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第十話

◆竜矢side◆




時計は七時少し前を指している。

何時もならもう夢乃が晩飯を作り終えかけ、俺と夢菜は他の家事が終わっていて、夢乃を手伝ったり部屋でくつろいだりと自由に過ごしている時間だ。


しかし俺は今自分のベッドの上で上体を起こして、緊張に心臓の鼓動を早めながらも、目の前で椅子に座っている真由子さんが口を開くのを待つ。


真由子さんは頷いてから目を閉じ腕組みをして、どう説明するか考えを巡らせているように、そのまま沈黙してしまった。


………………


(……え~…と)


沈黙が場を支配して数十秒…さすがに耐えきれなくなり、俺が口を開こうとしたとき、真由子さんは腕を組んだまま目を開け、口を開いた。


「………まず…リョウ、アンタ…『異世界』って…存在すると思うか?」


「……は?」


あまりに突拍子のない質問に思わず声をあげる。


「だから異世界だよ異世界。アタシ達が今こうして存在する世界とは別の次元にある、もう一つの世界だ」


「いや…いきなりそんなこと言われてm「いいから答えろ」はい!」


真由子さんの強い口調に速攻で頷く。


「え~と、異世界…ですか…」


漫画やゲームでならよく聞くような言葉だけど…現実的に考えれば、それが有り得ないことだと言うことぐらいは分かる。


「存在するとは…とても思えないっすよ…」


「ほう…なぜだ?」


「なぜって…そもそも『別の次元の世界』が存在する…なんて言われて、信じる人いないでしょう?」


それならまだ、この宇宙には他にも人類が存在する星がある、って言われたほうが遥かに信じることができる。


「ふうん…つまりアンタは、異世界なんか存在しないと…そう思っている訳だ」


「まあ…その通りですけど…」


「よし、じゃあその認識は、今この時をもって改めろ」


「……は?」


「つまり、異世界は存在するってことだよ」


……………


ゆっくりと健也さんに顔を向ける。


「…………健也さん…」


「ん?…なんだい?」


「真由子さん…最近仕事頑張り過ぎてましたか?」


「うん、新学期も始まったしね、いつもよりは頑張ってたよ」


「…………」


再び真由子さんを向く


「……真由子さん」


「…なんだ?」


「少し休養をとって…頭を休めた方が…」


バシ!


「いで」


頭を真由子さんに叩かれ、痛みに声を漏らす。


「…アタシはそんなに変なこと言ったか…?」


怖っ!超睨まれてるよ…


「いやいや!だって真面目な顔してんな事言われても…」


真剣な目をして『異世界がある』なんて…そりゃ正気を疑うわ。


「ほう…つまりアタシの言うことも信じられない…と」


「いや…別にそう言う訳じゃなくて…そ、そうだ!証拠とかあるんすか!?その…異世界は存在するって言う証拠とか!!」


すると真由子さんは俺の言った台詞を待っていたかのように、ニヤリという擬音がピッタリな笑顔になった。


「…証拠があれば信じるんだな」


「え、ええ…まぁ信じざるえない証拠があれば…」


「それなら、アンタはもう証拠を見てるじゃないか」


……え?


「もう…見てる…俺が…?」


「アンタは廃工場で気絶する前…現実では有り得ないような…それこそ夢幻とでも思いたいことが起こっただろ?」


「っ!!」


(まさか…)


