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第十四節 会話

「どうだった?」


公園で俺を待ってアサキは、この寒い季節にソフトクリームを食べていた。


「ダメだ。何も教えてもらえない」


ブレーメンが話した真実の裏付けがしたく、親父にそれとなく聞いてはみたが、知らなくていいとしか言われなかった。

クダイと兄貴もいなかったし、あまりアサキを待たせて蹴りを喰らわせられては敵わないと、急ぎ足戻って来た。


「いい加減、信じたら?」


「そう簡単には無理だろ。一週間後に世界が破滅するなんて話」


ブランシェット………どんな魔女なんだ。世界を破滅させる魔女って。少なくとも、アリス達を見る限りは想像に難しい。


「まだ破滅するって決まったわけじゃないわ。ブランシェットから12時間逃げられれば………」


「そういう話じゃない。有限の時間を与えられて?冗談もいいところだ。予言だかなんだか知らないけど、そんなもん信じてるなんて笑っちまうぜ。ブレーメンが真実を語ってくれたのだとしても、鵜呑みにするほど人間出来ちゃいない!後一週間だぞ!?最低六人はいるだろう魔女を保護して、金環日食の日の12時間を逃げろだなんて、無茶苦茶じゃないか!」


俺はアサキに当たっていた。突き付けられた真実は、予想を遥かに通り越して不誠実だったからだ。

正直、どうすればいいのか解らない。


「………時間は無いわ。私達を信じるか、真神を信じるかはあなたが決めること。あなたの結論を待つ余裕はないの」


「……………。」


「仮に、あなた達ロザリオカルヴァが魔女を消してしまっても、アリスだけは守り抜くから」


迷っていた。ブレーメンが本当に真実を話したのか?だが、じっくり思考を重ねる時間が無いのも、アサキの言う通り事実だ。


「………わかったよ。俺としても親父が何も話してくれない以上、百パーセント信用出来ないし、まずは魔女を保護することに協力する。そうじゃないと先が見えないからな」


一週間先に行くまでに、道が見えないんじゃ、打つ手も無いしな。


「そうと決まれば、行くぞ!」


「え?どこに?」


「デパートだよ」


アサキはよく意味を理解していないようだが、


「シンデレラがバイトしてただろ」


あっ。と、閃いたような顔をして、


「でも、もういないかも」


「そんなの、行かなきゃわかんねーだろ」


強引にアサキの手を引き、走り出す。アサキは後わずかなソフトクリームを落としていたが、気にもせずシンデレラがバイトをしてたデパートを目指す。

俺とアサキの運命は、もうこの時に決まっていたのかもしれない。










「またあの試練が訪れるのか」


チェシャ猫は嘆いた。かつての過去では、なんとか難を逃れはしたが、今回もそうとは約束されてるわけではない。


「それが役目だろう。我々の」


ダンテは普段よりリラックスした様子で言った。まるで、古い友人とでも話すかのように。


「三千年前は、運がよかった。大きな災害もあり、ブランシェットも思うようには行動出来なかっただろうしな」


チェシャ猫は当時を思い浮かべ、深い溜め息をつく。


「逃げ切れば、次の三千年後にまた生まれて来れる。深い眠りの後にな」


「生まれて来る度に試練があるのなら、いっそ、挑もうとは思わないのか?」


ダンテは、チェシャ猫がその気なら、挑むことも運命だと思っている。


「同胞を殺してまで、挑もうとは思わんよ。私はアリスが好きだ。ならば、生まれて来る度、試練が待っていようとも、その時間だけは楽しませてやりたい」


「親心か」


「それはお前とて同じであろう?ダンテ………いや、グリムよ」


ダンテは苦笑いをするだけだった。


「しかし、いずれは決着もつけねばなるまい」


話を変えるように、チェシャ猫は前足をペロッと舐めながら言い、


「三千年ごと、生きてせいぜい二週間。永遠に繰り返すのは御免だ」


付け加えた。


「同胞は殺さないんじゃなかったのか?」


「他の方法がきっとある」


「………ロザリオカルヴァ。利用価値はあると思うかね?チェシャ猫」


ダンテの問いにチェシャ猫は反応をどうすべきか考え込んでいたが、


「皆が丸く収まる結果など、所詮は夢物語の中だ」


犠牲は付き物。自分達の望みを叶えたいのであれば、誰かにツケを回さなくてはならない。

神格化したような猫は、幸せは誰かの不幸せの上にあるのだと、そう言いたげだった。


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