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テロリストの細工

森本課長から頼まれて、俺は快諾する。


「そうか。ありがとう。それでは分かっている範囲で説明する。これから話すことは機密事項だから、そのつもりで。」


それから説明が始まった。


今回のテロでは自動運転の自動車がテロに使われたものの爆弾を積んでいなかったこと、そのため車内のシステムがほぼ無傷で手に入ったこと、それをコピーして自動運転犯罪対策課では解析することになっていること。


「ただねえ、先ほども言った通り、ここには平間君と僕しかいなくてね。しかも解析と言っても、プログラムのテキストをコンパイルしたバイナリコードだからね……」


まあ、普通はお手上げだろうな。


「少し見せてもらっていいですか?」

「ああ、もちろん。」


見せてもらったシステムは、意外と単純なものだった。簡単なOSの上で単体の自動運転のプログラムが起動するようになっている。

テロに使われたシステムも見せてもらったが、自動運転のプログラム自体には手が入っていなかった。プログラムには実行するときに必ず事前に実行する部分があるだが、そちらに細工がしてあり、テロリストたちのプログラムが自動運転中に起動するようになっているようだった。


俺は逆アセンブルして確認してみた。予想通りだった。


プログラムの作法として、こんなところで分岐させるのは、あり得ないのだが、テロリストにプログラムの作法を説いても始まらないからな。


「だいたい、分かりました。」

「もう分かったのか?」

「簡単なトリックだったので。」


もう少し大変かなあと思っていたが、プログラムの実行手順を悪用したもので、仕組みさえ知っていれば誰でも出来るトリックだったからな。


俺は分かったことを説明する。

プログラム起動前であれば、その部分を元に戻してあげれば問題は発生しない。


「なるほど、では、そう報告しよう。」


森本課長は何やら電話で話し出した。俺は帰ってもいいのかなとも思ったが考えてみれば、ユリがいなかったら、帰ることもできないのだった。


そこにユリが、お使いから帰ってきた。

「ユリ、帰ろうか?」

「あれ、協力はどうしたんですか?」

「もう、終わった。」

そう答えて、俺はニヤリと笑った。


そこに、森本課長が割り込んできた。

「トール君、すまないがもう少し付き合ってくれないか?」


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