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DayBreak  作者: 飛鳥
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第二話 レイヴンとレギオス

「少佐、少し宜しいでしょうか?」


「ん?どうした?」


ラングレー基地の司令部でモニターを見つめていたフィーリア少佐は副官のイーリス=ピ二ティア中尉から呼び出されそちらの方へと脚を運んでいた。


「すみません、ですが、少し気になる事が」


「気になる事?」


「先ほどロストしたイーグル2が『ASが空を……』と」


「……それ、本当なの?」


イーリスの言葉を聞いたフィーリアは眉を顰めながら尋ねる。


「彼が聞いていました。

 そうだな?」


フィーリアの問いにイーリスは即座に担当の通信官を見て答える。


「はい、確かにASが空を飛んでいたそうです。

 同じようにイーグル1と4も似たような言葉を」


「ASの飛行用装備を反統合の連中も開発した……?

 でも、ディメンションクォーツは統合政府がすべて改修したはずだな?」


「はい、wormの残骸から得られたディメンションクォーツはすべて新統合軍が回収したと記録にはあります」


「ま、とにかく考えてもしょうがない。

 戦闘部隊に連絡、敵はASの飛行を可能にした可能性が高いと。

 良いですね、司令?」


フィーリアは背後を仰ぎ見る。

そこには一人の男性が司令官席に座っていた。


「ここの戦闘指揮官は君だ、好きにしろ」


「了解です、ランドグリフ少将」


男性――――『ラーズ=ランドグリフ』ラングレー基地司令――――にそう答え、フィーリアは通信機を手に取った。









「はぁ!?

