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『速記者の絵』

作者: 成城速記部
掲載日:2026/02/26

 珍し物好きな長者があった。古今東西の珍物を買い集めては、それを自慢するのが大好きであったが、ほとんどはがらくたであった。

 あるとき、飛び込みの道具屋が訪れて、長者に一本の掛け軸を見せた。見ても何の絵なのかがわからない。長者が考え込んでいると、旦那、これは速記者の絵です。左のほうに、右を向いて右手にプレスマンを持った色男がいるでしょう。この掛け軸は、それだけじゃないんです。晴れた日はだめなんですが、雨の日になると、速記を書くんです。

 そう聞くと、長者は、どうしてもこの掛け軸が欲しくなって、百両という大金で買い求めた。長者は、毎日毎日この掛け軸を眺めて、絵の中の速記者が速記を書くのを楽しみにしていたが、あいにく晴れの日が続いて、絵の中の速記者は一向に速記を書いてくれない。三月ほどたって、ようやく雨が降った。長者はうれしくてたまらず、朝から掛け軸の前に座って、絵の中の速記者が速記を書き始めるのを待ったが、ぴくりとも動いてくれない。長者はようやくだまされたことに気がついたが、今さらどうしようもない。

 数日たって、あの道具屋が長者の屋敷に顔を出した。長者は、事と次第によっては許さないつもりで、道具屋を座敷に通し、開口一番、掛け軸の文句を言った。しかし、道具屋は、悪びれるふうもなく、雨の日に速記をしない、それは妙ですな。もしかして、あの日から、一度も飯を食わせていないんじゃないですか、と言うので、当たり前だ、掛け軸に飯を食わせるやつがいるか、と答えると、じゃ、お仏壇にお供えをするやつもいませんね、と言うので、長者は、なるほどと思って、ようやくだまされたことに気がついたのは、もう三月ほど後のことであった。



教訓:この長者は、朗読者の掛け軸も買わされたという。

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