……。それと、このお水は一度口に含んでいただいて、そのまま直接フィル様のお口に入れてください。少し抵抗するかもしれませんが……。大丈夫です。少量でも効果があるので、そのお水がフィル様の唇に触れるだけでも効果が出ますので……」

「わかった……。シャリル、がんばってみる!」

「はい、頑張ってください」







夕暮れ時、いつも通りマリーの育成に励んだ俺は、上機嫌で帰宅する。

家に帰ると、母ミルリラウスが優しげな声音で「夕食よー」と呼んでくれる。

我が家の食卓は基本的に家族全員で行われることになっており、使用人というよりも側仕えの人が近くに数人いる状態での食事が基本となっている。

食事にしては堅苦しい気もするが、貴族ともなると狙われる可能性が高いため、毒殺やその他の襲撃などにも備えるというのは、貴族からしたら常識のようだ。

俺は猪の魔物の肉をナイフで切り取り、口の中に運ぶ。

しかし、まぁ……。


「どうかしましたか?ファーンさん」

「いえ、特に何もありません」

「そうですか」


じぃーと、ガン見してくるファーンの視線が鬱陶しい。

なんでそんなに見てくるのか?と問うと、こんな感じではぐらかされるし……。

ジャイアントベアーとの一件から、ファーンの観察するような視線が増えた。

ジャイアントベアーと戦う前からも時々視線を感じていたものの、最近はそれが更に露骨になった。

……なんだ?

何かの精神攻撃か!?

