表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな箱  作者: さわゆき
5/7

あれをあのままにしたらミキオが鬼になる。

今日で五日。早く、早く。

オレは暗い石段を駆け下りあの箱を手にした。

ミキオ、ミキオを鬼にはしない。

小さな箱の写真の顔は変わっていない。

数本の糸の這う哀れな死に顔。


「トキオ。何のつもりだ」


「ミキオを鬼にはしない。この写真はオレが貰う。

そうだ。祖父ちゃんのお墓のあるお寺に拝んで貰う。

祖父ちゃんならミキオを救ってくれる」


「お前、鬼は昔、生きている奴を引きずり込んだ子供の霊がなる。

もしも、鬼が来ても、その来る鬼はミキオじゃ無いぞ」


「でもオレはこんな事にミキオを使うのはイヤだ」


「…トキオ」


「リュウちゃんはミキオを弟みたいに可愛がっていた。

あのリュウちゃんがミキオに酷いことする訳がないよ。

そう、ミキオを殺したのはリュウちゃんじゃ無い。

ミキオを殺したヤツは生きている。

そいつは生きている人に裁いて貰う」


「…リュウはここに居ない。居ない。そうなんだな、トキオ。

…そうか、わかった。今からお寺さんにミキオを連れて行こう」


グズグズな顔のオレの肩を抱えてショウさんはそう言ってくれた。

その顔は駅で迎えてくれた時の顔だった。



「こんな時間にお寺さんに行くのか」


首を傾げていたお祖母ちゃんがそれならと風呂敷包みを持って来た。

この匂いはオレ達が好きだったお祖母ちゃんの手作りのお饅頭だ。

オレの顔を見たお祖母ちゃんが


「まだ沢山あるよ」

と言うので

「さすがお祖母ちゃん」と、

オレの素っ頓狂な返しが受けたのか

お祖母ちゃんは金歯を見せながら大笑いした。

その声に釣られて側に居たリツさんも大笑いした。


「本当に久しぶりこんなに笑ったの」




時計はすでに七時を回っていたがお坊様は子細がわかると直ぐお経を上げてくれた。


「あの時の坊やがなあ…。うん、うん、それでいい。

あの御堂のことは伝え聞いている。

鬼を呼ぶには七日掛かる。

万が一鬼が来ても行く所は無念の相手、捨て置いてもいいか。

いかん、いかん、これだから儂はクソ坊主と呼ばれる。

…ただ」


「ただ?」


「願をやっていたアソコの子供達は陰の気が強くなっていく。

引きずり込む力が強い。しばらくは誰かが鎮めないとなあ…」


ショウさんとお坊様は息を合わせたようにオレを見た。


「やり方、知っているな?

あの頃カズおじさん、いつもトキオを連れて行っていた」


だからオレはこの人が苦手だ。

兄さんに電話を入れるとすでに全てが連絡済みだった。


「父さんが懐かしいとボヤいている」


オレは電話越しに久しぶりにトキオとして父さんと話した。

そして、繋がった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