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メイドさんと僕の日常

僕の家には住み込みのメイドさんが居る。

これがアニメや漫画ならば、ゴシック風な洋服を身に纏う凄く万能なボンキュボンな超絶美人な大人のお姉さんか、思わず萌え~と叫びたくなるドジな超絶可愛いロリっ娘。


「坊っちゃん。そろそろ期末テストがお近いんじゃありませんか?」


土曜日の午後の一時を、刑事ドラマの再放送を見て、有意義に過ごしている僕に、不粋な質問が飛ぶ。諦めが肝心って素晴らしい言葉を知っていますか?僕は無駄な努力はしない主義です。


掃除機を抱えた僕の家のメイドさん。どちらかというと、先に述べた大人なお姉さんに属するのだろうが、普通にそこらの洋服量販店で売っている私服。ボンキュボンと言うよりは、キュボンキュと言う感じで、最近お腹のお肉がお気になる年頃の四十路のお姉…、おばさん。勿論、万能とは言い難い並みの家事の腕である。料理は舌が蕩けるほど上手いと言う訳でもなく、舌が腐るほど不味いと言う訳でも無いし、窓のサッシの塵一つ残さない徹底した掃除なんてしやしないし、ドジッ娘特有の掃除と偽る破壊行為を行う事も無い。


「リビングを掃除したいのですが、宜しいですか?」


今から、タイトルの割には全然はぐれていない純情なおじさん刑事が、犯人にお涙頂戴の説得をする少し良いところなんだ。と、家での立場がこのメイドより低い坊っちゃんが言える筈も無く。僕は泣く泣く、休日を家でゴロゴロと凄くサラリーマンのお父さんが、奥さんに邪魔だと追い払われるように、二階の自室に向かうのでした。



過程は間違っていないのだ。それなのに、解答ではXは5になり、Yは3になる。僕の長き探究の末に至ったXはこの解答の通り。しかし、Yは1となっている。うん、このそこそこ厚い問題集を作るのが人間なら、ひらひらな解答を作るのも人間だ。間違いがないとは言い切れない。そういう事にして、真相は闇に葬ろう。しかし、この問題にも間違いはある。この問題を解けたところで、僕が将来、食塩水の濃度を計算する事があるだろうか?いや、そんな将来は全然想像出来ない。だから、僕がこの問題が解けなくても宜しいのだ。


「坊っちゃん、入りますよ。アラッ、本当に試験勉強をなさってる。珍しい」


ノックをして、僕の応答を聞いてから入りなさいと、偉そうな事は言えない。彼女の両手はポテチとオレンジジュースを載せたお盆で塞がっているからだ。うむ、ご苦労。褒美に試験勉強ではなく、明後日提出の宿題をやっている事は秘密にして、珍しがらせといてやろう。


「坊っちゃん、此所、間違ってますよ」

ご主人様の誤ちを記す極秘ノートを勝手に覗き見る、なっちゃいないメイド。

解答の方が正しい事は分かっていますよ。僕の崇高な頭脳でも解けない問題はあるのです。「坊っちゃん、何故、この途中式の+1は移行されているのに、-1になって無いのですか?」


アッ!そんな罠が仕組まれていたのか。僕とした事がまんまと引っ掛かってしまったぜ。おぉ、Yが遂に念願の3へとランクアップだ。良くぞ、窮地を救ってくれた礼を申すぞ。大学生時代は家庭教師のバイトをしていたと言うだけの事はある。


「坊っちゃんは頭は宜しい方なんです。もう少しだけ見直しをすれば、数学で赤点を取ることも無くなりますよ」


仰る通りです。数学の先生にも同じ事を言われました。


「さてと、洗濯物を取り込んで、お夕食の準備をしませんと。今夜は坊っちゃんの頑張りに応じて、坊っちゃんの大好物のハンバーグにしましょう。だから、お勉強、頑張って下さいね」


元々、ハンバーグにするつもりだった癖に。それに別に僕はハンバーグが大好物じゃない。勝手にメイドさんが大好物だと思っているだけだ。別に嫌いでも無いけど。



まぁ、これが僕と、少しぐらいは自慢出来るかもしれない良きメイドさんの特別な事の無い平凡な日常だ。

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