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緊急連絡先が不通というのはどういうことだ?

普通の固定電話のはずだし、いつも留守番電話にしてあるはずだぞ。


「まあ、というかですね。トールさん、

あなたの情報が戸籍にも住民票にも見つからなくてですね……」


ということは、やっぱり崖の底を突き破ったときに異世界に

迷い込んだということだろうか?


おじさんは貼り付いたような笑顔を浮かべてはいるが、

俺のことを全く信用していない目で俺を見つめる。


さて、なんて答えようか、

色々考えて、その辺も弁護士と相談しようと決めた。


「分かりました。私としては嘘は吐いていないつもりですが、

まずは弁護士と相談してからにさせてください。」

「まあ、そうですね。」

と、おじさんは去って行った。


にしても、独房ではすることが無い。

なにしろ歯ブラシも無いので、歯磨きもできない。

しかも窓も無く、蛍光灯がずっと点いているので、

いま何時なのかさっぱり分からない。


変な後悔が心から浮き上がってくる。

運転なんかしないで車を捨てて逃げていれば、

逮捕されなかったんじゃないか?とか、

そもそも車中泊なんて無理はせずに安宿でも

良いから泊まっていれば良かったとか、


懲役5年になったら、5年間もこうやって後悔し続けるのだろうか……


色々、考えていると、また呼び出された。

独房から出るときにまた手錠をされるのかと思っていると、

今回、手錠は無しだった。

預けた荷物も返却された。


これはどういうことだ?


さきほどの女性警官が奇妙な笑顔で言う。

「トールさん。貴方が日本国民であるという証明するものが

一切見つかりません。」


そんな訳ないでしょうが。学生証もありますよ。

というか、やっぱり異世界なのだろうか?


「ですが、貴方が嘘を吐いているとも思えません。」


そうだ。俺は嘘は吐いていない。


「ということで、検察は貴方を、当面

難民として受け容れることに決定しました。」

「となると、どうなるのですか?」

「しばらく難民収容所で暮らしてもらうことになります。」

「ええと、そうなると手動運転の方は、

無罪放免ということになるのでしょうか?」

「そうなります。ですが、今後も何回かは任意の事情聴取に

伺いますので、ご協力を是非お願いいたします。」


訳が分からなかったが、俺は留置所を出ることが出来た。

もうすっかり夕方になっていた。


で、これからどうしたら良いんだ?

と思っていると、背の低い男性が現れた。


「ええと、トールさんですね。」

「はい。」

「私は、難民収容所の者です。では行きましょうか?」


と促されるままに、難民収容所に向かった。


案内されたのは、タイル張りの狭い部屋だった。

エアコンも付いているし、小さいテレビもあるが、

薄汚れたカーテンや古ぼけたベッドがなんだか歴史を感じさせた。

何人の難民がここで寝起きしていたのだろうか?

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