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泥沼劇から-3

「まあ、我が父が理解しがたいのは常の事。当時に始まったことではない」

 殿下はそんなうなずきづらいことを言う。

「決闘によりこの婚約破棄を未然に防いだことで、王家の対面は守られたのだ。公衆の面前で王太子が婚約破棄をするなどという醜聞を防ぐことができたのだ。これにより、父は王位継承権をはく奪されることがなくなった。オスニエル卿は実は王家の恩人なのだ」

「え」

「決闘により王太子が泥を塗られたということにしたことで、実際に泥をかぶったのはオスニエル卿だったのだ]

「……」

 父が泥をかぶった。それは王家のためを思って……? 父の性格的にそんなことを考慮するとは思えない。

 腹の立つ相手を殴った。それが結果的にそうなった。そう考えた方がより自然だ。


「その決闘によって、母と陛下の婚約はなくなり、父と母が結ばれた。陛下と王妃陛下が結ばれたのはどういういきさつでしょう」

「母は腹を括ったらしい。ヴェラ様が過ごされるこの国を沈ませてはならぬと、僭越ながら承ると覚悟されたのだ」

 王妃陛下の評判は辺境にいても聞こえてくる。質素倹約を重んじ、王族の一員となっても華美な衣装は好まれないと。下位貴族からの成り上がりではあるが、上昇した身分に奢らず、王族らしい威厳や品位は保っておられる。

 人品卑しからず、大臣達と対等に渡り合うだけの知見を持ち、発案の政策もなかなかの優れもの。

 王妃陛下はとても評判がいい。


 一方、今上陛下の評価は良くも悪くもあまり聞こえてこない。それはつまり、流せる評価がないということだろうか。


「陛下と王妃陛下って仲良いんですか?」

「まあ、そんなに悪くはないと思う。母は結構ダメな男が好きなんだろうな……。世話を焼く手を止められないといった感じだ」

 うっかり結構ぞんざいな聞き方をしてしまった。だがとがめられはせず、あっさりと答えられる。


 殿下はえへんと咳払いをした。

「いや、王家のことはいいのだ。問題はそなたとそなたの実家のことだ」

「……私は、自分の家の評判のことなどは気にしていません。ただ、領地の発展ができるかどうかを気にしているのです」

「何を思い違いをしておる。そもそもお前の家の領地を訪れる人がいないのは、すべてお前の家の評判の所為だ。領地の良し悪しなど関係ない」

「うっ」

「領地に人が来ない問題を解決したいならば、お前の評判を上げることが必要不可欠だ」

「ううっ」

 とうとう突き付けられてしまった。



「側近になるのが嫌なら無理強いはしないが。どうあってもお前が自力でがんばって名をあげないことには領地を積極的に訪れようなどと思う貴族はまずいない。名を上げずとも、お前が積極的に他の貴族と交流して印象を変えることは絶対にしなければならない。そこから逃げていて、領地の発展など望めない」

「殿下ははっきり言われますわね」

 ズバズバと言われて衝撃を受けていると、ミレーヌ嬢が苦笑いで指摘する。

 何か言おうとして、言葉は形にならず。指摘された『逃げ』が脳を占める。



「ゼエエエエス! 貴様ああああ!」

 唐突に怒号が響く。先ほどゼスに排除された三人組が現れた。

 三人は背中合わせにそれぞれ別方向を向いている。その状態でどうにか前に進もうとあがきながら近づいてくる。

 どうやら、三人はまとめて後ろ手で縛られているらしい。

「ゼス! 許さんぞ!」

 鬼気迫る勢いだが、名指しされているゼスは指差しながら、声もなく笑っている。見下すような表情が浮かんでいる。明らかな嘲笑だ。


 わざと自分にヘイトを向けているのか? 三人の意識はゼスに集中していてこちらには向いていない。



「今の内に逃げろ」

 ニクラス殿下に小声で告げられてそそくさとその場を去る。結局逃げてる。




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