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ボランティアで西の国へ

 零点……。

 進級試験で零点って、どうなるんだ?

 落第?

 何度もルカ先生には試験のやり直しをお願いしたけれど、ルカ先生は、自分ではどうすることもできないので校長と相談するとしか答えてくれなかった。


「ファー……、僕どうしよう……。」

「大丈夫よ、アスラだったら。いつもちゃんと勉強してることは学校だってわかってるわ。今回はたまたま運が悪かっただけよ。」

「ありがとう……。」


 ファーは座り込んでる僕の横に来て頭を撫でて慰めてくれる。

 ファーは優しい。

 大好きだ。


「やぁ、アスラくん、邪魔して悪いね。」


 急に声がして顔を上げると、目の前に校長先生が立っていた。


「校長先生!」

「聞いたよ、零点だってね。」

「そうなんですけど、それは僕が悪いわけじゃなくて、いろいろ悪いことが重なってそうなっちゃったんです。再試験できませんか?」


 僕が必死に校長先生に再試験をお願いすると、ファーも一緒になって頼んでくれた。


「私からもお願いします。」


 しかし、校長先生は首を横に振って言った。


「悪いけどそれはできない。採点魔法に再試験の機能は付けてなかったんだ。でもね、落第にはならないから安心してくれたまえ。ちゃんと進級はできるよ。」

「本当ですか!?」

「アスラ! よかったわ!」


 その校長先生の言葉に僕は救われた。

 ファーも僕の手を取って思い切り喜んでくれた。


「ただし……。」


 校長先生は指を一本立てて続けて言った。


「零点は零点だからね。悪いけど、今回の試験の結果が悪かったアスラくんたちにはボランティアに参加してもらうよ。」

「ボランティア?」

「そう。春休みの前にエンジェル先生と神官学科の生徒たちが、西の国の街の教会で神聖魔法を披露するんだ。それに君たちにも同行してもらう。」

「西の国……。」

「西の国は魔法を使える人が少ないからね。魔法使い学科の君たちが魔法を見せてあげたらきっと喜ぶよ。」

「……わかりました。」


 進級できるならボランティアでも何でもやってやる。

 出発は来週だからね、と言って校長先生は去って行った。

 僕は問題が解決してホッとした顔でファーを見た。

 ファーは、よかったわねアスラと言いながら聖母の微笑みでまた僕の頭を撫でた。



 西の国への出発当日、ファーとステラとレオが僕たちを見送りに駅まで来てくれた。

 西の国ウェスカへは、汽車で中央センドダリアに行き、そこから夜間の高速魔法バスに乗って更に西を目指さないといけない。

 だいたい片道十四時間くらいかかるらしい。

 そこそこの長旅である。

 でも今回は神官学科の生徒たちも一緒、ということはタイムとメイノとも一緒だったので、僕はそれほど不安には思っていなかった。


「じゃあ、行ってくるよ。」

「レオ、僕とアスラでお土産買ってくるね。」

「ファーちゃん、ステラちゃん、行ってきます。」


 僕とタイムとメイノは、見送ってくれるみんなと手を振って別れて汽車に乗り込んだ。


「おい、魔法使い学科の席はあっちだ!」


 エンジェル先生が僕を見るなり怒鳴るように言った。

 ……なんだよ、タイムとメイノと一緒の席に座りたかったのに。

 渋々、二人とも別れて僕は隣の車両に移る。

 隣の車両には、僕と同じく実技試験零点だったダンクと、なぜかサクラ・アーキタクトがいた。

 あのゴリダムの頭によじ登った女子だ。


「あれ、サクラもボランティア?」

「うん! 実は試験前日まで徹夜で魔法陣作ってたら、当日寝坊しちゃって試験受けられなくって!」


 ダンクがサクラを指差して言った。


「アハハ! 馬鹿だな、お前ー!」

「ダンク君には言われたくないよー!」


 もしかして、実技試験のファーのペアの相手はサクラの予定だったのかな?

 それならサクラの成績はお察しだなと僕は思った。


「二人は仲良いの?」

「いや、別にぃ。」

「あんまり話したことは無いけど、私とダンク君は小さい頃から何度か会ってるよね! 家同士が交流あるから!」

「へぇ、そうなんだ。」


 家同士が、って、なんか上流階級的な繋がりがあるのかな?

 僕は東の国の社会のことはよくわからないんだよな。

 そういえば、ダンクは戦士の王の血筋だってゴリダムが言ってたな。


 意外と汽車の中は穏やかな雰囲気で、僕らは中央センドダリアの駅に着いた。

 もう日が暮れている。

 ここからは高速魔法バスに乗り換える予定のはずだ。

 神官学科のみんなと一緒にバス乗り場まで移動する。


「ダンク! アスラ! 待っていたぞ!」


 バス乗り場では、ピカピカと銀色に光る大きな影がこちらを見て手を振っていた。


「ゴリダム様!!」


 サクラが荷物を放り出して走って、その銀色に輝く影……ゴリダムに抱きついた。

 僕はゴリダムに聞いた。


「ゴリダム、どうしてここに?」

「魔法学校の校長から我が主直々に頼まれたのだ。珍しいゴーレムの私が参加すれば、西の国の人々も喜ぶだろうと言われてな。」

「そうなんだ……。」


 僕の隣のダンクは、ゴリダムに抱きつくサクラを苦々しい表情で見つめながらこう呟いた。


「俺は反対したのに……直接父上に言うなんて、あの校長め!」


 こうして、神官学科のみんなと僕ら魔法使い学科の三人、そしてゴリダムの一行は、十時間以上高速魔法バスに揺られながら西の国に到着したのだった。

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