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第十一話

……昔々の話…と言っても二十年くらい前だ…


ある所に一組の高校生カップルがいた。


そのカップルは家が隣同士で育った…いわゆる幼なじみでな…男女共に明朗快活、容姿端麗、頭脳明晰と…まさに非の打ち所のないお似合いのカップルだった。


周囲が冷やかしながらも羨望の眼差しで見ていたのを覚えてるよ…


…なんだ?その顔は…言っとくが昔話とは言ってもアタシ達のことじゃないからな…?


…話を戻すか。そして…その日も学校が終わり、カップルがいつも通りに二人で手を繋ぎ、クラスメート達だけでなく担任の先生にも冷やかされながら下校したんだ。


そして、その姿を最後に…カップルは忽然と居なくなった。

…ん?アンタは今日疑問符を出すことが多いな…


だから居なくなったんだよ…行方不明ってやつだ…道路に男の学生鞄だけが落ちていて…手がかりはからっきしだ。


アンタは二人がどうなったんだと思う?


誘拐?言い忘れていたが男は柔道、女は空手の有段者だ。

ちなみに女はコンビニ強盗に遭遇した時、相手がナイフを持っていたにも拘わらず「態度が気に入らない」と全身の関節を外し、購入したイチゴ大福を食べながら警察に引き渡した程の強者だな。


駆け落ち?二人は親公認のカップルだったぞ。特に二人の母親の方は凄く仲が良くてな…両家の冷蔵庫には常にカップルの名前…まぁ母親が勝手に書いたんだけどな…が書かれた婚姻届が貼ってあったぞ。


…もう分からんか…まあそうだろうな…


それで、二人が行方不明になって…半年ぐらいが経ち、警察や自治体の捜索も行き詰まりかけたころだ。


二人がひょっこり姿を現したんだ。


あの時は驚いたな…二人とも行方不明になった時の格好のままで、普通に帰宅してきたんだからな。


周囲は二人にどうしたのかとしつこく追求していたが、二人は共に「下校している時に気が遠くなって、気が付いた時同じ場所で倒れていて半年が経っていた」て言う…まあ記憶の欠如だな…それを主張して、二人を知る周囲はそれを疑ったりしなかったよ。


…ただ、アタシには分かったんだ…二人が嘘をついてるってな。


歳こそ二人より多少上だったが、アタシも二人とは身近にいてね…良く一緒にいたから…二人のいろんな面を知ってたんだよ。


アタシは二人の嘘には気付いてたけど、特に言及はしなかったよ。


心配していた周囲の気持ちを無碍にするような二人じゃないからな…それ程までに言いたくなかったことを言わせようとは思わなかった。


それに何より、どうあれ二人が無事に帰って来たんだ…行方不明になっていた間に何があっても、アタシは特に気にならなかったよ。


ところが、二人はアタシのことをかなり信頼してくれていたみたいでな…

騒動が落ち着いた頃…まあ見つかってから1ヶ月が経った位かな…二人はアタシにだけ…真相を教えてくれたんだよ。




二人はな…『異世界』に『迷い込んでいた』…って言ったんだよ。


…話を聞いた時はアタシも、今のアンタみたいに呆けた顔してただろうね。


だけどアタシは誰かさんとは違って、二人の話を直ぐに信じた…二人の真剣な表情には、嘘は言っていないと表れていたからね。


それからアタシは…向こうはどんな世界なのか…向こうで何をしていたのか…沢山質問したよ。

異世界に行ってたなんて、これ以上好奇心がそそられることはそうはないからね。


そうして分かったことが…その世界…『レンディノバルス』って長ったらしい名前なんだが、その世界の人達は略して『レンバル』って呼ぶんだ。


それでな…レンバルは此処…地球程『科学』が発達してないんだよ。


その代わりにな、こっちじゃ有り得ないような現象があるんだよ…なんだか分かるか…?


………アンタ、その『察しはついてるんですけど微妙に信じられません』て感じの顔やめろ。


…ハァ、ゲームや漫画溢れる現代っ子の癖に、なんでそんなに『未知』に対して積極性がないn……そういや、アンタは…平凡に生きること…が幸せなんだっけな…


アンタが幼稚園の卒園アルバムでの『しょうらいのゆめ』で、『さらりーまんになってふつうにくらす』って書いたときは居たたまれなくなったよ…


…話が脱線したな…


レンバルで発達してるのはな…まあアンタが察している通りだ…『魔法』だよ。


分かっているとは思うが、ミリアもレンバルの人間だ。

だからこそ、何もないところから火を出したり、重傷を一瞬で治したりできた…魔法が使えるからな。


レンバルの人達は魔法が生活の基盤になっているんだ。


ーー詳しくは向こうに着いてから説明を受けろ。



と、まぁ二人はそんな世界に迷い込んだんだ…当然のごとく二人も魔法を使えるようになっていたよ。


その上二人は魔法に関してはレンバルでも類い希なる才能と力量の持ち主だったらしくてな、向こうのお偉いさんだかに、「此方で暮らしていく気はないか?」って聞かれた事もあったらしいぞ…まぁ結局戻ってきたんだ。その答えは言わずもがな…だな。


ただそう言われたのも無理はないだろうな。何せ二人は迷い込んでから三ヶ月くらいで、レンバルでも指折りの魔法使いになったんだからな。


…驚いているみたいだな…まぁアタシもそれには驚いたよ…


そして、それと同時に疑問に思ったこともあった。


二人は僅か三ヶ月で魔法使いとして上り詰めた訳だが、行方不明だったのは半年間…つまり、二人はさらに三ヶ月もレンバルに居たということだ。


この事を聞いた時にアタシはまた驚いたんだが、レンバルでは稀に二人の様に『世界』に迷い込んでくる人達のために、既に此方の『世界』…まぁ地球だな…に移動するための魔法は開発されていたんだ。


だからこそ、此方の世界で心配している人達が居ることを分かっていながら、何故更に三ヶ月もレンバルに留まったのか。


二人の事を親以上に知っていると自負していたからこそ、聞きたかったんだ。


もっとも、その質問の答えは、もう何があっても驚かないと覚悟してたアタシの思いの更に上をいったんだがね。


いいか、二人はレンバルでーーーお、もう神学に着いたね、それじゃあこの話は…


何?そんなに知りたいのか…全く、さっきまでは異世界の存在も信じてなかったのに、そんなに興味津々って顔して…


ああ…分かった分かった、教えるよ。


いいか…二人はレンバルで…








冒険をしていたんだ…魔王を倒すためにな…

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