「は、はい…」


火を吐くバケモノとの対峙…俺の傷を瞬時に治したミリア…


「…まさか…それが…?」


自分の声が震えているのに気づく。


「そうだ、その全てが証拠だよ…」








「リョウ…アンタは…『異世界からこちらの世界』へと渡ってきた者達に遭遇したんだよ」






「マ…マジですか…」


「ああ、大マジだ」


「健也さん…本当なんすか?」


「うん、紛れもない事実だよ」


分かってる…認めないとダメだということは…。


「………………」


俺が出会った…ミリアやバケモノ…それらが存在する理由として一番受け入れることが出来るのは、真由子さんが言った『異世界から渡ってきた』というものだろう。


それで納得しないと、火を吐いたり重傷を一瞬で治したりと、この世界の現象として説明出来ない事実が山積みになってしまう。


しかしその一方、心の片隅では未だに疑う気持ちもある。


これは真由子さん達の仕掛けたドッキリなんじゃないか…いや、ただ単に全部夢だったんじゃないか。


そんな気持ちが俺が全てを認めることを未だに躊躇わせ、自然と黙り込んでしまう。


すると、俺の心情を見抜いたのか、真由子さんは息を一つ吐き…


「ふぅ…まだ信じられんか…それなら…」


とんでもないことを言ってのけた。


「実際に行ってみるか!アンタがしぶとく存在を疑ってる『異世界』に!」


「…………は?」




※※※※※※※※





「え~~~と…?」


今俺は健也さんの運転する車に乗って神学に向かっている。


運転席では健也さんが鼻歌を歌いながら運転して、助手席では真由子さんが


「もっとスピード出して良いんじゃないか?その倍くらい」


と健也さんに危ない事を言ってはやんわりと注意されてる。


でもなんで…異世界に行くって話しになったのに、神学に向かってるんだ?


俺は後部座席に座り、そのことを疑問に思いながらも、さらに疑問に思う事に目を向けた。


「いやぁ、リョウも遂に来る日が来たか~!!」


なんで…トモが俺の隣に座ってるんだ?



~~~~~~~~~~~




異世界…に行くと決まってからの真由子さんの行動は素早かった。


「もう体は平気だろ?根性出せ!!」と言って俺を布団から引きずり出し…


「二人共!ちょっとリョウの状態が軽く悪いから、病院行ってくるわ!留守番とミリアのこと頼んだよ!!」と言って夢菜と夢乃を納得させ(ミリアの顔を見ておきたかったのだが、真由子さんに「今度会うのはアンタが全部知ってからだ」と断られた)…


「悪いが友里那は今日泊まって行け。アンタにもミリアの世話を頼みたい。」と友里那を泊まらせることにしたあと…


「女の子ばっかりじゃ危ないから俺も泊まりますよ!!ムフフ…」と下心丸出しで泊まりを進言してきたトモを…「アンタは一緒に来るんだよ」と首根っこひっつかんで、俺と一緒に車に放り投げた。


ちなみにこの時トモが


「ああ~!俺の一夜限りのハーレムが~!酒池肉林が~!」


と喚いたのでとりあえず拳を入れて黙らせた。



~~~~~~~~~


ハイ、回想終了!そして今に至るわけです。


「おいリョウどうした?ボーッとして」


「いや、ちょっと神と同格の方々に状況の説明をな…」


「は?何言ってんだ?」


おっと、メタ発言メタ発言…話題を変えるか。


「いや、やっぱ何でもない…それより、何でお前が一緒に来るんだ?」


「え!?いや…え~と、それはだな~…」


なんでこんな狼狽えてんだ?こいつ…


急に狼狽えだしたトモをジト目で見ていると、真由子さんの声が聞こえた。


「その理由も向こうに着いたら話すよ。だから少し我慢してな。リョウ」


「そ、そうそう!!我慢してろ!リョウ!」


「はぁ、分かりました…」


「そうだ!素直に大人しくしてろ!」


バシ!


「いて!」


真由子さんの言葉に頷くも、余計なことを言っているトモへの制裁も忘れない。


「と言っても、ただ座ってるだけじゃ暇だろ?そこで、ちょっとした昔話を聞く気はないか?」


「昔話…ですか?」


「ああ、聞いて損は無いと思うぞ」


「はぁ…じゃあお願いします」


本当は異世界のことをもっと聞いてみたかったが、損はしないと言ったし…まあいいか。


「よし、決まりだな。まあすぐ終わるからちゃんと聞いてろよ」


そう言ってから、真由子さんは『昔話』を語り始めた…









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