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第十五話

◆竜矢side◆




「いや、さっきはすまんかったな!がははは…」


「全く…あなたったら直ぐに羽目を外すんだから…ふふ」


「はぁ…」


あの後直ぐに二人は戻ってきて、リビングに通された。


男性の顔から赤みが消えて逆に青みがさしていたのは気のせいだろう。


「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私の名前はアリビア=イウダレイ。トモの母親です。息子と仲良くして下さって有難うございます」


「い…いや、どうもご丁寧に」


大和撫子…もといアリビアさんが頭を下げたのにつられて頭を下げる。


それにしても……若い…容姿なら二十代半ばで充分通るぞ…この人。


「俺はロイル=イウダレイだ。まあ分かってるだろうが、ソイツの父親だ。いつも世話んなってるな。」


「いや、まったく」


「おい!少しは謙虚になれよ!」


トモの言葉はスルー。


ロイルさんは180後半ぐらいの身長にがっしりとした大柄な人で、髪は黒かと思っていたが、よく見るとうっすら紺色に見える。


「もうトモから聞いてるみたいですけど、俺は小守竜矢。こっちふうに言うならリョウヤ=オモリですかね。それで、トモの一番の親友です」


少し照れくさいけど…そう思ってる事は知っていてほしいからな。


「おいリョウ、そんな当たり前の事言うなよ!」


「いて」


肩を叩かれた。


「ふふ…本当に良い親友同士ね」


「だな!面と向かって息子が一番の親友と言ってもらえるとはな!!」


そう言って笑う二人は、本当に嬉しそうな表情を浮かべていた。




※※※※※※※※




自己紹介が終わった後、今度はレンバルの地理を教えると言われ、今俺の目の前にはレンバルの世界地図が広げられている。


「…それで、ここが私達の暮らしている国、ロウヴェール王国です。四季の移り変わりはありますが、一年を通して気温は少し低めですね」


そう言ってアリビアさんが指差したのは、世界地図の真ん中に大きく描かれた五角形に近い形の大陸の右上の辺りだ。


「今この世界には五つの大国と、十五程の国があり、それぞれの大国にはいくつかの都市が置かれて成り立っています。一番北の雪国アモラド…ロウヴェールと変わらない気候のケイムロワ…火山が多く、温暖なムヌトォブ…最後、ムヌトォブと似た気候のリーアス…そして大陸の中央に位置する最大の山…ドグリア山です」


言いながらアリビアさんは指を一番上、左上、左下、右下へと移し、最後に中央へと動かした。


「レンバルには、国は二十ぐらいしかないんですか…」


正直、地球と比べるとメチャクチャ少なく感じるな…


「いや、本当は今の五倍ぐらいはあったんだぜ?」


「え?」


「だから、本当に少し前まではこの大陸には百以上の国があってな、最初に言った五つの国はそれなりに大国だったが、今ぐらいデカかったわけじゃねえんだよ」


「え、じゃあ何で…」


「…魔王だよ」


「!」


魔王…真由子さんの話にあった…二人が倒したって言う…


「魔王は元々、ドグリア山近くにあった魔族の国の王だったんだ…ああ、魔族ってのは、先天的に魔獣の血を多く引いている種族の事だ…ちなみにレンバルには他にも獣人や竜人…たくさんの種族がいるぞ」


「へぇ」


本当にファンタジーだな…見てみてぇな…


「話を戻すか…その魔王は本当に素晴らしい奴でな…魔獣の血を引いているっていうことで、他の種族から一歩引かれている種族の代表として、他種族に歩み寄れるように…歩み寄ってもらえるように…文化交流や魔法の共同研究…貿易…一生懸命努力していた…そしてその甲斐もあってか、他種族は魔族に対しても友好的になったんだ」


「…凄い」


他から孤立しているという場所から始まって、友好関係を築く…そんなこと、並大抵の苦労じゃないだろう。


「ああ、本当に凄い。為政者としても、魔族としても立派だった…立派だったてえのに…トチ狂っちまいやがった」


…え?


