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日曜日は昼過ぎにTELがあり、約束のすっぽかしをなじられた。感情の行き違いを感じるとき、もう潮時かなとも思う。が、硬い身体の線とそれとは似つかぬ滑らかな身体の脈動を思い出すとき、下半身は素直に疼く。二人の子供と伴侶のいる生活が恋人の日常。時間のやりくりが大変なのは理性ではわかる。一枚の写真もない関係は、それがはじまったときの熱情の残りかすだけで継続していた。
これも境界条件。
TELから聴こえるキンキン声がベッドでのあえぎと遊離していき、ウワノソラの視界が本棚のLSIに釘づけにされる。
「わかった。あんたの家の近くのスーパーに買い物に行くよ。四時に……」
目の裏の不愉快な視線がぱりんと割れると、海綿体が熱を発していた。
◇
身体は正直か?
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「……そいつが、ナノロボットの住処だとしてみよう。人類はもう滅んでいて、それが共同幻想としての人間生活を営ませるんだ」
「それなら脳の中の方がいいんじゃないの? いちいち奥歯から脳細胞に出かけるわけ? 実用的じゃないね」
「ウィルス関門なんかの恒常機能で長い時間留まれないと仮定すればいいさ。タイムリミットつきの活動。だから、誰かがその反故から現実を知る」
「なんていうか、その……」
「かわりに言おうか、月並みだね」