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運転席

難民収容所に戻るかと聞かれたが、

俺は、やって来た自動車に興味が湧いていた。


普通の乗用車に見えるが、

ドアの横に会社名らしきものが書いてある。


「これって、タクシーみたいなものか?」

「タクシー?」

ユリが首を傾げる。


「ああ、運転手付き自動車のことですね。昔、日本でも走っていたとかいう。

これはタクシーではなくて、共用の自動車です。

お金持ちの人は自分だけの自動車を持っていたりしますけど、

普通はこういう共用の自動車を携帯で呼んで乗るんですよ。」


日本では、タクシーは無くなってしまったらしい。

そりゃ自動運転がここまで進んでいれば、

タクシーは無くなるか……


「この自動車は、その携帯で行き先を指定するのか?」

「はい。どこでも指定すれば、最適なルートで連れて行ってくれますよ。」

「それでは、これで東京駅に行くのはどうだろう。」


ユリはちょっとビックリしたようだったが、

また、ふわっと笑った。

「いいですよ。行きましょう。」


また、ユリは携帯で何やら打ち込んで、運転席に座った。

「さあ、トールさんも乗ってください。」


促されるまま、俺は助手席に座った。

俺が座ると、ユリは何もしないのに、自動車が動き出した。

目の前にあるハンドルに手を伸ばそうともしない。


「運転しないのにハンドルはあるんだな。」

「ああ、誰しも抱く疑問ですよね。

緊急回避用ということで手動で運転するための物は残してあるんですけど、

実際は自動車会社の責任回避のための言い訳なんですよ。」

「責任回避?」

「ええ、自動運転が実用化されたとき、事故が頻発したらしいんですね。

それで手動で運転できるようにはしておいて、自動運転で事故が起きても最終的な責任は

運転席に座っていた人間に取らせることになったのです。」

「ああ、なるほど。」

「もう、自動運転で事故なんて滅多に起きませんし、

こんなもの残しておくから、昔の癖で老人が手動で

運転してしまって、私たち自動運転犯罪対策課の出番となってしまうんですけど。」


それで、俺も手動運転罪で捕まった訳か。


「それに手動で運転できるとは言っても、そもそも私みたいに運転できない人は多いですしね。」

「意味が無いか……」

「ええ。」


落ち着いてみると、車のドアの横に会社名らしきものが

書いてある自動車が多い。みんな共用の自動車というやつなのだろう。


信号機がほとんど無いため、非常にスムーズだ。

自動車間通信で、相互にやり取りしてぶつからないように

ルート決めをしていると言っていたから、信号機は必要ないのだろう。


2077年になると、こんなに便利になるんだなあと俺は感心した。

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