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11.幼馴染に信用のない俺、フィル少年の過去に興味を持つ

ちょっと、体調が悪いので文字数少なめです。



「で、何しに来たんだい?フィル」


幼馴染たちとの久し振りの邂逅を果たしたところで、唐突にウェルがそう尋ねる。


「何、ってそりゃ……体の調子が良くなったからウェルたちに会いにーーー」

「ーーーウソだね」「ーーーウソつき」


俺がここに来たことの訳を話す常套句を話そうとしたところで、ウェルとカルリアの二人が即座に否定してきた。

う、ウソつきって……。


「僕がしってるフィルはそんなムダなことを言うような子じゃなかったよ?ほんとうにどうしたんだい?まだ、体の調子なおってないのかな?」

「うん、あんまりフィルらしくない……」

「……」


……どうやったらここまで信用のない幼馴染ができると言うんだ、フィル少年よ。

ちょっと、というかかなりフィル少年とこいつらの付き合いが見てみたくなったが……まぁ、今日の本題はそれじゃないし、別の機会にしておくとしよう。

しかし、まぁなんにせよ、この場合はフィル少年が実利的な人間で良かったと思っておこう。

俺は素直にウェルとカルリアに俺がここへ来た理由を説明する。


「ーーーふぅん、なるほどね〜。シャリルちゃんがそんなことを……」

「いいなぁ、わたしもほれぐすりほしいぃ……」


ーーー若干一名、危ない思考をお持ちの方がいらっしゃるが、俺は無視して話を進める。


「それでまぁ、その魅了状態を解除するには治癒魔法師か、薬が必要になるわけで……」

「……なんで治癒魔法師をやとうという選択肢がなくなるのかはわからないけど……わかった。なにか事情があるんだね?ふかくはきかないよ」

「……助かる」

「それで?どうして双竜の霊山なの?あそこ、なんかクスリになるものってあったかな?」

「あぁ、あんまり有名なものじゃないけどな……」

「……そこもナイショ、と」

「むぅ……」


ウェルとカルリアからジト目を向けられるものも、俺はどうやってその情報を得ることができたのかを説明するのが面倒なので、何も言わない。

二人はしばらく俺を睨みつけていたが、やがてどうやっても俺が口を開けることがないと悟ると、双竜の霊山へ行くための手配をしてくれることになった。


「いくら近いといっても、馬車でもふもとまでは一時間ぐらいかかるんだ。……さすがにそこまで歩くのはイヤだろう?馬車ぐらいなら手配するよ」

「そうか……。何から何まですまないな」

「そう思うなら、すこしはフィルのじじょう、おしえてよ?」

「ははっ、今度な……」

「むぅ……」

「カルリア、あんまりわがままを言うものじゃないよ?フィルは前からこうなんだからさ」

「……わかってるっ」

「……それで?馬車はとうぜんとして……護衛は?いるならうちから何人かつけるけど?」

「いや、それは問題ない。こっちにも護衛いるし……。そこまで危険なことをする気はないしな」

「そうか……じゃあ、気をつけてね?」

「あぁ」


馬車の手配をしてくれたウェルに礼を言った後、俺はそのままハーブェルト男爵家の屋敷を後にする。

俺がすぐに出て行くことに難色を示していたカルリアだったが、俺が抱きついてご機嫌をとると、すぐに許可をくれた。

……チョロい。

ウェルには御者をつけなくて良いのか?と聞かれたが、ミルフィンに聞いたところ、馬車も大分操縦できるという話だったので、遠慮しておいた。

出発した俺たちの馬車に手を振り続けている二人を尻目に、ミルフィンは意外だという顔をして話しかける。


「フィル様って、素は結構乱暴な言い方なんですね」

「そうですか?僕としてはそこまで乱暴に言ったつもりはないんですけど……」

「いえ、品がないとかそういうつもりで言ったわけではないんですけど……。後、私以外誰もいないときは、その口調やめてくれませんか?」

「……何でですか?」

「少し……いや、かなり壁を感じますので……」


……そうなのだろうか?

俺としてはこの丁寧な口調はほとんどの人から好感を持てる話し方だと思っていたのだが……。

まさかの俺の自慢の敬語調にダメ出しが入り、ショックを受ける。

しかし、まぁこの口調が嫌だと言われる以上は仕方がない。

素で話すとしよう。


「そうか……。俺的には結構良い感じの話し方だな、と思ったんだがな。そんなに嫌か?さっきの口調……」

「いえ、別に嫌というわけではないんですけど……。先ほどの話し方を聞いてしまうと、丁寧な方はどう聞いても違和感しか覚えないと言いますか……。なんだか距離を置いて話されているみたいで嫌なんですよ」


別に嫌というわけではないんですけど、と言っておきながら、結局嫌、と言っていることに気付いているのだろうか、ミルフィンは。

まぁ、俺としても態々相手が嫌がるような口調を率先して使う必要もないので、ミルフィンの前だけではこの口調で話すことにしよう。

こんな感じで、双竜の霊山へと行く道中、俺とミルフィンは互いに他愛のない話で盛り上がった。





「ずいぶんと雰囲気がかわっていたね?フィルは……」

「そう……なんか別人みたいで、すこしとまどった」

「それは僕もだよ、カルリア。彼、ほんとうに体は良くなったんだろうか?なんだか、僕には全然そんな気はしないのだけど……」

「私も……きいてみる?」

「うん?聞くって、フィルの両親にかい?」

「ん」

「うーん……どうかなぁ〜。フィルの両親は素直に話してくれるかなぁ?多分だけど、なにかしらの理由ではぐらかされると思うんだけどね……」

「でも、フィルがしんぱい」

「そうだよねぇ……」


普段、ほとんど表情が変化しないカルリアの顔が、不安で少し歪む。

言葉上では呑気な様子のウェルハルトも、実は内心フィルのことが心配で、心臓が普段とは比べものにならないくらい速く鼓動していた。


ーーー何か、悪い病にかかっていたらどうしよう、とか。

ーーーこれから、フィルの様子が悪くなったらどうしよう、とか。


とにかく、居ても立っても居られないハーブェルト兄妹は、とりあえずフィルの体調を知るために、フィルの父親であるベルウェイトに魔法道具で連絡を取ることにした。







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