六
ミキオの怨みは鬼には渡さない。
そんなことをしたらソイツは闇に沈んでしまう。
そう、ソイツはこっちの世界で晒してやる。
オレはミキオのヒトカケラを握り締めた。
熱い。戸惑ってゆっくりと手を開いた。
ヒトカケラのミキオの骨が赤い、赤い血の色になって溶けている。
オレはそれがこぼれ落ちないように手をスプーンのようにした。
ドクンと刃を呼ぶオレになっていた。
毒々しい空気が心地良い。オレの中に誰かがいる。
ミキオ、ミキオなのか。
三日月の刃がミキオの骨を吸っている。
呼んでいる。誰かがオレを呼んでいる。
クラッと吸い上げられた。
真っ暗になって意識を失った。
夢を見た。
黒く青みを帯びた雲と朱色の雲の空を七才の頃のミキオとオレが一緒に飛んでいる。
熱い、手がジンジンとうずく。
「チィちゃん、あっちだよ」
ミキオがオレのその手をとっていざなう。
指差す行く手を黒い大きなカマキリが塞ぐ。鶏ほどの大きさで目だけが白い。
そのカマキリがミキオを見て襲いかかって来た。
ミキオがオレにすがって後ろに隠れた。
うずく熱い手からの三日月の刃で振りかざしたカマを叩くと
カマキリはその勢いで木に叩きつけられた。
オレはその顔を後ろから踏み潰した。
顔が潰れたのにまだバタバタと足を動かすそれを見て
ミキオがニタリと冷たく笑う。
蛇のような笑い。そんなミキオを見てオレは声を上げて泣き出してしまった。
驚いたミキオがオレを覗き込んだ。
その顔は困り果ててオロオロしている。
「チィちゃん、何でチィちゃんが泣くの?」
しゃくりながらやっと出た言葉。
「ミキオ、ミキオ、ごめんよ。オレはミキオを守れなかった」
もうその時ミキオの姿は黒く霞んで遠くなっていた。
「ミキオ」