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第十六節 戦士

ようやく落ち着きを取り戻した時には、既に夕暮れ時だった。


「話はわかりましたわ」


さっきまで取り乱してたシンデレラは、一転、偉そうだった。

時刻は18時。シンデレラは清掃員の姿から、初めて会った時と同じドレスを纏っていた。

なんでも、彼女が魔女として力を発揮出来るのは、24時間のうち、18時から24時の6時間だけらしい。

確か、“時間制限の魔女”とは名乗っていたが、そういう意味なのか?


「違います!」


話を逸らした怒りとは別の怒りをぶつけられた。


「わたくしの力は………」


「まあまあ。その話はまた後でいいじゃないか。それより、保護を受けてくれるのかい?」


実にさりげなくジャンヌが話を戻した。こういうところを見ていると、ジャンヌは聡明な女なのだと思える。

アサキとは雲泥の差だ。


「そうですわね。ど〜してもと、そちらさんがおっしゃるのであれば、考えてみなくもありませんけど」


素直じゃないのか、プライドが高いのか。


「じゃあ決まりだね。一応、紹介するよ。ボクはジャンヌ。そして彼がアロウ。ロザリオカルヴァだ。そして、君を蹴った彼女が、アサキだ。あと、ブレーメン室長」


「ダンテだ。よろしく」


とくにリアクションをしなかった俺とアサキとは対称的に、ダンテはにこりと笑顔まで見せ、挨拶をした。

シンデレラも改めて挨拶を済ませると、「タタタタタッ」と、廊下を駆けて来る足音が聞こえた。

その足音が止まずして、勢いよく扉が開いた。


「ふふん。久しぶりぃの久しぶりぃ〜〜!」


アリスだった。


「おやまあ。ロケット女ではありませんこと!」


「ロケット女?」


アリスをそう呼んだシンデレラに、俺は聞いた。


「ええ。いつも勢いだけで、終着点のない人ですから」


「うぬぬ………それが久しぶりに会った同胞への挨拶か!この、6時間労働女!」


「し、失礼ね!わたくしは、朝8時から夕方5時の、9時間拘束、8時間労働をしてますわ!おたくと違いまして、しっかりと働いてますの!」


「ふふん。働かずにいられない、就労中毒者のくせに!」


「ぐぎぎぎぎ………なにゆえ!なにゆえに働きもせずのうのうと生きる小娘ごときに好き勝手言われなければなりませんの!」


………何が始まったんだ。これは喧嘩か?それとも、これが魔女同士の争いか?


「ああ………わたくしはいつもなじられてばかり!悔しいったらありゃしない!」


「いつだって、勝つのはこのアリス様よ!」


その戦いに勝利したアリスは、やはり「ふふん」と鼻を鳴らすのであった。


「なんなんだ、一体………」


「三千年ぶりの再会だ。はしゃぐのも無理はない」


「チェシャ猫」


いつの間にか、チェシャ猫がダンテの机にのさばっていた。

おい、俺は今お前が言ったことを聞き逃さなかったぞ。


「なんだよ、三千年ぶりの再会って」


アリスとシンデレラは、まだ一悶着している。


「来い。ここでは騒がし過ぎて敵わん」


年寄りじみたことを言い、机から飛び降りつかつかと部屋を出て行く。


「行こう。彼は君を仲間と認めたらしい」


ダンテはジャンヌになにやらアイコンタクトし、チェシャ猫の後を追う。


「………何が仲間だよ」


俺も、猫談議に招待された以上、行かないわけにはいかなかった。










この街に、異常とも思えるくらい教会が増えた。しかし、魔女を捜すには逆に都合がよさそうだ。

人の集まる教会。そうでない教会。はっきりと別れており、そうでない教会は、片手ほどもないからだ。

クダイは一仕事を終え、街の名物の古墳の上にいた。


「必要のない祈りをする種族………か」


そして、教会で会ったロングコートの男を思い出していた。


「………あいつ、人間じゃない。………何者なんだ?」


久々に胸が高揚している。危ない兆候だ。

昔はこうじゃなかった。戦いを目の前にしても、それを楽しむようなことは決してなかった。

なのに、癖の悪そうな輩を前に、求めている。血に濡れる戦いを。


「今の僕を見たら、みんな何て言うだろうな」


失った時間に置き去りにしたままの仲間を想い、懺悔をしなければならないのは自分なのだと諭す。

だからと言って、“人”には戻れない。


「………どっちにしろ、やるべきことをやるだけだ。例え、この世界を壊すことになってもね」


二本な剣を抜き、地面に突き立てる。

一本は気高いほどまがまがしいダーインスレイヴ。

もう一本は黄金に輝く刃の剣。

 そして、冬間近の空にしては青々とした空間を見つめ呟く。


「………僕は祈らない。望むものは、全て力で手に入れる!」


この世界に、人の域を出ることが出来た、奇跡の戦士がいた。

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