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第一話

◆???side◆




暗い……。




何も見えない……。



……そうか…俺は今、瞼を閉じているんだ…。


いくら開けようとしても瞼がくっついたみたいに全然開かない…ついでに言うと、体もいうことをきいてくれない…。


感覚的には仰向けで寝かされてることが分かる…。


目も開けず、身動きひとつできないのに、不思議と恐怖は感じない…それどころか俺は自分がとても落ち着いてるのが分かる…。



「・・・・・・・」


「・・・・・・・」


不意に体の上から声が聞こえた。


何か話してるみたいだけど、なんて言ってるかは分からない。


声は聞こえるのに、いつも通り、その内容を理解することが出来ない…気持ち悪い感覚だな…。


だけど、この声は俺にとって、何故だか懐かしく感じられる声で…それと同時に、何故だか…寂しさを感じさせる声だ。


声を聞いていると、不意に、胸に微かな重みを感じ…俺は自分の胸に何かが触れたのが分かった。


それはとても温かくて、触れられているととても心地いいもので…ずっと触れていて欲しい…なんてバカなことを思う程だ。



「・・・・・・・」



また声が聞こえた…。


そしてその声が聞こえた直後、胸に触れているモノから…俺の中に何か温かいものが流れてきた。


それはまるで、今胸に触れている温かいモノが…そのまま俺の体に入ってきているような…不思議な感覚で…。


「・・・・・・」


また声が聞こえた…その直後、先程まで感じていた微かな重みが消えて、俺の胸に触れていたモノが離れたことが分かった。


そして…それを少し寂しく感じる俺が居た。


だが、それと同時に俺の体の中には先程の不思議な感覚がまだあるのが分かり、それを少し嬉しく感じる俺も居た。


そして、その感覚を意識した瞬間俺はふと、自分の意識が薄れて行くのが分かった。


それはまるで眠るように心地よくて、俺はそれに従うように意識を…



「・・・・・・」


また……声が…聞こえ…


「・・・・・竜矢」


え?…俺…なま…え?


意識を…手放した。





◆◇◆◇◆◇◆◇




「リョウ・・・おきて・・・」


また…誰かの声が聞こえる…



「リョウってば・・・リョウ・・・」


その声は、俺はとても聞き慣れていて…何故だか…ひどく身の危険を感じさせる声で…


……え?身の危険?


「もう・・・リョウ!」


ドゴッ!!


「~~~~~!!」


腹部への激しい衝撃とともに、微睡みかけている意識がマッハで覚醒して・・・マッハで薄れていきそうになる。


(あぁ…俺…もう、ムリぽ)


そんな思いを最後に俺は意識が薄れて・・・


「早く起きて、よ!!」


ドゴン!!


「ぶほ!」


二度目の腹部への衝撃によってつなぎ止められた。


(ぐぉ~~~~~!!)