とも思ったものの、今の所は実害はないし、訴えても「私は護衛を全うしているので」とか言われたら、それ以上追求もできない。

俺はその後も感じたファーンからの視線を無視して、家族と楽しく食事をし終えると、マリーのことで色々と試したいこともあったので、脇目も振らずに自室へと向かう。



「ふぅ……。気付けばこんな時間かぁ……」


異世界の文明も思ったよりも遅れてはいないらしく、俺の部屋には壁に時計がかけてあった。

かけられている時計には、既に夜を示す九時の時間に針が回っていた。


「もうそろそろ寝ないとな……」


欠伸をしつつそう独りごちる。

大人というよりも高校生ぐらいになるとそこまで気にしないが、今の一桁台のお子ちゃまな俺からすると、夜更かしなんてとてもではないができなかった。

頭はふらつくし、目はショボショボして何にも見えない。

その上頭だってろくに働きやしないのだ。

早寝するに限るだろう。

そう思ってベットに移動しようとしたところで、俺の部屋の扉がコンコン、とノックされるのが聞こえる。


「ふぁ〜い……誰ですかぁ……?」


眠いながらも必死に扉の方へと近付き、ドアを開ける。

すると、そこには妹であるシャリルちゃんがいた。


「ぉ!おお、シャリルちゃん、じゃん……。どうしたの?こんな時間に……」


九時というのは子供からすればもう夜更けと言っても過言ではない。

普通なら自分の部屋で夢でも見ている時間だ。

それだけにシャリルちゃんが俺の部屋に訪れた意味がわからなかったのだが……。

シャリルちゃんは、俺の眠そうな顔を一瞥した後、わかりやすく頬を膨らませて、いかにも不満です、という表情を俺に見せた後、相変わらずの幼げな声音で俺に話しかける。


「ムゥ……フィルにぃ、もうわすれてる。やくそくしたのに……よるはいっしょ、って……」

「ぁ?ああ〜!」


最初、何のことなのか分からなかったが、少し覚醒した脳のおかげでシャリルちゃんの言っていることを思い出す。


「あぁ、そういえばそうだったね〜。ゴメンゴメン、忘れてたよ。……えぇっと、確か一緒に寝たいんだったっけ?」

「ぅん!」


確認のため、昼に言ってたことと同じような言葉で確認すると、にぱーっとした笑顔で肯定するシャリルちゃん。

俺はそんなシャリルちゃんの頭を撫でながら、「じゃあ、一緒に寝よっか?」と言って同じベッドで横になる。

ベッドは貴族ということもあり、子供には少々不釣り合いなほど大きいため、幼児である俺たち二人分のスペースなんて有り余るほどあるのだが……。

何故だかシャリルちゃんは、口と口がくっつきそうになるくらい密着してきた。

男女七歳にして席を同じゅうせず、ということわざにそるのならば、俺もシャリルちゃんもまだ七歳ではないので問題はないだろうが、それでもこれはちょっと、なぁ……。

お互いの息がかかるぐらいの狭さだし、これだと何かの勢いでキスしてしまう可能性だってある。

……いくら可愛いとはいえ、妹にファーストキスを奪われるのは心境的に複雑だった。

とりあえず、別の方向を向こうとシャリルちゃんに背を向けるも……。


「やっ!!!」


というシャリルちゃんの一言で渋々向きを元に戻す。


「はぁはぁ……」

「……」


仕方ないからこのまま寝るか、と思って目を閉じるも、シャリルちゃんの興奮したような荒い吐息が俺の鼻にかかってなかなか眠れない。

目を開けるとシャリルちゃんは頬を真っ赤にして俺を見つめていた。

……ん?なんか、様子がおかしいな……。

もしかして、風邪か……?

あまりにもいつものシャリルちゃんとは様子が違ったので、俺はもしかしてシャリルちゃんの体調が悪いのではないか、と思った。

とりあえず、真眼のスキルで体調でも確認しようかなぁ、とシャリルちゃんから意識を逸らしたところで、唐突にそれはやってきた。


「ん、ちゅぅうううっ!!!」

「ん!?んぅうううっ!?」


そう、キスである。

俺は突然の出来事に頭が真っ白になった。

しかし、シャリルちゃんはそれだけでは止まらない。

唇と唇が触れるだけの軽いキスをした後、彼女は俺の後頭部を抑えて更に激しくキスを迫った。


「ん!?ぅううう!?ん?ん!?」


し、舌っ!?舌がぁああっ!?

どうもシャリルちゃんは軽めのキスでは満足できなかったようで、舌で俺の口をこじ開けて舌を絡めた熱烈なキスをし始めた。

俗に言う、フレンチキスというやつだ。

俺はしばらくジタバタしていたが、シャリルちゃんの抑える力の方が強いということを悟ると、無駄な抵抗は諦め、されるがままになった。

シャリルちゃんはそんな俺の無抵抗な姿に満足したのか、変なピンク色の水を口に含んで俺に飲ませた。


ーーーな、なんだコレ!?か、カラダがアツイ!?


シャリルちゃんに飲まされたソレは、俺の体内に入ると同時にビリビリと痺れるような感覚を俺に与えた。

痺れると言っても、正座してできた痺れとは違い、痛みはほとんど伴わない。

というか、むしろ心地よい……。

そうして、しばらくぼんやりと目を開けていると、シャリルちゃんのことが急激に愛おしく感じ始めた。

えっ!?なにこれ?なにコレぇええっ!?

ドキがムネムネ……じゃなかった、胸のドキドキが抑えられない俺は、シャリルちゃんがやめたキスをせがんでしまう。


「しゃ、シャリルぅ……」

「うん、わかった!」


俺の要求をみなまで言わなくても理解したのか、シャリルちゃんは俺に覆いかぶさってもう一度軽めにキスをする。

先ほどのフレンチキスに比べると大分物足りない気もするが……。

シャリルちゃんの初々しい感じがいい感じにそそるっ!

俺が満足したのを確認したシャリルちゃんは、ベッドの中で俺に抱き寄せると、耳元で囁く。


「これからはちゃんと、シャリルとあそんでね?」


俺はその声に頷くしかなかった。




こうして、俺は約三日間に及んでシャリルちゃんを甘やかし、立派なシスコンへと成長していくのだったーーー






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