 ASが空を飛ぶ!?」


『えぇ、今フィーリア少佐から直接連絡が来たの。

 そろそろそっちにも連絡がいくと思うけど……』


レイヴンのコックピットの中でタクヤはレギオスに乗ったアスカからの通信を聞き驚いていた。

それもそうだろう、先ほどまで彼らは現在空を飛べるASはアスカの乗るレギオスだけだと思っていたからだ。


『こちらCP(コマンドポスト)、戦闘部隊全員に告ぐ。

 敵機の構成はF-39『スワロー』、及びAZ-004『クルエイド』の模様。

 尚、敵ASは飛行用装備を装着している。

 各員は速やかにデータの確認を』


「話をすれば、だな。

 アスカ、フロートユニットの方は?」


基地管制からの連絡を受け取ったタクヤは指示通り、リースにデータの確認をさせ、自分はアスカに気になっていたことを尋ねた。


『まだOSのセッティングが終了してない。

 後五分はかかる』


「そうか、なら機付長たちにも急がせろ。

 やっこさんが来やがった」


タクヤはレイヴンのレーダーに複数の機影を確認するとアスカとの通信を切り頭のスイッチを切り替えた。


「リーン、敵の数は?」


『F-39、十機。

 AZ-002、四機』


リーンからの報告を聞いていたタクヤはパイロットスーツのヘルメットのバイザーを下ろす。

そのすぐ隣でラングレー基地に配備されていたASR-001『クロノス』が肩に装備された『120㎜低反動砲』の照準をつけていた。


『ASR-001 クロノス』は新統合軍初の実戦配備された陸戦用凡庸型ASだ。

その機体は拡張性に優れ、パイロットの腕次第では砲撃戦から格闘戦までをこなすことのできる傑作機だった。

だが、現実に近、中、遠距離のどれもが得意なパイロットなどは存在しない。

だから新統合軍は機体のユニット化を行い、パイロットの特性に合わせた装備の変更を可能とした。

さらに、この各部のユニット化は破損機体の修理の効率アップにも貢献し今後もこの方法でASが製造されることとなった。


『こちらセイバー1、敵機を視認。

 これより攻撃を開始する!!』


そんな彼らの上空を今度は六機編隊のF-49『セイバーイーグル』が通過していく。

その機体の白色は太陽の光を反射し銀色にも見えた。


『セイバー1、fox2!!』


六機のF-45から十二発のミサイルが発射される。

目標へ迫るミサイルだったが、F-39の前面に出てきたクルエイドが両腕に装備したアサルトマシンガンによってすべて撃ち落とされてしまう。


『散開!各個に応戦せよ!!』


『『『『『了解!!』』』』』


一番機からの指示に従い五機のF-45は散開する。

そのあとを十機のF-39が追いすがるが、その内の一機がクロノスの120㎜低反動砲によって撃ち抜かれ撃墜される。


「行くぞ、リーン。

 照準を頼む」


『了解』


タクヤもレイヴンのスロットルを踏み締め機体を加速させ右手に持ったアサルトライフルの射程にクルエイドを捉える。


『ターゲットロックッ!』


「行けッ!」


照準のカーソルがクルエイドに重なると同時にタクヤはトリガーを引き絞った。

トリガーと連動しアサルトライフルから三連射で放たれた弾丸は迷わずにクルエイドへと向かっていった。


「何?」


だが、放たれた弾丸をクルエイドは横への急加速で回避した。

その動きを見たタクヤは怪訝な表情を浮かべる。


横への急加速。

文字にすると簡単なことだが、実際にはこの動きは不可能に近い。

横からのGによって機体は無事でも中に乗るパイロットが無事では済まないのだ。

最悪、戦闘中にも関わらず意識が飛んでしまう可能性も否定できない。


特にタクヤは依然FR-15に乗っていたため、Gの恐怖はよく知っていた。


『三時の方向から敵機』


「ッ!!」


リースからの警告を耳にしたタクヤは操縦桿を引き機体を後ろ向きにブーストさせる。

その瞬間、レイヴンのコックピットがあった位置に右から接近していたクルエイドのアサルトブレードが横薙ぎに振るわれた。

ギャリギャリと装甲が削られる嫌な音を耳にしながらタクヤはレイヴンの手首からナイフを射出し右手に持たせ肉薄していたクルエイドを切りつける。

右手に握られたナイフはクルエイドに触れる瞬間、刃の部分が高周波振動を起こしその切断力を大幅に上げた。


振るわれたナイフはクルエイドの左腕に装備された小盾スモールシールドをバターのようにいとも簡単に切り裂いた。


盾を切り裂かれたクルエイドはすぐさま上空に逃れ左手に持ったアサルトライフルをレイヴンに向け発射する。


「クッ!」


タクヤはレイヴンの両腕を交差させ、機体の脳である頭部とコックピットのある胸部を庇う。

狙いが定まっていなかったため、致命傷を受けることはなくカンカンと装甲に阻まれて弾丸が弾かれる音が響いた。

だが、その隙にレイヴンの脇をすり抜けて一機のクルエイドが格納庫へと直進して行った。


「しまったッ!」


クルエイドの前に一機のクロノスが立ちふさがるが、一瞬で胸部をアサルトブレードで両断され爆散する。


「アスカッ!

 すぐにそこから――――」


タクヤは未だ格納庫にいるであろうアスカに離れろと通信で叫ぼうとするが、その言葉は格納庫に向かったクルエイドの右腕が撃ち抜かれたのを見て口から出ることはなかった。


『何か言った?』


「いや――――」


そして、格納庫から飛び上がった蒼い機体――――『ASX-001β レギオス』――――を見て笑みを浮かべる。


「――――遅いんだよ、まったく」


『ゴメン、少しOSの調整に手間取った。

 ここからは全力で行く……!』


アスカは通信越しにそう告げ、その言葉と同時にレギオスは両手にプラズマソードを展開する。

このプラズマソードは高周波振動ナイフの出力を上げることによってさらに切断力と威力を上げることが可能な近接戦闘用武装だ。

しかし、威力と切断力が上がる半面、基の金属部分が耐え切れなくなるために使用時間は三分と制限されている。


フロートユニットを作動させ、浮き上がるレギオス。

そして、一気にトップスピードまで加速する。


先ほどのクルエイドと違い、レギオスに装備されているフロートユニット、正確にはその材質であるディメンションクォーツにはGを吸収し、徐々に還元するという働きがある。

つまり、先ほどのように急加速急停止を始めとした不規則なスピード変化にパイロットが耐えられると言う事だ。

だが、このディメンションクォーツにも許容量キャパシティと言うものがあり、それを超過するGを加えられると、その効力を失い、溜めこんでいたGのすべてを一気に解放してしまうとうデメリットもある。



トップスピードに乗ったレギオスは先ほど右腕を失ったクルエイドに接近するが、その間にもう一機のクルエイドがアサルトブレードを構え割り込んだ。

アスカは気にせずスロットルを上げ、二本のプラズマソードで斬りつける。

切りつけられたアサルトブレードは全く歯が立たずアサルトブレードを保持していた右腕ごと両断された。



「リーン、プラズマフィールド最大出力で展開しろ」


『了解、プラズマフィールド、最大出力』


一方、タクヤはリーンに命じてレイヴンに装備されているプラズマフィールドを最大で発動させた。

機体の周囲に展開された電磁力場はレイヴンの機体も浮き上がらせる。


「プラズマフィールド、バンカーに固定ッ!」


『形状定型。プラズマバンカー展開完了』


「GO!」


右腕に青白い光が収束し、一つの杭を形成する。

そして、レイヴンは空中に留まっていたクルエイドを捉え、機体を発射(・・)させた。

弾丸と同程度の速度で撃ち出されたレイヴンに気付いたクルエイドは回避運動に入るが、加速されているレイヴンにとっては遅すぎた(・・・・)


「全力で、撃ち抜く!」


『ターゲットロック。 

 プラズマバンカー、発射』


レイヴンは右腕を突き出す。

紙一重で直撃を避けたクルエイドだったが、吹き荒れるプラズマの嵐と余波によって、機体の右半身を破壊される。

そのクルエイドは機体を半損しながらも他のクルエイドと共にラングレーを撤退していく。


「最後、照準がずれたな」


『プラズマフィールドによる重力変化のためと推測。

 誤差を修正の確認をお願いします』


「あぁ、お疲れさま。

 アスカ、大丈夫だったか?」


クルエイドとF-39が去っていった方角を見ながらタクヤは尋ねる。


『伊達に遅く出撃はしてないから大丈夫。

 因みに機付長たちも避難している』


「そうか、分かった」


タクヤはアスカからの報告を聞き、胸をなでおろしながら通信を切った。


(今日の戦闘はまだ序の口……。

 連中との戦いはまだまだ続く……か)



















これは一つの戦乱を生き抜いた一人の人型機動兵器のお話。


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