「あ、や~っと起きたね、おはよ!リョウ!」


俺は気絶することすら許されない程の痛みに悶えながら、ベッドの側で両手を腰にあてて呆れたような顔をしながら俺を見下ろしている少女を睨みつける。


「おはよ!じゃねーだろ夢菜!その起こし方はやめろって言ってるだろ!!毎度毎度お前みたいな馬鹿力の拳を喰らってたら、俺はそのうち三途の川を渡っちまうぞ!?」


そう言いながら、未だに痛みの残る腹を押さえて上半身を起こす。そんな俺に対して夢菜は・・・


「大丈夫だよ!あたしのこの力の半分は優しさ、半分はリョウへの愛でできてるから!」

・・・と言って悪戯っ子のような笑みを浮かべる。


「意味分からんわ…それにお前の力はそんなバファ〇ンみたいなもんじゃなくて、半分は日頃のストレス、半分は俺への嫌がらせでできてるだろ!」


「むぅ~なによ、大体リョウが起きないのが悪いんじゃない」


「う……まぁ、それはそうだが…」


拗ねたような表情かおをしながら言われたことは正論なので、反論なんてできずに俺は言葉に詰まる。


夢菜は俺の言葉が詰まったことがわかり、勝ち誇ったような表情をしながら・・・


「ふふ~ん、さっきみたいな起こし方をされるのが嫌なら、これからは早く起きれるよう頑張ってね~!」


「ぐぐ…」


そう言って反論できない俺をしり目に、夢菜は部屋のドアへと向かい、ドアノブに手を掛けたところでコッチを向いて・・・


「あ、朝ご飯もうすぐできるから早く着替えて来てね」


そう言い残して部屋を出て行った。


「はぁ~~~…嵐が去った…」


残された俺は溜め息を一つついて、着替えるためにベッドからおりた。


「まったく、夢菜の奴め…」


そう愚痴りながら着替える俺は、先程までみていた夢など欠片も覚えていなかった。




※※※※※※※※




◆???サイド◆改め…◆竜矢サイド◆




・・・あとは学ランを着て・・・と。


「よし」


着替え完了…いや~まじ制服が学ランでよかったわ~…ブレザーとかネクタイとか堅苦しいイメージしか無いからな~…偏見だけど。


さて、授業の用意は昨日のうちにやっといたから万事オーケーだな。


「じゃあ下に行くか」


呟くと俺は鞄を持って部屋を出た。




※※※※※※※※※



ガチャ


「はよう」


リビングのドアを開けながら微妙に略した挨拶をする。


すると、制服の上に白いエプロンを着た少女がコッチを向いて挨拶を返してくれる。


「おはよう、リョウ君」


「ああ。おはよう、夢乃」


さっきとは違いしっかりとした挨拶をする。


このエプロン着た少女は、『神野かんの夢乃ゆの』、少し幼く見えるが整った顔立ちに、白くて綺麗な肌。髪は日当たりによっては茶色に見える明るめの黒髪を腰辺りまで伸ばしていて、街を歩けば10人中7、8人は振り返る程の(というか実際振り返ってた)美少女だ。


「朝ご飯もうすぐできるからね」


「ああわかった」


ソファーに鞄を放り投げ、いつも座っている椅子に腰を下ろしながら返事をする。


「ふぅ~~」


朝から夢菜の相手をして疲れていたのか、椅子に就くと思わずため息が出た。


「朝からため息なんて・・・夢菜ちゃん?」


「ああ。いい加減あの起こし方はどうにかしてほしいよ」


テンションの低い俺の言葉に夢乃は料理する手を止めずに苦笑する。


「私から言っても、『夢乃ちゃんはリョウに甘いよ!』なんて言って聞いてもらえないから…やっぱり叩かれるより前に起きるしかないんじゃないかな…」


あれは叩くというより殴るのレベルなんだが…。


「夢菜にも同じこと言われたよ。2人の言うとおりなんだけどな~…」


俺目覚ましで起きれない人種なんだよな。


そんなことを考えているとリビングのドアが開き、話題の原因が入ってきた。


「あ、リョウ、改めておはよ!」


「ああ。おはよ、夢菜」


この嵐のような少女は『神野かんの夢菜ゆな』。夢乃と瓜二つの容姿だが、こちらは髪が首辺りまでのショートで、夢乃より活発そうな印象がある。


あ、あと名前で分かるだろうけど、夢乃と夢菜は双子の姉妹だ。一応夢菜が妹らしいが、2人は互いに名前にちゃん付けで呼び合っていて、あまり姉だとか妹だとかは気にしていない。


「夢乃ちゃん、朝ご飯まだ~?」


夢菜も椅子に座ってそわそわしてる。夢乃の作る飯は美味いからな~


「これで…火を止めて…と、よし、今できたよ!」


「あ、食器出すの手伝うよ」


「あ、ありがと、リョウ君」


「ん、別にいいよ、このくらい」


んで、さっきからリョウだとかリョウ君とか言われてんのが俺、『小守おもり竜矢りょうや』、両親は俺が生まれてすぐ死んで、俺は親戚である神野家に引き取られた。


そのおかげで夢乃達とは兄弟のような関係だ…同い年だけど。


顔は…親友曰わく『中の上だな。高校の3年間で2回は告白されて、3回目があるかどうかぐらい…あ、もちろん普通の学校生活を送っていると仮定してな』…らしい…仮定ってなんだ仮定って。



「これで全部か?」


「うん、ありがとう!じゃあ装っちゃうね!」


「ああ」




「「「いただきます(!)」」」


最後に夢乃が席に就いて食事が始まる。


「うん!今日も凄く美味しいよ!!夢乃ちゃん!」


「ああ、ほんと夢乃は料理上手いな」


「えへへ、2人ともありがとう!」


今の会話のとおり夢乃は料理が凄く上手くて、神野家の料理係となっている。その他の家事が主に俺と夢菜の仕事だ。


今日のメニューの鮭の焼き加減や味噌汁の濃さ、どれをとっても素晴らしく、そこらの主婦にも引けを取らない。


「夢乃はいい嫁になれるよな…」


本心からの言葉だ。


「もう、リョウ君てば…」


夢乃は照れてるけど嬉しそうに笑っている。


「むぅ~…私は夢乃ちゃんとずっと一緒に居たいな~」


「そいつは難しいぞ?」


「よし決めた!」


スルーですか…


「夢乃ちゃんが私のお嫁さんになればいいんだ!」


「ええ!?」


突拍子もない夢菜の言葉に驚く夢乃。たくコイツは…


「大丈夫!私はリョウと違って甲斐性もあるし、浮気なんてしないから!!」


おいコラ、ちょっと待て。


「それは俺が甲斐性なしだと言ってるのか?」


「え?違うの?」


コイツ・・・


「え、え~と…でも私達姉妹だよ?」


夢乃も真面目に答えなくてもいいのに。


「大丈夫!」


「凄い自信だな…」


「成せば成る!」


根性論でした本当にありがとうございました。




「そういや真由子まゆこさんと健也けんやさんは?今日も学校?」


「うん…これからは月1ぐらいで帰るって…」


「ほんと…お母さんてば滅茶苦茶なんだから…」


真由子さんと健也さんは夢乃達姉妹の親で、真由子さんは俺達が通ってる高校の理事長で、健也さんは校医をやっている。


健也さんは優しくてとても良い人なんだが、真由子さんは滅茶苦茶を絵に描いたような人だ。


どれくらいかと言うと、今俺達が住んでいる自宅から学校までの行き帰りが面倒くさいと(車で往復15分)、高校の寮で寝泊まりしている。


幸い寮生が極端に少ないのと、しっかり者の健也さんが一緒にいるから(ちなみに健也さんは真由子さんが一人だと不安だからと一緒に寮生活している)今まで問題になるような行動は起こっていない(理事長が学生寮で生活しているということが既に問題かもしれないが)。


