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プロローグ
目の前に、怪物がいた。
漆黒の鎧に身を包み、大剣を手にした騎士のような『堕天妖精』と呼ばれる怪物だ。そんな奴に、俺は後ろの傷ついた先輩、それを支えている親友、そして幼馴染の一人の少女を庇うように立ち塞がっていた。そもそもどうしてこうなったのか。桜浜高校三階、第一音楽室前廊下。そこに俺は放課後部活終わりの幼馴染を迎えに来た。そして突如この怪物が現れた。うん、まったく意味がわからん。
「隼斗…」
後ろの少女が、声を震わせて俺の名前を呼ぶ。
だが、
「安心しろ、絶対に守るから」
俺は余裕の表情で言葉を返す。そう、俺には彼女を守るだけの、目の前の敵を倒すだけの力がある。俺は左手首につけていた異能封印の数珠を、無理矢理引き剥がす。繋ぎを失った玉達は、重力に伴ってバラバラに床に散らばる。刹那、両手の甲に刻印が浮かび上がり、光輝いた。
「これ以上お前が俺の大事な人達を傷つけるようなら、そんな存在、俺が否定してやるよ!」
いや、正確には守んなきゃいけないか。なんせ俺は、『妖精使い』だからな………。