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公園に着くとローティーンが数人遊んでいた。学習塾の帰りか、五人の男生徒と女生徒が大きなボールを蹴っている。そのボールが廃屋になった公団住宅の窓ガラスに当たり、セラミック音を撒き散らして派手に割れた。破片が飛び散り、それがステレオグラムを形作る。LSIという文字が浮かび上がった。
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その文字が目の中に飛び込んできた。
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心臓がトクトクと鳴っている。
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水銀灯が眩しく目を射り、かけらのひとつひとつがさらに細かく分解されていくのが、マーキュリ色の光の中に浮かび上がって固まった。歯を噛みしめると、ガリッと音がして、親知らずが完全に割れてしまった……ような気がした。次の瞬間、苦い味が舌をつき、食味が混乱。ややあって、親指と人差し指で細い針金部分を摘んで引っ張り出す。
出てきたのは〈LSI〉。
知っていた気がしたのは何故なのだろう?
ふと、砕け果てたガラスの破片に目を向けると、そこに夜空が映っていた。
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子供たちのボール蹴り遊びはもう終わっている。