「自分が買ったこの家だって広くて家電製品とかも高級品なのに…なにが不満なんだろ?」


「学校から片道5分以上かかるとこが・・・だろ?」


「「「・・・・・」」」


「「「はぁ~~~」」」


ため息の後俺達は食べることに集中した。



※※※※※※※※




「「「ごちそうさま(!)」」」


真由子さんについて話した後はなんとなく会話がなくなり黙々と食べ続けた。


「夢乃ちゃん、美味しかったよ!」


「ふふ、ありがと」


夢菜の言葉に嬉しそうに答える夢乃。夢菜が満面の笑顔で褒めてくれるから嬉しさも倍増だろう。


「晩御飯もよろしくね!」


「気が早いな」

今から晩御飯のことを気にするか…


「別にいいじゃな~い」


「ふふ、うん!任せて!」


夢菜の言葉に律儀に答える夢乃…ホントにええ子や…夢菜とは違って…


ゲシ!


とか思ってたら夢菜に足を蹴られた。


「イテ!何すんだ夢菜!」


「べっつに~…リョウが何かアタシに失礼なこと考えてる気がしたから」


そう言って顔を背ける夢菜。当たりだちくしょう、そして『気がした』で人を蹴るな。夢乃が苦笑してるだろ。


「じゃあ、食器片付け…」


「あ、いいよ、あとは俺の仕事だろ」


食器を片付けようとした夢乃に声をかける。


「あ、そうだったね」


夢乃が思い出して苦笑する。二人は食事のあと化粧やらなんやらで少しばかり忙しくなるので、朝飯の後片付けは俺がやることになっている。


「じゃあ、お願いね、リョウ君」


「お願いね~!」


「おう」


二人がリビングを出て行くのをなんとなく見届けて片付けを始める。




「あ、そうだ天気予報」


片付けが終わり麦茶を飲んでいたとき、まだ毎朝の日課が残っていたのに気づき、テレビを付ける。




「晴れ…か、まぁそうだよな」


窓から外を見ると雲一つない晴天だ、天気予報など見なくても大丈夫だった気もするが…まぁ日課だ。


二人を待つのも暇なのでチャンネルを適当に回し…なんとなく星座占いがやっているチャンネルでリモコンを動かす手を止めた。


占いは信じない方だけど、まあ暇潰しだ。


テレビ画面ではそのテレビ局だか番組だかのマスコットキャラクターが、誰が占ったかも分からないそれぞれの星座の運勢を紹介している。


しばらくボーっと画面を見ていると、今日一番良い運勢の星座と、その逆の星座の紹介だけが残った。


俺は蟹座だけど、まだ蟹座がどうこうとは言われていない。


つまり一位か最下位ってことか…。


ふとそんなことを考えていると、テレビ画面ではキャラクター達が変な踊りをして焦らした後…



『今日一番運勢が良いのは、山羊座のあなた!!自分の思ったとおりに行動すれば何事も上手くいくかも!積極的な行動を心掛けよう!!あ、あと蛇の抜け殻を身につければ向かうところ敵なし!な1日になるでしょう!!』


・・・最近のラッキーアイテムは奇抜だな…蛇の抜け殻とか…。


…んなことより、一位が山羊座ってことは…


『そして~…最下位は…残念!蟹座のあなた…最悪の目覚めと共に、今日は疲れっぱなしの1日になるかも!親切な行動が自分の首を絞めることになるので、自分の行動に気を配ろう!ビー玉を持っていると、危機を乗り越えられるかも!!頑張って!!』


・・・・・・。


はっ!つい見入ってしまった!…占いは信じない方だけど…微妙に当たってるのが気になるな…ビー玉…どっかにあったっけ?…


※※※※※※※※



「「お待たせ(~!)」」


「おう」


部屋にビー玉を探しに行きそうになり、たかが占いだと思いとどまった後、適当にテレビを見て過ごしていると、しばらくして二人が入って来た。


「んじゃあ行くか」


「忘れ物はないよね?」


夢乃が確認のためか聞いてくる。


「大丈夫大丈夫。昨日のうちに準備しといたから」


それに自信満々に答えながら玄関に向かい、スニーカーを履く。


二人がローファーを履くのを待って玄関を開ける。うん、いい天気だ。

じゃあ…


「「「いってきま(~)す(!)」」」


誰も居なくなる家にいつもの声をかけ、夢乃が鍵を閉めてポストにいれた後、3人並んで学校への道を歩き始めた。

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