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起動中のプログラム

森本課長に呼び止められた。

「すまないが、一緒に来てはくれないか?」

「行きがかった船ですから、良いですけど何ですか?」

「君の話が聞きたいらしい。」


誰が?

と思ったが、名前を言われても分からないだろうし、素直について行くことにした。



連れて行かれたのは、大きな会議室だった。そこに男性のみがたくさん集まっていた。女性がいない。女性が……

ついてきたユリだけが、この中で唯一の女性であった。


森本課長がやや緊張した声で言う。

「連れて来ました。」

「ご苦労。きみがプログラムが得意なトール君か?」

相当偉い方なのだろうか?

初老の男性が声をかけてきた。


「はい。得意か不得意かで言ったら、得意です。」

俺は胸を張る。周囲の人間がざわざわしたが気にしない。


その初老の男性は、軽く微笑み、深く頷くと説明を始めた。


テロリストは自動車をハッキングして、自分たちのプログラムを動かし、テロを起こしたこと、


今回のテロでは爆発物が自動車に積んでいなかったため被害は小さく、またテロリストのプログラムも回収できたこと、


次回のテロでは爆発物を載せたテロを行うと予告がなされていること、


俺の提案により、プログラムが停止している自動車については対策ができたこと、


ただ、普通の自動車、つまり複数人で共有している自動車は常に動き回っており、自動運転のプログラムは通常起動しっぱなしであるため、その対策ができていないこと。


「少し疑問なのですが、なぜテロリストはプログラムを回収されるようなリスクがある行動をとったのでしょうか?」不思議に思ったので聞いてみる。


「テロリストは我々を舐めているのだよ。我々がテロリストの細工を見破れる訳がないとね。しかし君のおかげでプログラムが停止している自動車については対策が出来た。感謝する。そこで、起動中のプログラムについても君の知識でなんとかならないだろうかと我々は期待しているのだ。」

初老の老人は少しうつむきながら言う。


なるほど、起動しているプログラムの動的修正か……

不可能ではないと思うが、それは相当に手間だな……

セキュリティホールを突いて管理者権限を奪取し、プログラムの展開場所を調べて上書きしていけば、なんとかなるか……


そもそも、動いている自動車の自動運転のプログラムを上書きして、事故が起きたりしないかな……


「検証する時間と実験用の自動車が必要ですが……できるかもしれません。」


おお、という歓声が会議室中に広まった。


「そうか、では頼む。君が必要な物はなんでも揃えよう。なんとか、次の週末までに対策を考えて欲しい。」

その初老の男性の言葉に、俺は何が必要か考え始めた。


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