「ある日突然…魔王は魔獣の軍勢を率いて…自分の国を潰し…近隣の小国を潰し始めたんだ」


「…なんで…そんな…」


「…理由は未だに誰にもわからねえ…憶測がいくつも流れてるだけだ…」


「とにかく…それから魔王は沢山の国を潰して…沢山の人を殺した…魔王の力は強く、討伐に向かった者は誰一人として戻ってこない…レンバルは恐怖に支配された」


「そして…遂に当時も大国だったケイムロワさえも潰されそうになった時…あの二人が現れたんだ…」


「あの、二人…」


「アイツらは強かった…僅か三ヶ月ばかりの訓練で…それまで誰も歯が立たなかった魔王を倒しちまったんだ…もっとも…アイツらの強大な魔法の力だからこそ、三ヶ月で出来たことだけどな…」


そう言って苦笑したロイルさんには…何故か先ほどの真由子さんと同じ雰囲気を感じた。



「ま、そうして魔王を倒した二人はその後無事にチキュウへと帰っていった訳だ!…とこれが教科書にも載ってる『レンバル大戦』の概要だ」


「…へぇ」


魔王の凄さも分かった…二人の凄さも分かった…けど一つだけ疑問に思う。






なんで魔王は…急におかしくなったんだ…?


全てにおいて立派だった魔王が突如として始めた理由の分からない国潰し……


大きな謎が残る大事件だったんだな…


「親父、親父」


と、ここでトモが口を挟んだ。


「あん?何だ?」


「話ずれてねえ?元々国の数がどうこうだったよな?」


「「あ…」」


そうだ…話を聞くのに夢中になってすっかり忘れていた…そもそも俺が国の数が少ないとか言い出したんだっけ…


「ゲフン…そうだったな…あ~だから…大戦のせいで小国は廃れたり、治安が悪くなったりしてな…それぞれが大国に支配されることによって国を立て直したんだ。まあ、その時少しでも力のあった国は支配されることを拒んだり、今では都市になって大国を支えてるけどな」


「…なるほど」


ほとんどの国が、国として崩壊するより大国の支配下に落ちることを選んだのか…その時の小国の偉い人達はどんな気持ちだったんだろうな…


「と、地理はこれぐらいでいいか…まだ国とか土地とかで知りたいことが出てきたらその時聞け」


「はい」


「…さて…ええと次は………」


ロイルさんはそう言って黙り込んだ。


「…………」


「…………」


「…………?」


「ああ…もういいや…一々考えて話すのめんどくせえ」


「…えぇ~」


まさかそうくるとは思わなかった…トモもため息ついて呆れてるし…


「リョウヤ、お前何か質問しろ、何でもいいから。それに答えていけば楽だからな」


…ロイルさんには…さっき話をしていた時のカッコイい雰囲気は既に微塵もない


「おら、早く質問しろよ質問。何でも良いぞ…俺とアリビアの運命的な出会いから、俺とアリビアの奇跡的な出会いまで、なんでも話してやるぞ?ん?」


……この人はそんなにノロケたいのか?息子を見てみろ…なんか明後日の方向を遠い目で見てるぞ…てかアリビアさんどこ行ったんだ?魔王の話の途中から居なくなってたみたいだけど…


「いや…それとも俺とアリビアが恋人になった経緯とかどうだ?それとも夫婦とか?」


……まだ言ってるよ…


「…じゃあ、一ついいですか?」


このまま放っとくのもアレだし、とりあえず何でも質問していいんなら…


「おう、いいぞ!やっぱり俺とアリビアの新婚の時の様子を聞きたいn…「違います」…チッ…で、何だ?」


わお、舌打ちしたよ


「あ、いや、ちょっと気になったこと何ですけど…」










「その…魔王を倒した二人って…名前は何て言うんですか?」




瞬間…



「「…!」」


ロイルさんと…トモの動きが止まった…

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