道場へ行こう
その後、4人はそれぞれのアパートの部屋の前まで一緒に帰った。(この兄弟と姉妹は同じアパートの隣の部屋に住んでいる。)
「もう、大丈夫だぜ。人はいない。」
そう言ったのは、無口・無表情という仮面をぬいだ、表情豊かで強気なリクだった。
「流石リク。私たちの中で気配よむの、1番早いよね。」
「まぁ、リクはうちの師匠を負かしたから~」
「へぇ…そうだったんですか。今度、僕と手合わせして下さい。」
そう言ったのは上からリン、レナ、カイである。
この3人もすでに仮面をぬいでおり、
リンは優しげな表情を消し去って無表情で。
レナは無邪気な笑みを消してダルそうにあくびをしながら。
カイは不敵な表情を柔和な笑顔に変えて。
三者三様な顔でリクに返事をしていた。
「え~…兄貴と正面から手合わせしたって勝てるわけないじゃん。」
「まあね。それよりもレナ。」
「なぁに?お姉ちゃん。」
「レナのことをいじめようとしてた女子グループがいたから、潰しといたけど良いよね。」
「もちろん。ありがと、お姉ちゃん。」
この二人は、毎日のように兄弟のファンクラブから嫌がらせを受けている。
実行される前に潰すので問題ないのだが、いい加減うんざりしているところだ。
「リク。そろそろ、ファンクラブを統制しますか?」
「はぁ?イヤだよ。そんなことしたら、俺らがファンクラブを認めたことになるじゃん。」
「まぁまぁ、それはあとでも良いでしょ?そろそろ着替えないと稽古に遅れるよ?」
「うん。師匠が怒るとめんどくさいしね~。」
そう。この4人は道場に通っている。
リンとカイは、実践的な戦い方を教えてくれる剣術道場で、レナとリクは忍術道場だ。
まあ、忍術といっても影分身などではなく、習っているのはクナイや手裏剣の使い方や気配の消し方・探り方などだ。
これらの道場にはリンとカイは侍に憧れて、レナとリクは忍者に憧れて入った。
今では、兄弟は師匠をも倒せるように、姉妹は師匠と兄弟以外には負けることはないくらいにまで成長していた。
先ほど、リクがカイに勝てないと言ったのはこのためだ。
いくら強かろうが、真正面からの一騎打ちでは忍術の方が分が悪い。忍者は後ろからの騙し打ちの方が得意なのだ。
「うわ~…師匠は怒らせたくないな。」
「じゃあ、30分後にここ集合でいいですよね?」
「うん。いいよ~。」
「了解。」
「分かった。」
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30分後………
制服から着替えた4人は、再び猫をかぶって道場に向かって歩いていた。
「この調子だと、遅れずに着きそうね。」
「うん!師匠に怒られずにすんでよかった。」
「まあ、俺様のおかげだな。」
「兄…さんは…何も…して…な…い。」
「はあ?なんか言ったか?」
「何…でも…ない。」
そうして、4人が交差点を歩いていた時・・・・・・・・・・
「「危ない!!!!!!!!」」
最期に兄弟の視界に入ったのは、自分を轢いて逃げていくトラックと、自分に突き飛ばされて呆然とこちらを見る恋人の姿だった。