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小さな箱  作者: さわゆき
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「ここは幼子の霊の遊び場と祖父ちゃんが言っていた」


「遊び場か、まさに子供だましだな。

ここはな。口減らしで親に殺された亡骸を埋葬した所だ。

死にたく無いという子供の無念を閉じ込めた所。

だから、ここはそんな子供の霊が集まってくる。

それでな、昔は髪とか爪だったらしいが、

最後の写真を預けておくと無念を晴らしてくれる。

願掛け、まじない、いや、呪いに近いな。

鬼を呼ぶ。

リュウの時これを母さんがやった。その代償に母さんは死んだ」


「えっ?」


「なんてね。そんな怪談みたいなこと本当にあるわけないさ。

リュウは落ち葉に足を取られて崖から落ちて死んだ。

お前達が帰ってしまって寂しかったのだろう。

一人で山に入って…。

頭を打ってほぼ即死だっただろうと医者が言っていた。

苦しまないで逝ったのがせめての救いだったけど

…母さんは自分を責めて、な。ろくに飯を食わなくなって

…弱っていたところに風邪を引いたから

母さんは自分からリュウのところへいった。

…なあ、ミキオなんであの時こっちに来たんだろう。

もしかしたら、リュウのヤツが呼んだのかもしれない」


「ミキオを殺したのはリュウちゃん?」


「偶然すぎるだろう?宮参りから全然来なかったのに大学入る報告とか言ってリュウの墓参りに来た。

そして一週間後にあんな死に方。

なんかリュウのヤツが呼んだとしか思えなくて、な」


「そんなことは無い。

だってミキオとリュウちゃん、兄弟みたいだった。

…無念…呪い…最後の写真…あの写真は兄さん?」


「そうだ。気付いたか。あの写真を撮れる者は限られている。

親父さんか、あいつ。

…呪いなんてあるはずない。

そう思ってもそうせずにはいられない」


そう言ってショウさんは自分の手の平をオレに向けた。

サッーと子供達が消え去った。

だからオレはこの人が苦手だ。先手を打ってくる。オレも痣を呼んだ。


「兄さんはここのこと知っていた…」


冷静で理論的な兄さんがそんなことをしていた。

ミキオを殺したヤツはまだ警察もわからないままだった。

そうだったのか。

兄さんも怒りの相手を探していた。


「オレと死んだ親父は持っていた。

だからてっきりアイツも持っていると思って話した。

カズおじさんの四十九日の時に確かめた。

でも、あいつは霊が見えるだけで色は解らなかった。

だから、二人はどうかと思ってな。

そしたらアイツがトキオは見えていると言った。

だから何度もカマをかけたのにな。

トキオはカズおじさんからどこまで教わった?」


やいばを譲られた時に教えてもらったのは

引きずり込んだ子供は鬼になるからそうならないようにしろって、それだけ。

だから、呪いのことは知らなかった。

でも、その時、兄さんはそれを知った」


「まあ、そうだ。アイツ誘導するのが上手いからな。

呪いのことも話した。ざっくりとな。

そうか、呪いのことは伝えなかったのか。

そうだな、ガキには呪いはいらないな。

トキオ。そのやいば

カズおじさんはそれを譲ったのではなく、覚醒させた。

つまり寝かせたチカラを起こした。

自分がいなくなるから仕方無くだろうな」


「そうなんだ。オレ、これはバトンみたいに繋げていくのかと思っていた」


「…あの写真をミキオの骨のヒトカケラを添えて納めてから今日で五日だ。

どうなるかは、…オレも知らない」


オレの所に届いたのが三日前。

兄さんはオレにこれを教えたかった。

呪い。

ミキオの最後の顔。

眉間にしわを寄せていつも不機嫌そうな兄さんの顔。

山を下りる頭の中で兄さんの顔とミキオの顔がグルグルした。

ひとつの仮説が出来た。

オレは獣道を駆け戻った。


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