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逮捕

俺はパトカーに停められて待っていると

黒いショートカットの女性警官が現れた。


「はい。まずは車から降りてください。」

柔らかい印象の笑顔を浮かべ言葉遣いも丁寧だが、

有無を言わせぬ雰囲気だ。


抵抗してもしょうがないので、素直に降りる。


腕時計を見ながら女性警官は言う。

「ええと、11時07分、逮捕しますね。」

手錠をかけられた。


あれ、俺はそんなに悪いことしたか?


俺はそのままパトカーに乗せられて

留置所に連れて行かれた。

パトカーの中では聞きなれない曲が

静かにかかっていた。


留置所では、手錠を外してもらえたが、

貴重品も含めて荷物を押収された。

そのとき弁護士を呼ぶか聞かれたが、そもそも貧乏学生の

俺に呼べる弁護士など、いる訳がない。


更に服も上着を取り上げられ、

体中を危険物を持っていないか調べられた。

その後は、写真撮影をして、

アルコール反応の有無を調べられた。


こうして一連の手続きが済んでから、

鉄の重い扉のある個室に入れられた。


俺は、そこまでで結構疲れてしまっていたので、

正直やっと休めると少し嬉しかったが、

少しずつ事態の深刻さに滅入り始めた。


見回すと、部屋の片隅にトイレがあり、

檻の中というのが良く分かる。

独房であるだけマシか。

これで他の犯罪者がいたら、

もっと気が重くなっていただろう。


これから俺はどうなってしまうんだろう?


と思っていると、食事が運ばれて来た。

カップラーメンと食パンだった。

食パンは、なんとトイレットペーパーに包まれている。


うへえと思ったが、腹は減っていたので

我慢して食べた。


ゴミの回収におじさんが現れた以外は、

またずっと独りになる。


独りで静かにしていると、

意外と周囲は騒がしい。


ずっと歌を歌っているやつ、

ずっと文句を言っているやつ、

ずっと扉を叩いているやつ、


馬鹿だなあと思いながら、

その馬鹿な一員に俺も加わっているという事実が

俺を更に落ち込ませた。


することがないので眠っていると、

扉が叩かれた。


「取り調べをするので、出てください。」


独房から出ると、また手錠をかけられた。

まったく脱獄の気さえ起こさせぬ徹底した管理だった。


一室に連れて行かれ、

中に入ると、さきほど女性警官がいた。

「はい。では取り調べをしますね。」


なんとも、周囲の雰囲気に似つかわしくない

明るい口調で彼女は話し出した。


彼女の話では、俺は手動運転の罪に問われていると言う。

緊急回避のためで一時的に手動で運転する場合以外は、

手動での運転は罪に問われるというのだ。


「いやあ、手動運転罪なんて、滅多に起きないんですけどねえ。

ときどき呆けたおじいさんとかが起こすくらいで。しかも、

あの長距離を運転するなんて前代未聞ですよ。」


俺は念のために聞いてみた。

「手動運転罪だとすると、どれくらいの罪になるんですか?」


彼女は小首を傾げて言った。

「うーん。最長で5年の懲役になりますね。」

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