表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

隣の美女

作者: テント

 揺れ動くバスの中、案内放送の声で私はゆっくりと目を覚ました。


 見慣れた景色が窓ガラスに広がっている。どうやら寝ている間に降りる駅を通過してしまったという失敗は犯していないようだ。


 一安心していると、隣からラベンダーの香りがかすかに私の鼻腔びこうをくすぐった。

 


 うわぁ、きれい……。



 私はそこに座っていた女性を見て心が奪われそうになった。

 年齢は二十くらいだろうか。ブラウンの髪をまっすぐに伸ばしていて、肌は日焼けはおろか怪我したことすらないのかと思わせるくらい真っ白だ。どのようなスキンヘアをすればこれほどの美白になれるのかいてみたいくらいだった。


 こんなに見つめたら失礼だと思ったけど、女性はまるで私が見えていないかのようにフロントガラスから目を離そうとしない。その様子も絵になっていて、私はぜひともこの人と友達になるために声をかけてみたかった。


 

 い、いけない私ったら!



 そんなことしたら間違いなく不審者扱い。下手したら警察のやっかいとなるかもしれない。少なくとも私がこの人だったら絶対に悲鳴を上げている。


 あきらめようと溜息ためいきをつくと、通路をはさんだ向かい側の席に座っている男の子がこちらを凝視ぎょうししていることに気づいた。


 「パパ! あの人すっごい美人だね!」

 と、その男の子はいきなり隣の男性の腕を引っ張りながらそう言った。


 「あ? ああ、そうだな……」


 「みんなもそう思うよね!?」

 子供はかん高い声で車内の乗客に聞いた。 


 一斉に降り注ぐ視線。注目されているのは隣の女性のはずなのに乗客の誰もが顔を引きつらせている。



 きっと私のせいだわ。



 私のような醜い人間が隣にいるせいで、彼女の美しさを損なわせているに違いない。


 なんだか私は恥ずかしくなり、顔を手で覆った。


 「あれ、窓際の人どうしたんだろ。気分でも悪くなったのかな?」


 「照れてるんだろ。それと、あの人は化粧してるけど男の人だからな」

オチ:隣の美人は幽霊で、主人公と男の子しか見えなかったというものです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