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第十七話

魔法が…

◆竜矢side◆




「なるほどな…やられそうになった時、リョウの手が炎を…」


「その後手には紅いグローブがハマって…」



話を終えると、ロイルさんとトモは手を顎に当て、ぶつぶつと呟きながら考え込んでいた。


さすが親子…仕草が同じだ。


「おし!大体事情は理解した!」


同じ動作の二人に内心若干引いていると、ロイルさんが顔を上げた。…この眩しい笑顔を見る限り…本当に理解してくれたみたいだ…


「それなら…良かったですよ」


説明がうまくいってホッと息を吐く。あの時の記憶は少し朧気で話しが要領を得ない部分もあったから、理解してもらえるか不安だったけど…良かった…


「それで…聞きたいことがあるんすけど…」


話は理解してもらえたので早速疑問を解消しようと口を開くと…


「ああ…何でなにも知らなかった自分が魔法を使えたのか?…だな?」


「はい…そうです」


ロイルさんに言葉を取られた。…まあ…やっぱり分かってたか…いや当たり前か…魔法の魔の字も知らなかったのに使えた…普通なら一番に浮上する疑問か…


「…そりゃあきっと、ミリアと魔物が出していた魔力の影響だろ」


「魔力の影響…ですか…?」


「ああ、ソイツらリョウの目の前で魔法を使ってただろ?」


魔法…そう言われて思い当たるのは、ミリアと化け物…魔物って呼ばれてたな…が闘っていた時に飛び交っていた火の玉と…ミリアが防御に出した火の壁…


「はい」


「まあ厳密に言うと魔物のは魔法ではないんだがな。…おそらく、普段絶対感じることの無かった魔力…それも、戦闘中の強く張り詰めた魔力に刺激されて、その上死の直前まで追い詰められた…それのせいでリョウの体の奥底に眠っていた魔力が引っ張り出されちまったんだ」


「…なるほど」


確かに…言われてみれば…あの時途中から体が熱くなってた気がする…てっきりミリアがやられてキレたからだと思ってたけど…あれは…俺の魔力が呼び起こされたからだったのか…?


そう考えていたら、俺と一緒に黙って話を聞いていたトモが顔を上げた。


…?…何か、トモやけに真面目な表情をしてるな…


「…でも親父…それだけじゃ…」


「トモ…!」


…何だ?


真面目な表情のまま何か言いかけたトモを、こちらもまた真面目な表情のロイルさんが遮った。


「説明なら俺だけで出来っから、お前はリョウと一緒に聞いてろ…な?」


「…っ…ああ」


…なんかよく分からんけど…二人の問題…か…?


「どうしたんだよ、トモ」


「いや、何でもねぇ…少しでしゃばっちまった」


「…そうか」


いやその表情は気になるんだが…まあ…トモがそう言うんなら…気にしなくてもいいか…?


俺が関係してるんなら、俺に話すだろうしな…


「説明続けていいか~?」


「あ、はい、お願いします」


っと…今はしっかり聞いておくか。


「おう…それでな、さっきの話でもう一つ分かったことがあんだ」


「…?どんなことですか?」


聞いてみると、ロイルさんはまるで珍しい雑学を知って、その知識を自慢気に周りに話そうとする子供みたいな笑みを浮かべた。


「…驚くなよ?分かったのは…リョウ…お前の持つ魔力の『属性』だ」


「え…本当っすか!?」


「ああ、もうほぼ検討がついた」


ロイルさんの言葉にわずかに緊張が高まる…それと同時に、今の俺の話だけで属性が分かるのか…やっぱ魔法っていう文化が根付いているんだな…と改めて感心する。


「…で、何の属性ですか?…火ですか?」


気になったので早速聞いてみる。俺は俺の体験…『火を吸収して纏った』ということから『火属性』と予想した。


「いや、ちげえ」


うん、あっさり否定された。じゃあもう分からん。「何なんですか?」…そう聞こうと口を開きかけると、ロイルさんに手で制された。


「話すより、実際使ってみた方がいいだろ?習うよりナントカ…ってやつだ」


「…はあ」


でも…属性が分かってないと事象のイメージが…


そう思っていたのが顔に出てたのか、そこにいつもの雰囲気に戻ったトモが口を出した。


「んな顔すんなリョウ。大丈夫だよ、属性が分かんねぇヤツでも魔力さえあれば出来る見分け方があっから」


「そうなんか…?」

「ああ」


「そうそう、俺はまだあくまで検討がついただけだからな。リョウが自分でしっかり見分けねぇと」


「そうですか…分かりました」


「よし!じゃあ早速やろうぜ!」


「おう!それじゃあロイルさん…お願いします!」


嬉しそうなトモに言葉を返してロイルさんに頭を下げる。教えてもらうんだから…礼儀はしっかりしないとな…


「任せとけ!それじゃあまずリョウは…」





※※※※※※※※※





「…っと、まあこんなところだな…始めるか…」


「リョウ、手順大丈夫か?」


「おう…何とか大丈夫だ」



あの後更にロイルさんから魔法を使うまでの説明を受けた。ロイルさんはずっと話してたからなのか、微かに表情が疲れの色を帯びている。


…俺のために、申し訳ないぜ…


「心の準備はいいか?」


「あ、はい…」


ロイルさんの言葉に、意識をこれからのことに切り替える…今からやるかと思うと自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる…これがどんな感情からくる緊張なのか、俺にもよく分からない…けど…


「よし、じゃあ…やってみろ」


「…はい」



この緊張が…嫌じゃない…そんな俺がいる。


ロイルさんの言葉に頷き、二人に背を向け、部屋の中央へと歩み出す。



…魔法…か…まさにレンバルに来た『ばかり』の俺にはまだよく分からない力だけど…その力で…ミリアを守れた…


そしてこれからは…アイツらの力になれる…それだけで、その力を使う充分過ぎる理由になる…だから覚える…魔法を…アイツらと共に闘える力を…



よっしゃ…魔法を覚えたらトモに改めて言ってやるか…「これからもよろしく」ぐらいはな…



「お~いリョウ!部屋には結界があっから、失敗して暴発しても吹っ飛ぶのはお前だけだからな!リラックスして大丈夫だぞ~!」



…あと、一発の拳も添えるか。


そう決心すると同時、俺は中央に立った。



「………………」



ロイルさんから教わった手順を一回軽く脳内で再生する…


…大丈夫だ…やれる…!


手順を確認して、内心で強く自分を奮い立たせる。

そして鳴り止まない心音を落ち着けるために深呼吸を一回…




…よし…やるか…!





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